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022 伊莉愛ファッションショーに挑戦

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 あれは去年ファーストシングルを発売し、売れずに惨敗で年を開けた頃だった、事務所内でプリフォーの四人が売れない理由を分析していた。

 「いい歌なんだけどなぁ、何で売れてないんだろ?」

 「知名度だと思います、メディアに殆ど取り上げられていないですし」

 「おみ☆にやの時、私はテレビに出てたから宣伝出来たけど今回は全くだからね」

 「CDショップにおいてもらえなくなったのもつらいよね~」


 社長も予想に反して売れ行きが悪いので機嫌が悪い、そんなとき一本の電話がかかってきた、社長が対応している、数分で話し終えるとモデルの仕事でヘルプの電話の様だった、毎年年明け恒例の老舗デパートの屋上でファッションショーを行っているのだが1名ダブルブッキングで出られないからうちの事務所で女の子、容姿はそこそこで良いから身長170センチ以上で細身のタレントはいないかと連絡が来たようだ、本日のイベントで開始時間も三時間切っていて緊急を要するとの事だ。


 「還流かえる、伊莉愛を連れて行ってこい、衣装などは向こうで用意するんだとよ」

 「え、今からですよね? リハも無しに大丈夫ですか?」

 「歩くだけだ、問題ない」

 いやいや軽く言ってくれるけどそんな甘くないだろう。

 「伊莉愛、聞いてただろう、お前がステージに立つんだ、行く間車の中でモデルの立ち振る舞い等わかる動画あるからしっかり見ておけ、還流はプリフォーのデビューCDを100枚程度持っていけ、関係者に配ってこい」

 伊莉愛がモデルなんて無理です~と言うが社長はとっとと現場に行けと支持するのみ、こうなったら何事も勉強だよと言って伊莉愛を連れてファッションショーを行う老舗デパートに向かう、他のメンバーはリルのイベントに同行しCDの手売りをすることになった。

 車内、運転している俺の隣、助手席には伊莉愛が震えながら座っている。

 「おいおい、まだ舞台に立ってもいないのに緊張しすぎじゃないか?」

 「だってファッションショーのモデルなんて私には無理ですよ~」

 「出来ないことを社長はさせないよ、伊莉愛なら大丈夫だと思ったから任せたんだと思うぜ」

 「何を根拠に大丈夫だと思ったんですか~」

 「普段のダンスだよ」

 そう言うと不思議そうな顔で見てくる。

 「伊莉愛のダンスって堂々としていてカッコイイし魅力あるじゃないか、だからモデルとしても上手くこなせると思ったんじゃないかな?」

 「ダンスとは違いますから~」

 「だろうな、だからこそ経験になるんじゃないか、やったことの無いことにチャレンジする、新しい自分を発見できるしいい事だぜ」

 「マネージャー迄私を追い込むんですか~」

 「大丈夫だって、イベントホールやドームでやるようなショーじゃなくてデパートの屋上だろ、安心しろよ、終わったらうまい飯でも食いに行こうぜ」




 デパートの屋上、300人以上はいるだろうか、多くのお客でにぎわっている。

 「あれ・・、意外とお客さんいるんだなぁ」
 「私お腹痛くなってきました」

 俺と伊莉愛は最上階の関係者しか入れない場所へ案内された。


 「キルトは来なかったのね、せっかく久しぶりに会えると思って楽しみにしていたのに」

 この体格のいいデカマッチョなお姉系の方が電話の相手だったようだ。

 「私は紅妖こうようと呼ばれているわ、よろしくね」

 「雨木川あまぎかわと言います、こちらは出雲伊莉愛いずもいりあ、本日はどうぞよろしくお願いします」

 名刺を渡すと紅妖さんは忙しいのか歩きながら早口で喋る。

 「話は聞いているわよね、一人欠席が出たから穴埋で呼んだわけ、その子がモデルね、まあまあ可愛いじゃない、衣装チェンジは4回、出番が終わったら直ぐに着替えてスタンバイする事、あなた入れてモデルは10名、あなたの順番は4番目、一つ前と後ろの出番の子を覚えておきなさい、前半終わったら1時間空けて後半ね、やることは同じだから、アシスタントを1名付けるからその子にわからないことは遠慮なく聞いて頂戴」


 俺と伊莉愛はその他もろもろ説明を受けて楽屋に案内された、紅妖さんは他にやることが多いようでこの場を離れた。
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