彼女たちをトップアイドルに育てるのが俺が生まれた大きな理由の一つだったりするわけであり。

てたまろ

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024 お兄ちゃんと呼ばせて その①

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 「どんまい、気にするなよ、最後だけミスしちまったけど他は完ぺきだったぜ」



 ・・・・・・。



 「初めてのモデルのステージであれだけ表現できて驚いたよ」



 ・・・・・・。



 「素敵な衣装を着こなして、プリフォーの中でも断トツにスタイルいいもんな」



 ・・・・・・。



 幾ら声をかけても顔を上げてくれない、俺はしゃがみ伊莉愛の頭をポンポンと軽くたたきながら。



 「失敗もただの経験だ、同じことを繰り返さなければいいだけだよ」



 そう優しく声をかける、すると涙ぐんだ顔を上げ





 「おにいちゃん」





 俺を見て『お兄ちゃん』と、確かにそう呼んだ、二人の間にしばらく沈黙が入る、俺はあっけにとられた顔をしていたと思う、すると伊莉愛の顔がみるみるうちに赤くなっていく。



 「あ~あ~、今のは何でもないです、忘れてください! 今すぐ、脳内からシャットダウンして下さーい!」



 早口で喋りながら顔を真っ赤にさせ手をぶんぶん振りながら訴えてくる。



 「今お兄ちゃんって言わなかった?」



 「だから今すぐ忘れてくださいと言っているじゃないですかー!」



 あー、あれか、小学校の時担任の女の先生にお母さんと言って笑われたことがあるけどそれに似た感じのものか?



 「伊莉愛ってお兄さんいたっけ?」



 首を横に振る。



 「従妹いとこや親せき、近所にお兄さんと呼べる人がいるとか?」



 変わらず首を振る。



 暫く黙っていると、か細い声で喋りだした。



 「欲しかったんです、優しいお兄ちゃん・・・・」



 「お兄ちゃんが欲しかった?」



 こくんと頷きまた暫く黙り込んだ。



 身長170センチ以上あるが膝を抱えうずくまっていると小さくて、こうやってみると臣より幼く見える、そんなことを考えていたら。





 「お兄ちゃんと呼ばせて・・・・頂けませんか?」





 「え・・?」



 「今日だけでいいんです、そしたら後半頑張れます」



 お兄ちゃんと呼ばれることに少し抵抗はあったが、そんなことで伊莉愛がステージに立ってくれるならお安い御用だ。



 「ああ、伊莉愛のお兄ちゃんになってやるよ、ただし今日だけだぞ」



 すると伊莉愛は目を輝かせ、お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! さっきみたいに頭ポンポンして~と急に甘えてきた、注文通りにしてやると今度は。





 「私女の子の名前って二文字が可愛いと思っているんだよね、だから今日だけ伊莉愛ではなくリアって呼んで下さい!」



 正直何が何だか分からないが乗りかかった船だ、最後まで付き合ってやるよ。



 「リア、前半よく頑張ったな、後半も頑張ろうな」



 優しく声をかけ頭をポンポンしてやると伊莉愛は急に立ち上がり。



 「よ~し、勇気出てきた、お兄ちゃんありがとう、リア頑張る!」



 そう言って握りこぶしを作り楽屋に向かって行った。



 後半のステージが間もなく開始する、前半を経験しているせいか伊莉愛は自信に満ちた表情だ、安心して脇で見ていられる、音楽が鳴りショーが始まった。



 次々とモデルが出る中、伊莉愛もステージを堂々と闊歩かっぽする、今回は4回の出番全て上手にやりきり無事出番を終えショーの幕が下りた。



 楽屋内、モデルの方々もショーが終わると始まる前のピリピリとした緊張感はなくなっていた。



 「伊莉愛、最高の出来だったぞ、良かったな!」



 「リアだよ! お兄ちゃん」



 あっ、これまだ続くんだ、でもまぁ無事終わってよかったよ。



 すると、3番と5番のモデルの子たちが近づいてきた。



 「さっきはきついこと言って悪かったと思ってる、謝るわ、許してね」



 「前半と同じようなことをされたんじゃ許さなかったけど後半は断然別人みたいで驚いた、また違うステージで会うことがあれば宜しくね」



 そうして手を差し伸べてくる、それを伊莉愛が答える、二人は笑顔になりその場を離れた。



 「リア、良かったな」



 「うん、お兄ちゃんのおかげだよ~」


 お兄ちゃんのおかげ? はて、俺何かしたかな・・?




 ショーが終わると楽屋にはケータリングが用意されていて出演者、モデルや関係者たちがにぎやかな雰囲気で食事を楽しまれている、勿論俺たちも遠慮なく頂いている、すると紅妖さんが声をかけてきた。
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