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天使編
平等の神の望郷と決意
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常に美しい花を咲かせるバラ園にて。
キャラメル色の髪に緑の瞳をもつ聖職者フェリスは、香り高い紅茶を愉しみながら故郷を想う。
ランドールはいなくなった。
乱暴な方法だったが、ようやく奴を亡き者にした。
フェリスはゆっくりと息を吐く。
『悪魔は醜悪なる存在』
彼が通っていた学校で何度も聞かされた。
奴らは平等を司る神ミーティスの反逆者なのだ。と……
まだ幼さを顔に残す少年は、先生の言葉をそのまま飲み込み悪魔に対して強烈な嫌悪感を抱いた。
彼は悪魔全てが文字通り「悪」であると信じている。
「次は、『2人の英雄』のうちのもう1人……」
2人の英雄……1人は、戦場で数々の人間を虐殺したランドール。
もう1人の行方は未だ不明だ。
奴が行った事は魔道具の開発。
ソルダードというモンスターにも使われている、「コア」という魔道具の開発者だ。
奴は死者を弄び、侮辱した。
奴が行った事は死者に対する冒涜。
悪魔らしい、唾棄すべき行為。
フェリスは本で読んだソルダードの姿を思い出す。
1つの胴体に6本の腕を縫い付けられたクモ型。
腕同士を縫い合わされた者。
顔中にガラスの瞳を埋め込まれた者。
切り落とされた首を抱えた地獄の剣士といった姿の者。
首ひとつで敵に突っ込み自爆する者。
……想像するだけで悍ましい。
正気を疑う兵器の数々に、フェリスは身を震わせた。
危険な思想を持ち合わせる悪魔など、美しきモルゲンレーテには不要な存在だ。
「もう1人の英雄も倒さなくては……」
そして、人間と悪魔の仲をもう一度裂く為の策を考えなければならない。
(先生、見守っていてくださいね。私が必ずモルゲンレーテをあるべき姿へ戻します)
「ふんふーン」
誰かのドラ声が聞こえてきた。
どうやら気持ち良く歌っているようだ。
「ふんふーン」
(声の主は……あぁ。ぬいぐるみか)
本を片手に歌の練習をしているようだ。
「ワナ……ワナ……ワナ、ビー」
フェリスは眉を顰める。
ぬいぐるみの飼い主である「スワイプ」という名の天使の存在を思い出したからだ。
スワイプは生前、死刑執行人兼拷問官として活躍し、死して天使となった後も同様に仕事をしている男だ。
死の臭いを漂わせる男には近付きたくない。
「ふんふーン……あ」
ぬいぐるみに気付かれ「こんにちいア!」と挨拶される。
「こんにちは」フェリスも気さくに声をかけた。
「ここ、いい場所だネ。オハヨってば気に入っちゃっタ。あ、オハヨは『おはよう』って言いまス。よろしくお願いしまス」
「私はフェリスと申します。綺麗な場所ですよね」
「うン! 今度、ごしゅじんを連れて来ようかナ。ごしゅじんってバ、毎日疲れてるかラ……こーゆーところに連れていってあげたラ、よろこぶかナ」
「スワイプ様の事ですね」
「わワ! 知ってるノ?」
「えぇ、存じ上げております」
「うふフ、ごしゅじんってバ、ゆーめーじン!」
ふわふわした足をバタバタと動かし喜ぶおはよう。
「えへヘ、お話しできてうれしーナ! 最近、ヴェーラもオハヨに構ってくれないシ、キャプテン・ブレネンも見かけないシ、ごしゅじんも相変わらずアルカに付きっきりだかラ、人とあまりお話しできてなかったノ」
ヴェーラにキャプテン・ブレネン。
2人とも、信用できる悪魔狩り。
「じゃ、オハヨはこのへんデ。じゃーネー」
「ワナビー」と歌いながらどこかへと向かうおはようの哀愁漂う背を見送り、フェリスはまた故郷に想いを馳せた。
キャラメル色の髪に緑の瞳をもつ聖職者フェリスは、香り高い紅茶を愉しみながら故郷を想う。
ランドールはいなくなった。
乱暴な方法だったが、ようやく奴を亡き者にした。
フェリスはゆっくりと息を吐く。
『悪魔は醜悪なる存在』
彼が通っていた学校で何度も聞かされた。
奴らは平等を司る神ミーティスの反逆者なのだ。と……
まだ幼さを顔に残す少年は、先生の言葉をそのまま飲み込み悪魔に対して強烈な嫌悪感を抱いた。
彼は悪魔全てが文字通り「悪」であると信じている。
「次は、『2人の英雄』のうちのもう1人……」
2人の英雄……1人は、戦場で数々の人間を虐殺したランドール。
もう1人の行方は未だ不明だ。
奴が行った事は魔道具の開発。
ソルダードというモンスターにも使われている、「コア」という魔道具の開発者だ。
奴は死者を弄び、侮辱した。
奴が行った事は死者に対する冒涜。
悪魔らしい、唾棄すべき行為。
フェリスは本で読んだソルダードの姿を思い出す。
1つの胴体に6本の腕を縫い付けられたクモ型。
腕同士を縫い合わされた者。
顔中にガラスの瞳を埋め込まれた者。
切り落とされた首を抱えた地獄の剣士といった姿の者。
首ひとつで敵に突っ込み自爆する者。
……想像するだけで悍ましい。
正気を疑う兵器の数々に、フェリスは身を震わせた。
危険な思想を持ち合わせる悪魔など、美しきモルゲンレーテには不要な存在だ。
「もう1人の英雄も倒さなくては……」
そして、人間と悪魔の仲をもう一度裂く為の策を考えなければならない。
(先生、見守っていてくださいね。私が必ずモルゲンレーテをあるべき姿へ戻します)
「ふんふーン」
誰かのドラ声が聞こえてきた。
どうやら気持ち良く歌っているようだ。
「ふんふーン」
(声の主は……あぁ。ぬいぐるみか)
本を片手に歌の練習をしているようだ。
「ワナ……ワナ……ワナ、ビー」
フェリスは眉を顰める。
ぬいぐるみの飼い主である「スワイプ」という名の天使の存在を思い出したからだ。
スワイプは生前、死刑執行人兼拷問官として活躍し、死して天使となった後も同様に仕事をしている男だ。
死の臭いを漂わせる男には近付きたくない。
「ふんふーン……あ」
ぬいぐるみに気付かれ「こんにちいア!」と挨拶される。
「こんにちは」フェリスも気さくに声をかけた。
「ここ、いい場所だネ。オハヨってば気に入っちゃっタ。あ、オハヨは『おはよう』って言いまス。よろしくお願いしまス」
「私はフェリスと申します。綺麗な場所ですよね」
「うン! 今度、ごしゅじんを連れて来ようかナ。ごしゅじんってバ、毎日疲れてるかラ……こーゆーところに連れていってあげたラ、よろこぶかナ」
「スワイプ様の事ですね」
「わワ! 知ってるノ?」
「えぇ、存じ上げております」
「うふフ、ごしゅじんってバ、ゆーめーじン!」
ふわふわした足をバタバタと動かし喜ぶおはよう。
「えへヘ、お話しできてうれしーナ! 最近、ヴェーラもオハヨに構ってくれないシ、キャプテン・ブレネンも見かけないシ、ごしゅじんも相変わらずアルカに付きっきりだかラ、人とあまりお話しできてなかったノ」
ヴェーラにキャプテン・ブレネン。
2人とも、信用できる悪魔狩り。
「じゃ、オハヨはこのへんデ。じゃーネー」
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