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001 俺は敏腕マネージャーになれるのか?
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「還流よ、事務所をたたまなければならないかもかも」
物語が始まっていきなり大ピンチを迎えるわけであり・・・・。
俺の名前は雨木川還流、22歳、独身、彼女無し、安月給で働いている、しかも超ブラックだ・・・・。
職業はアイドルグループのマネージャー兼世話係、事務所は、2階建アパートの一階の隅にある部屋、ちなみに管理人室を入れて9部屋しかない、隣の部屋にも廊下を渡って行くという今時珍しい作りの建物になっている。
何でも漫画家の神様やレジェンド達が住んでいたと言うアパートと同じ作りになっている、あっ、でも風呂とトイレは各部屋に付いているし築5年と全然綺麗なアパートではあるけどな。
このアパート轟和荘は事務所の社長が持ち主なので無料で住まわせてもらっている、その点は有難い、ちなみに2階に上がって直ぐ正面の5号室、6畳一間が俺の部屋だ、机の上にノートパソコン、本棚、趣味で引いてるホークギター、生活に必要な家電が有る、基本物を持たないのでそこそこ広く使わせてもらっている。
自室にこもって今日のスケジュール確認をしていると社長からのメール音鳴る。
『来たれ我が事務所に!』
何が我が事務所だよ、1階の管理人室じゃないか、そう思いながら下に降りていく。
コンコン、
「社長、入りますよ」
ドアを開けると部屋全体に金の配色が多く、妙なオブジェが飾ってあったりと一見ゴージャスに見える、このアパートの外観にそぐわない一室だ、管理人室兼事務所は12畳あって結構広い、部屋の奥に座っているのが社長の宝城キルトだ。
女性のようなロングのストレートヘアー、しかも金髪、チャップリンのような口ひげを生やし黒いスーツを着用、身長185㎝と長身でスリムな体系だ、一見モデルのようでかっこいい容姿なのだが・・・・。
社長は俺の目を見ながら珍しく真剣な顔でこう言った。
「還流よ、事務所をたたまなければならないかもかも」
いきなりの倒産宣言!
マジかと思いながら冷静になって考えた、退職金なぞ出るわけもないよな、なにせ事務所をスタートしたのが五年前、俺と社長と社長の弟で俺の友人でもある宝城リルの三人で始め、その後四人の女の子が加わりグループでCDデビューをさせたのだが、そんなに甘くはなかったというわけだ。
倒産寸前の原因はCDが思ったより売れずそれにかかった製作費が問題とのこと、実はシングル二枚出しており不発で終わったデビュー曲の挽回のために出したセカンドシングルも思ったより売れなかったのが大赤字を招いたようだ。
社長と話し、会社の危機に関しては、これから事務所に集まることになっている四人組女の子グループ、プリミアムフォーには内緒にしておくことにした。
ちなみにプリミアムフォーという名は社長が命名、プリティー(可愛い)とプレミアム(貴重)をドッキングさせてプリミアムとの事だ、四人いるのでプリミアムの後ろにフォーを付けてプリミアムフォーと名づけている。
今後はプリフォーと呼ばせてもらう。
ここ数年、我が事務所は不運続きだ、社長の弟のリルが番組の顔の『教えてリル先生♡』が終了したのが大きかった。
このTV番組は事務所にとっておおきな収入の柱でもあった、3年間続いて視聴率も良く、4年目も当然のように続くと思っていたのだが突然の打ち切り、正直マネージャーである俺は納得できずに抗議したのだが話が通じずやむなく終わることとなった。
その番組にプリフォーの一人であり最年少かつ一番最初に事務所入りした王城臣も出演しており視聴者からも壮大な支持を得ていた、特に同世代、十代からの支持は圧倒的なものがあった、それだけに番組終了は惜しいし臣の人気があるのにCDが売れなかったのも大きな痛手だったのだ。
どのようなバラエティー番組だったかというとひとつの教室に18人の生徒がいて、小学一年生~六年生(各三名)迄の子供たちに道徳的な授業をする番組で、メインは子供たちの悩み相談を聞く形だ。
真剣な話から笑いがあったり時には子供たちの意見が衝突して喧嘩になったり、(ハプニングがある方がテレビ的には良いようだが)同世代だけでなく大人が見ても考えさせられる番組でもあった。
また教師役の宝城リルが男でありながらそこらのアイドル顔負けの可愛い容姿、さらに腹話術という特技で授業をするのも大きな見どころになっていた。
その中で臣は二、三年生の二年間出演し活躍していた、ひいき目でなくても高学年の子供たちもいる中18名中一番目立っていた存在だったと思う。
最初の頃、目立つ臣に意地悪をする子達がいたが後に打ち解けて一緒に番組を盛り上げたり、高学年と低学年の意見が衝突した際は間に入りお互い納得する形で番組を成立させたり、とにかくエネルギッシュで明るい性格でクラスメイトやその両親、スタッフ達にも好かれていた。
リルや臣が在籍する事務所のマネージャーとしては会社を大きくしていくことが喜びでもあった。
この番組が終わって、リルはテレビの露出は大きく減ったがイベントを中心に活動しているし、臣は「教えてリル先生♡」の二年間の活躍で舞台出演が決まったり、ティーン雑誌等でちょくちょく活動している。
社長から会社の状況を聞いた後、自室で今後の活動について考えているとノックもなしにドアをガチャっと開ける音が聞こえた。
「かえる~、遊ぼう~!」
元気のいい声で俺に飛びかかってきた、この娘が先ほど紹介した王城臣、現在小学5年生だ。
「いい加減ノックすること覚えなさい!」
「面白いゲーム借りたの、一緒にやろう!」
本当にいつも人の話を聞かないやつだ、
「学校終わったら先ず家に帰れと言ってるだろう」
臣はまたかっていう顔をして、
「だ~か~ら~帰りがけに事務所あるからいいの!」
毎回毎回同じことを言わせるなという感じで返事をする、ここは相手をしてやらないとうるさいのでしぶしぶ遊んでやることにした、二人で協力していく携帯パズルゲームで単純だが奥深い、ゲーム中に臣に最近の芸能活動はどうかと聞いてみる、(タレントの話を聞いてやるのも仕事の一つなのだ)
「仕事は楽しいよ、でも昔ほどは楽しめてないかも・・・・」
意外な返事だった、いつも笑顔で楽しそうにしているからだ。
「昔程ってリルと番組持っていた時ほどってことか?」
「うん、それ!教えてリル先生はとっても楽しかった!!あんな番組またやりたいよ」
顔をやたら近づけて目をキラキラしながら言ってくる、近い近いと俺は臣を遠ざける。
「確かにあの番組は楽しかったな、また違う形でやって欲しいな」
俺は素直にそういった。
「リル先生が終わった後直ぐ舞台出演の話が来たんだったな」
少女はゲーム画面を見ながらうんと頷く。
「そのころに心お姉ちゃんが事務所入ったんだよね?」
心お姉ちゃんというのはプリフォーの一人で、許斐心16才、現在高校1年生の事である。
「かえるってさぁ、心お姉ちゃんを初めて見たときポーっとして見惚れていたよね~」
「はぁ? 何バカなこと言ってんだ、初めてあった時って心が中学生の時だぞ中坊相手に何故ときめかなきゃいかん」
臣がジト目で俺を見る、そうこんな目だ(-_-)少女はそのままの目でぼそぼそと呟いた。
「リル先生に聞いたらなんとなく理解はしたけど・・・・」
「ん? 今なんて言った? リルが何て言ったって!?」
臣はヤバって顔になり何も言ってませーんっと言いながらゲームをほっぽり出して部屋を出て行った。
あのガキ来るときもだけど帰る時も騒々しいな・・・・。
・・・・一つ言っておくけど俺はロリコンではないぞ、ましてやJCやJKなぞ興味もないね、女は同じ年か年上しか興味はない! 断じてだ! 以上!
何故かそう呟かずにはいられなかった、するとドアの方からコンコンとノックする音が響いた。
「どうぞー、空いてるよ」
ドアの向こうから綺麗というよりは可愛いという言葉が似合う美少女が部屋に入ってくる。
「失礼します」
「おう、どうした」
「・・実は・・・・」
この何か言いたそうにしている娘が先ほど話の出た許斐心である。
「えーと・・っあ、この前の舞台の感想聞かせて頂けますか?」
なんとなく言いたいこととは違うような気がしたのだが話を合わせてやることにした、
それから10分程度話しをし、落ち着いたところで本当は何を言いたいのかをそれとなく聞き出してみる。
「私、歌は向いてないと思うんです・・・・」
うつむきながらか細い声でそう言った、俺はそうか・・・・というだけで特に何も言わなかった、心は顔を上げ俺の眼を見て今度は力強く、
「お芝居だけをさせて頂けませんか!」
そう訴えてくる、さらに続けて、
「自分はアイドル・・・・臣ちゃんの様に愛想よくふるまったりするのは苦手なんです、他の二人と違ってダンスも下手だし・・・・」
真剣な眼差しの美少女の顔をまじまじと見ながらふと思う、アイドルに向いてないかなぁ・・・・。
「俺から見ると四人の中で一番アイドル顔っていうか可愛い顔してると思うけどなぁ」
ボソッとつぶやいた、
心は『えっ!』って顔で俺を見る。
「~~あ~あ~~いやいやプリフォーはみんな可愛いと思うぞ、心はアイドルとしてやっていけると充分思っているけどなぁ」
「・・・・・・」
美少女はセリフの続きを待っているようだったので、
「お芝居も良いがアイドル活動も芝居の勉強につながると思うぞ、なんでも勉強だと思ってやってみるのも良いんじゃないのか?」
そういうとしばらくうつむいていたがやがてスッと顔を上げて、
「ありがとうございます、そうですね、アドバイスありがとうございます」
そう返事をする心の表情は部屋に入ってきた時に比べるとずいぶん明るくなったように見える。(タレントの話を聞いてやるのも仕事の一つなのだ)
許斐心が事務所に入ったいきさつはこうだ。
リルと臣が出演していた『教えてリル先生♡』の番組終了後、臣のキャラクターを気に入ってくれていたディレクターが今度する舞台で臣にぴったりの役があるから使いたいとの事で出演依頼をしてきた、臣も芝居に興味があったようなので初の舞台出演が決まった、舞台初日、臣のお姉さん役の子が事故に合い骨折したことで芝居が出来ず降板することになった。
代役はどうするか、臣の初舞台を見に来ていた心を見て臣が監督にお願いして心を使って欲しいと訴えたのだ、心は当然の様に断ったのだが臣が、
「出演シーンも少なく長セリフがあるわけではないので心お姉ちゃん出て! お願い!」
と半ば強引に連れ出し何とか舞台を成功させる。
心は臣の近所に住んでいて小さい時から姉妹のような関係だったこともあり姉役を自然にこなした。
監督も代役とは思えない位素晴らしい演技だったと、称賛していた。
舞台は隔週日曜で3か月間(全6回)続くとのことで監督の要望で心が臣の姉役として全ての日程に参加することになった。
その間の3か月はうちの事務所に仮に入って活動することになった、心も最初の頃は戸惑いもあったようだが演技力もすごい勢いで上達し千秋楽には出番やセリフも多くなり次回作も出てくれないかと声をかけて頂くまでになっていた。
「心は演技好きだよな、上達の速度を見るとよくわかるよ」
俺はそう伝えると美少女は、はにかんだように頬をかく、照れながら
「私が事務所に正式に入った時に言ったこと覚えています?」
「確か舞台をやり遂げてもっと続けたいってことで入ったんだよな?」
「そうです、受験生でしたが推薦で高校入学出来そうでしたし高校に入ったら部活は何しようか考えていたので、こちらの方が楽しそうなのでお世話になることに決めました」
あれから一年も経ったんだなと思った、
「で、私が事務所に正式に入った時に言ったこと覚えています?」
心はしつこく聞いてくる、正直何を言っていたかなんて覚えていない、ヒントを要求した。
正面に座る美少女はむっとした顔をして、社長やリルさん、還流さんの印象を言いました! との事だ。
何となく思い出した。
「確か社長は変な人、リルは女の子みたいとかじゃなかったっけ?」
心はコホンと咳払いしながら、
「社長の事は、変わってる人だけど面白い人ですね、リルさんの事はその容姿といい美声といいホントに男性ですか? と言いました」
そうそう、そんなんだった、と俺は言う。
で還流さんのことは何て言ったか覚えてます? と詰問してくる。
う~ん、考えても出てこないので適当に、
「かっこいいとか」
「言ってません!」
うおっっセリフかぶせてきたよ。
「私、真剣に聞いているんですよ、事務所に入った・・・・おおきな理由の一つでも・・・・あるんですから・・・・」
そういう心の眼は真剣だった、俺は頭をボリボリかきながら、
「頼りがいがあるとかそんなんだっけ?」
心はため息をついて、
「本当に覚えていないんですね」
先ほどの臣のようなジト目で俺を見る(-_-)←こんな目だ。
還流さんの事は、
「臣ちゃんがワガママ言うのってマネージャーさんだけですよ、それだけ信頼されてる証拠ですと言いました!」
あ~そうっだたな! という顔をして見せた。
美少女は真剣な顔で
「今では・・・私も還流さんの事信頼していますよ」
ありがとよって答えるが何故か不満そうな顔だ、軽い返事のしかたがまずかったのかなと思っていると。
「私じゃ代わりになりませんか?」
聞き耳経ててないと聞こえないような声で言ってきた。
代わりって? と返事をしようとしたらいきなりガンガンガンとドアを叩く音がして返事をする前にドアがガチャリと開いた。
「おーす、マネージャー来たよー!」
「お邪魔します~」
元気よく入ってきたのはプリフォーの須賀彗夏と出雲伊莉愛の二人だった。
「彗夏!お前いい加減俺の返事を待ってからドアを開けろと言ってるのがわからないのか!」
この158㎝の小柄な身長から出るとは思えない大きな声を出す、ショートカットの似合う娘がプリフォーのリーダーでもある須賀彗夏 、高校2年生である。
「心ちゃん来てたんだ、この前の舞台すごく良かった~」
「ありがとう、伊莉愛さん」
そしてこの身長が170㎝以上の長身でおっとりとした口調の娘は出雲伊莉愛、長身からのダイナミックなダンスはプリフォーの中で一番目立っている。
彗夏が自信たっぷりに、
「伊莉愛と二人で新しいダンスの振り付けを考えたんだ! 次出す歌で使えないか見て欲しいんです」
元気よくそう言うと、隣にいる伊莉愛も自信のある顔をしている。
二人は同じ中学でチアガール部の部長と副部長をしていたこともありとても仲がいい、高校は別々だが中学卒業後も二人でストリートダンスをしていて動画を撮ってはSNSにアップをしていたくらいだ。
そんな二人と出会ったのは公園で臣と心の写真や動画を撮影している時だった、何組かダンスを踊っている男女がいる中で身長差のある二人の女の子のダンスに目が留まった。
ショートカットの女の子の動きは細かく素早くとにかくかっこいい、ポニーテールの女の子はほどくと腰までありそうなロングヘアー、細身で長身を活かしたダイナミックな動き、俺たちだけでなく多くの人が二人のダンスに釘付けになっていた、ダンス終了後多くの拍手があり中にはチップを渡している観客もいた、それはただダンスが良かっただけでなく二人の容姿が光るものがあるのも大きかっただろう。
俺たちの撮影もひと段落したので休憩していたら先ほど踊っていた二人の声が聞こえてきた。
「どうしよう、デジカメ壊れてるよ、今日中にアップするってブログに書いたのに・・・・」
「今からではどうしようもできないね、動画楽しみにしてくれている人に謝るしかないのかな~」
何やら困っているようだったので休憩の間、二人にカメラを使うか聞いてみた。
普段二人が使っているデジカメと違い本格的なビデオカメラだったので、ショートカットの女の子とポニーテールの女の子は興奮しありがたく使わせて頂きますと喜んだ。
ビデオカメラの使い方がいまいちわからないようだったので俺が撮影してあげることになった、臣と心も二人のダンスを間近で見ることが出来て嬉しそうだったので良かった。
この時臣小学4年生、心中学3年生、彗夏と伊莉愛は高校1年生である。
後にトップアイドルとして活躍するプリミアムフォーの四人がそろった日でもあった。
物語が始まっていきなり大ピンチを迎えるわけであり・・・・。
俺の名前は雨木川還流、22歳、独身、彼女無し、安月給で働いている、しかも超ブラックだ・・・・。
職業はアイドルグループのマネージャー兼世話係、事務所は、2階建アパートの一階の隅にある部屋、ちなみに管理人室を入れて9部屋しかない、隣の部屋にも廊下を渡って行くという今時珍しい作りの建物になっている。
何でも漫画家の神様やレジェンド達が住んでいたと言うアパートと同じ作りになっている、あっ、でも風呂とトイレは各部屋に付いているし築5年と全然綺麗なアパートではあるけどな。
このアパート轟和荘は事務所の社長が持ち主なので無料で住まわせてもらっている、その点は有難い、ちなみに2階に上がって直ぐ正面の5号室、6畳一間が俺の部屋だ、机の上にノートパソコン、本棚、趣味で引いてるホークギター、生活に必要な家電が有る、基本物を持たないのでそこそこ広く使わせてもらっている。
自室にこもって今日のスケジュール確認をしていると社長からのメール音鳴る。
『来たれ我が事務所に!』
何が我が事務所だよ、1階の管理人室じゃないか、そう思いながら下に降りていく。
コンコン、
「社長、入りますよ」
ドアを開けると部屋全体に金の配色が多く、妙なオブジェが飾ってあったりと一見ゴージャスに見える、このアパートの外観にそぐわない一室だ、管理人室兼事務所は12畳あって結構広い、部屋の奥に座っているのが社長の宝城キルトだ。
女性のようなロングのストレートヘアー、しかも金髪、チャップリンのような口ひげを生やし黒いスーツを着用、身長185㎝と長身でスリムな体系だ、一見モデルのようでかっこいい容姿なのだが・・・・。
社長は俺の目を見ながら珍しく真剣な顔でこう言った。
「還流よ、事務所をたたまなければならないかもかも」
いきなりの倒産宣言!
マジかと思いながら冷静になって考えた、退職金なぞ出るわけもないよな、なにせ事務所をスタートしたのが五年前、俺と社長と社長の弟で俺の友人でもある宝城リルの三人で始め、その後四人の女の子が加わりグループでCDデビューをさせたのだが、そんなに甘くはなかったというわけだ。
倒産寸前の原因はCDが思ったより売れずそれにかかった製作費が問題とのこと、実はシングル二枚出しており不発で終わったデビュー曲の挽回のために出したセカンドシングルも思ったより売れなかったのが大赤字を招いたようだ。
社長と話し、会社の危機に関しては、これから事務所に集まることになっている四人組女の子グループ、プリミアムフォーには内緒にしておくことにした。
ちなみにプリミアムフォーという名は社長が命名、プリティー(可愛い)とプレミアム(貴重)をドッキングさせてプリミアムとの事だ、四人いるのでプリミアムの後ろにフォーを付けてプリミアムフォーと名づけている。
今後はプリフォーと呼ばせてもらう。
ここ数年、我が事務所は不運続きだ、社長の弟のリルが番組の顔の『教えてリル先生♡』が終了したのが大きかった。
このTV番組は事務所にとっておおきな収入の柱でもあった、3年間続いて視聴率も良く、4年目も当然のように続くと思っていたのだが突然の打ち切り、正直マネージャーである俺は納得できずに抗議したのだが話が通じずやむなく終わることとなった。
その番組にプリフォーの一人であり最年少かつ一番最初に事務所入りした王城臣も出演しており視聴者からも壮大な支持を得ていた、特に同世代、十代からの支持は圧倒的なものがあった、それだけに番組終了は惜しいし臣の人気があるのにCDが売れなかったのも大きな痛手だったのだ。
どのようなバラエティー番組だったかというとひとつの教室に18人の生徒がいて、小学一年生~六年生(各三名)迄の子供たちに道徳的な授業をする番組で、メインは子供たちの悩み相談を聞く形だ。
真剣な話から笑いがあったり時には子供たちの意見が衝突して喧嘩になったり、(ハプニングがある方がテレビ的には良いようだが)同世代だけでなく大人が見ても考えさせられる番組でもあった。
また教師役の宝城リルが男でありながらそこらのアイドル顔負けの可愛い容姿、さらに腹話術という特技で授業をするのも大きな見どころになっていた。
その中で臣は二、三年生の二年間出演し活躍していた、ひいき目でなくても高学年の子供たちもいる中18名中一番目立っていた存在だったと思う。
最初の頃、目立つ臣に意地悪をする子達がいたが後に打ち解けて一緒に番組を盛り上げたり、高学年と低学年の意見が衝突した際は間に入りお互い納得する形で番組を成立させたり、とにかくエネルギッシュで明るい性格でクラスメイトやその両親、スタッフ達にも好かれていた。
リルや臣が在籍する事務所のマネージャーとしては会社を大きくしていくことが喜びでもあった。
この番組が終わって、リルはテレビの露出は大きく減ったがイベントを中心に活動しているし、臣は「教えてリル先生♡」の二年間の活躍で舞台出演が決まったり、ティーン雑誌等でちょくちょく活動している。
社長から会社の状況を聞いた後、自室で今後の活動について考えているとノックもなしにドアをガチャっと開ける音が聞こえた。
「かえる~、遊ぼう~!」
元気のいい声で俺に飛びかかってきた、この娘が先ほど紹介した王城臣、現在小学5年生だ。
「いい加減ノックすること覚えなさい!」
「面白いゲーム借りたの、一緒にやろう!」
本当にいつも人の話を聞かないやつだ、
「学校終わったら先ず家に帰れと言ってるだろう」
臣はまたかっていう顔をして、
「だ~か~ら~帰りがけに事務所あるからいいの!」
毎回毎回同じことを言わせるなという感じで返事をする、ここは相手をしてやらないとうるさいのでしぶしぶ遊んでやることにした、二人で協力していく携帯パズルゲームで単純だが奥深い、ゲーム中に臣に最近の芸能活動はどうかと聞いてみる、(タレントの話を聞いてやるのも仕事の一つなのだ)
「仕事は楽しいよ、でも昔ほどは楽しめてないかも・・・・」
意外な返事だった、いつも笑顔で楽しそうにしているからだ。
「昔程ってリルと番組持っていた時ほどってことか?」
「うん、それ!教えてリル先生はとっても楽しかった!!あんな番組またやりたいよ」
顔をやたら近づけて目をキラキラしながら言ってくる、近い近いと俺は臣を遠ざける。
「確かにあの番組は楽しかったな、また違う形でやって欲しいな」
俺は素直にそういった。
「リル先生が終わった後直ぐ舞台出演の話が来たんだったな」
少女はゲーム画面を見ながらうんと頷く。
「そのころに心お姉ちゃんが事務所入ったんだよね?」
心お姉ちゃんというのはプリフォーの一人で、許斐心16才、現在高校1年生の事である。
「かえるってさぁ、心お姉ちゃんを初めて見たときポーっとして見惚れていたよね~」
「はぁ? 何バカなこと言ってんだ、初めてあった時って心が中学生の時だぞ中坊相手に何故ときめかなきゃいかん」
臣がジト目で俺を見る、そうこんな目だ(-_-)少女はそのままの目でぼそぼそと呟いた。
「リル先生に聞いたらなんとなく理解はしたけど・・・・」
「ん? 今なんて言った? リルが何て言ったって!?」
臣はヤバって顔になり何も言ってませーんっと言いながらゲームをほっぽり出して部屋を出て行った。
あのガキ来るときもだけど帰る時も騒々しいな・・・・。
・・・・一つ言っておくけど俺はロリコンではないぞ、ましてやJCやJKなぞ興味もないね、女は同じ年か年上しか興味はない! 断じてだ! 以上!
何故かそう呟かずにはいられなかった、するとドアの方からコンコンとノックする音が響いた。
「どうぞー、空いてるよ」
ドアの向こうから綺麗というよりは可愛いという言葉が似合う美少女が部屋に入ってくる。
「失礼します」
「おう、どうした」
「・・実は・・・・」
この何か言いたそうにしている娘が先ほど話の出た許斐心である。
「えーと・・っあ、この前の舞台の感想聞かせて頂けますか?」
なんとなく言いたいこととは違うような気がしたのだが話を合わせてやることにした、
それから10分程度話しをし、落ち着いたところで本当は何を言いたいのかをそれとなく聞き出してみる。
「私、歌は向いてないと思うんです・・・・」
うつむきながらか細い声でそう言った、俺はそうか・・・・というだけで特に何も言わなかった、心は顔を上げ俺の眼を見て今度は力強く、
「お芝居だけをさせて頂けませんか!」
そう訴えてくる、さらに続けて、
「自分はアイドル・・・・臣ちゃんの様に愛想よくふるまったりするのは苦手なんです、他の二人と違ってダンスも下手だし・・・・」
真剣な眼差しの美少女の顔をまじまじと見ながらふと思う、アイドルに向いてないかなぁ・・・・。
「俺から見ると四人の中で一番アイドル顔っていうか可愛い顔してると思うけどなぁ」
ボソッとつぶやいた、
心は『えっ!』って顔で俺を見る。
「~~あ~あ~~いやいやプリフォーはみんな可愛いと思うぞ、心はアイドルとしてやっていけると充分思っているけどなぁ」
「・・・・・・」
美少女はセリフの続きを待っているようだったので、
「お芝居も良いがアイドル活動も芝居の勉強につながると思うぞ、なんでも勉強だと思ってやってみるのも良いんじゃないのか?」
そういうとしばらくうつむいていたがやがてスッと顔を上げて、
「ありがとうございます、そうですね、アドバイスありがとうございます」
そう返事をする心の表情は部屋に入ってきた時に比べるとずいぶん明るくなったように見える。(タレントの話を聞いてやるのも仕事の一つなのだ)
許斐心が事務所に入ったいきさつはこうだ。
リルと臣が出演していた『教えてリル先生♡』の番組終了後、臣のキャラクターを気に入ってくれていたディレクターが今度する舞台で臣にぴったりの役があるから使いたいとの事で出演依頼をしてきた、臣も芝居に興味があったようなので初の舞台出演が決まった、舞台初日、臣のお姉さん役の子が事故に合い骨折したことで芝居が出来ず降板することになった。
代役はどうするか、臣の初舞台を見に来ていた心を見て臣が監督にお願いして心を使って欲しいと訴えたのだ、心は当然の様に断ったのだが臣が、
「出演シーンも少なく長セリフがあるわけではないので心お姉ちゃん出て! お願い!」
と半ば強引に連れ出し何とか舞台を成功させる。
心は臣の近所に住んでいて小さい時から姉妹のような関係だったこともあり姉役を自然にこなした。
監督も代役とは思えない位素晴らしい演技だったと、称賛していた。
舞台は隔週日曜で3か月間(全6回)続くとのことで監督の要望で心が臣の姉役として全ての日程に参加することになった。
その間の3か月はうちの事務所に仮に入って活動することになった、心も最初の頃は戸惑いもあったようだが演技力もすごい勢いで上達し千秋楽には出番やセリフも多くなり次回作も出てくれないかと声をかけて頂くまでになっていた。
「心は演技好きだよな、上達の速度を見るとよくわかるよ」
俺はそう伝えると美少女は、はにかんだように頬をかく、照れながら
「私が事務所に正式に入った時に言ったこと覚えています?」
「確か舞台をやり遂げてもっと続けたいってことで入ったんだよな?」
「そうです、受験生でしたが推薦で高校入学出来そうでしたし高校に入ったら部活は何しようか考えていたので、こちらの方が楽しそうなのでお世話になることに決めました」
あれから一年も経ったんだなと思った、
「で、私が事務所に正式に入った時に言ったこと覚えています?」
心はしつこく聞いてくる、正直何を言っていたかなんて覚えていない、ヒントを要求した。
正面に座る美少女はむっとした顔をして、社長やリルさん、還流さんの印象を言いました! との事だ。
何となく思い出した。
「確か社長は変な人、リルは女の子みたいとかじゃなかったっけ?」
心はコホンと咳払いしながら、
「社長の事は、変わってる人だけど面白い人ですね、リルさんの事はその容姿といい美声といいホントに男性ですか? と言いました」
そうそう、そんなんだった、と俺は言う。
で還流さんのことは何て言ったか覚えてます? と詰問してくる。
う~ん、考えても出てこないので適当に、
「かっこいいとか」
「言ってません!」
うおっっセリフかぶせてきたよ。
「私、真剣に聞いているんですよ、事務所に入った・・・・おおきな理由の一つでも・・・・あるんですから・・・・」
そういう心の眼は真剣だった、俺は頭をボリボリかきながら、
「頼りがいがあるとかそんなんだっけ?」
心はため息をついて、
「本当に覚えていないんですね」
先ほどの臣のようなジト目で俺を見る(-_-)←こんな目だ。
還流さんの事は、
「臣ちゃんがワガママ言うのってマネージャーさんだけですよ、それだけ信頼されてる証拠ですと言いました!」
あ~そうっだたな! という顔をして見せた。
美少女は真剣な顔で
「今では・・・私も還流さんの事信頼していますよ」
ありがとよって答えるが何故か不満そうな顔だ、軽い返事のしかたがまずかったのかなと思っていると。
「私じゃ代わりになりませんか?」
聞き耳経ててないと聞こえないような声で言ってきた。
代わりって? と返事をしようとしたらいきなりガンガンガンとドアを叩く音がして返事をする前にドアがガチャリと開いた。
「おーす、マネージャー来たよー!」
「お邪魔します~」
元気よく入ってきたのはプリフォーの須賀彗夏と出雲伊莉愛の二人だった。
「彗夏!お前いい加減俺の返事を待ってからドアを開けろと言ってるのがわからないのか!」
この158㎝の小柄な身長から出るとは思えない大きな声を出す、ショートカットの似合う娘がプリフォーのリーダーでもある須賀彗夏 、高校2年生である。
「心ちゃん来てたんだ、この前の舞台すごく良かった~」
「ありがとう、伊莉愛さん」
そしてこの身長が170㎝以上の長身でおっとりとした口調の娘は出雲伊莉愛、長身からのダイナミックなダンスはプリフォーの中で一番目立っている。
彗夏が自信たっぷりに、
「伊莉愛と二人で新しいダンスの振り付けを考えたんだ! 次出す歌で使えないか見て欲しいんです」
元気よくそう言うと、隣にいる伊莉愛も自信のある顔をしている。
二人は同じ中学でチアガール部の部長と副部長をしていたこともありとても仲がいい、高校は別々だが中学卒業後も二人でストリートダンスをしていて動画を撮ってはSNSにアップをしていたくらいだ。
そんな二人と出会ったのは公園で臣と心の写真や動画を撮影している時だった、何組かダンスを踊っている男女がいる中で身長差のある二人の女の子のダンスに目が留まった。
ショートカットの女の子の動きは細かく素早くとにかくかっこいい、ポニーテールの女の子はほどくと腰までありそうなロングヘアー、細身で長身を活かしたダイナミックな動き、俺たちだけでなく多くの人が二人のダンスに釘付けになっていた、ダンス終了後多くの拍手があり中にはチップを渡している観客もいた、それはただダンスが良かっただけでなく二人の容姿が光るものがあるのも大きかっただろう。
俺たちの撮影もひと段落したので休憩していたら先ほど踊っていた二人の声が聞こえてきた。
「どうしよう、デジカメ壊れてるよ、今日中にアップするってブログに書いたのに・・・・」
「今からではどうしようもできないね、動画楽しみにしてくれている人に謝るしかないのかな~」
何やら困っているようだったので休憩の間、二人にカメラを使うか聞いてみた。
普段二人が使っているデジカメと違い本格的なビデオカメラだったので、ショートカットの女の子とポニーテールの女の子は興奮しありがたく使わせて頂きますと喜んだ。
ビデオカメラの使い方がいまいちわからないようだったので俺が撮影してあげることになった、臣と心も二人のダンスを間近で見ることが出来て嬉しそうだったので良かった。
この時臣小学4年生、心中学3年生、彗夏と伊莉愛は高校1年生である。
後にトップアイドルとして活躍するプリミアムフォーの四人がそろった日でもあった。
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好きなのか嫌いなのか、はっきりわからないまま、偽りの立場に苦しむ雪生だったが……。
※エブリスタにも掲載中
2022/01/29 完結しました!
失恋少女と狐の見廻り
紺乃未色(こんのみいろ)
キャラ文芸
失恋中の高校生、彩羽(いろは)の前にあらわれたのは、神の遣いである「千影之狐(ちかげのきつね)」だった。「協力すれば恋の願いを神へ届ける」という約束のもと、彩羽はとある旅館にスタッフとして潜り込み、「魂を盗る、人ならざる者」の調査を手伝うことに。
人生初のアルバイトにあたふたしながらも、奮闘する彩羽。そんな彼女に対して「面白い」と興味を抱く千影之狐。
一人と一匹は無事に奇妙な事件を解決できるのか?
不可思議でどこか妖しい「失恋からはじまる和風ファンタジー」
天鬼ざくろのフリースタイル
ふみのあや
キャラ文芸
かつてディスで一世を風靡した元ラッパーの独身教師、小鳥遊空。
ヒップホップと決別してしまったその男がディスをこよなく愛するJKラッパー天鬼ざくろと出会った時、止まっていたビートが彼の人生に再び鳴り響き始めた──。
※カクヨムの方に新キャラと設定を追加して微調整した加筆修正版を掲載しています。
もし宜しければそちらも是非。
化想操術師の日常
茶野森かのこ
キャラ文芸
たった一つの線で、世界が変わる。
化想操術師という仕事がある。
一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。
化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。
クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。
社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。
社員は自身を含めて四名。
九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。
常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。
他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。
その洋館に、新たな住人が加わった。
記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。
だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。
たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。
壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。
化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。
野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ようこそ猫カフェ『ネコまっしぐランド』〜我々はネコ娘である〜
根上真気
キャラ文芸
日常系ドタバタ☆ネコ娘コメディ!!猫好きの大学二年生=猫実好和は、ひょんなことから猫カフェでバイトすることに。しかしそこは...ネコ娘達が働く猫カフェだった!猫カフェを舞台に可愛いネコ娘達が大活躍する?プロットなし!一体物語はどうなるのか?作者もわからない!!
【フリー声劇台本】地下劇場あるかでぃあ(男性3人用または不問3人用)
摩訶子
キャラ文芸
『いらっしゃいませ。カフェではなく、【劇場】の方のお客様ですか。……それなら、あなたはヒトではないようですね』
表向きは、美しすぎる男性店主と元気なバイトの男の子が迎える女性に大人気のカフェ。
しかしその地下に人知れず存在する秘密の【朗読劇場】こそが、彼らの本当の仕事場。
観客は、かつては物語の主人公だった者たち。
未完成のまま葬られてしまった絵本の主人公たちにその【結末】を聴かせ、在るべき場所に戻すのが彼らの役目。
そんな二人の地下劇場の、ちょっとダークな幻想譚。
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