QUEENPOKER

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QUEENPOKER sideアイリス

QUEENPOKER sideアイリス

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 シュガー・スレイ・アイリス

 彼女はまるで人間を張り付けたような不気味さがある
 目的の為ならば容赦なく消し去る人物
 人の皮を被った悪魔
 など、様々な異名がある

 これは、そんな彼女の昔の話

 アイリス:男性(女性でも可)組織に入って来た美しい人
 エル:男性(女性でも可)組織の頭脳、感情がほとんどない
 メルク:女性 小柄ではつらつとした女の子アイリスの部下になる









25年前

ホテルの寝室にて



エル「こちらでしたか」

アイリス「ん~?」



アイリス、体に付いた血を洗い流している
SE:シャワー音



エル「余計な仕事を増やさないでください。」




シャワーを止める




アイリス「お陰でスムーズに行ったわよ。次はもう少し足止めされてて欲しいわ」

エル「…全く」

エル「残りは、ディバウアーが処理してくれます」

アイリス「また?あの子嫌いなのよね~。せっかく綺麗にしたものを、台無しにしてくれる天才だから」

エル「一つ残らず昇華された、と捉えましょう。痕跡を残しては全てが破城します」

アイリス「はいはい。分かったわよ」




回想5年前


アイリス「アイリス」


エル「『うちに来た日にそう名乗った。男とは思えないほど美しい肌、ブロンドピンクに青い目、まるで人形のような顔立ちのそいつは薄汚い格好で手錠をしていた」

エル「『その美貌は男女問わず見惚れるもの。骨抜きにされたうちのボスは、その日から様々な仕事や任務に同行させた。窃盗、詐欺、ドラッグ、風俗、カジノ、暗殺』」

エル「『うちはかなりの事業に手を伸ばしており、部署事で独自で動いているのが特徴。貉(むじな)同士であっても、顔も名前も知らない。それを誰も気にしない。』

アイリス「ねぇ、貴方がここの「指令」なの?」

エル「…………何故」

アイリス「目線」

エル「……」

アイリス「目は口程に物を言う。貴方が厳戒しているんでしょ?組織と管理が完全に分かれているのね。面白いじゃない」

エル「随分と施しを貰ったようですね」

アイリス「(微笑んで)膝の上に乗って甘える猫には、色々施しが有るのよ」

エル「恐ろしい方だ。私からも餌を貰いたいのですか?」

アイリス「まさか、まだ、頂かないわよ」

エル「賢明な判断です。では、何の用で」

アイリス「アタシに、仕事を教えて欲しいの」




エル「『まさか、全て覚えてしまうとは思いませんでしたが、最初からそのつもりだったのでしょう』」

エル「『まあ、これも必然と言えばそうなるのでしょうが』」




アイリス「ねーえー、最近この辺りの収益落ちてない~?」

エル「確かに、こちらは先日幹部の一人が襲撃され亡くなりましたからね。」

アイリス「だからって、こんなに落ちることある~?そんなに使えない奴らばかりなの~?ねぇねぇ~」

エル「要件をどうぞ」

アイリス「フフッ、こぉれぇの!家が欲しいの♪」





回想終わり





ホテルの廊下を歩いている2人




エル「何故自らお手を汚すような事を。メルクに任せては」

アイリス「そうね~、あの子がもう少し聞き分けのいい子なら任せていたんだけど」






エル「『メルク、アイリスの部下であり側近主に裏工作や後始末を行う。アイリスが内に来てから5年ほど組んでいる』」





メルク「アッイッリッスさぁーーん!」

アイリス「なぁに?メルク。重たいから抱き着かないで頂戴」

メルク「ケチィ!!」




エル「『などのやり取りが日常茶飯事。そのメルクと数日連絡が取れなくなった。同時に「アイス」のルートの幹部が死亡。偶然とは思えない。部下の安否もある為、アイリスが直接調べ始めた』」






少し間を開ける






アイリス「あの子は、手を汚すのを楽しんでいるの。小さい子供が泥遊びをしているのとおんなじ。」

アイリス「その姿も可愛らしいけどねぇ。お仕事をするなら、先の後片付けまで見通せる子じゃ無いとね~」

エル「「しっかり」教育をさせます」

アイリス「ああ、必要ないわ」

アイリス「私だけに泥を付けるのは構わないのよ。私が洗えばいいから。」

アイリス「でも……」

アイリス「家中に塗りたくるのは、違うわよねぇ?」

エル「家、そういう事ですか」

アイリス「ほんと、聞き分けの無い子供って、予測不可能よねぇ」







車の中にて資料を読んだ2人
エル運転している






エル「…………」

アイリス「ね~、本当にすごい事をしてくれたわよね~」

エル「呑気な事を言ってる場合ですか、と、本来は言うのでしょう。この為の先手でしたか」

アイリス「そうそう。先に溝鼠(ドブネズミ)を掃除したの~。親がいなければあの子達は何も出来ないわ」

エル「既に領土の7割をシマにしていたとは。クーデターですか」

アイリス「その可能性も無くは無いけどね~」

アイリス「メルクは夜目がきくから、隠密に動く仕事がメイン。証拠も残さない。『最初から何も変わらない』状態にするの。だから、あの子がこんな派手に動くのは考えにくい」

アイリス「それに、アタシからの任務は完璧に完了させていたから、ね。ここまで言えばどういう事か分かるでしょ?」

エル「篭絡は考えにくい。威圧ですか」

アイリス「そういう事。あの子なりのサインかもしれないって思って、今日はここに乗り込んだのよ」

アイリス「予想は半分当たりで半分ハズレ。加担はしていたけど首謀者じゃないわ。ま、それでも裏切りに変わりなかったから消したけどね」

エル「いつもながら、辿り着くのが早い。私が教える事は数少ないです」

アイリス「そうなの?てっきりまだまだって言うと思ってたのに」

エル「半年前にクルーズ船6隻を、全て捌くまではそうでした」

アイリス「ふふ、あれでも結構ギリギリだったのよ~」

エル「淑女の仮面は通じません」

アイリス「もう、冗談も通じないのね」

エル「アナタが最初に言ったではありませんか「指令」と」

アイリス「そうだった、そういう立ち回りだものね」

エル「次の動きはこちらで如何でしょう」



エル、資料をアイリスに渡す



アイリス「ほんと、いつから考えていたのかしら?」

エル「指令はいつも最適な選択をするのが役目です」

アイリス「あーあ、怖い怖い。ふふッ」

エル「どちらへ」

アイリス「ポイント69に向かってちょうだい。もう一つ、ヤることを見つけちゃった」





ポイント69 アジト内にて


銃声が響き渡る

5分程立つと静かになる

SE:銃の連射音





アイリス「(銃口の煙をフッとする)はい、終わり終わり」

エル「例のモノは」

アイリス「あったわよ~」



コンピューターに刺さってるUSBを抜く



アイリス「西から取り寄せた約100億の薬(品物)よ」

エル「確かに、預かります」

アイリス「あと、ま~たあった。あの子と繋がりが有るものが」



机の上にあったものをもって見せる



アイリス「懐中時計の欠片よ。あの子の私物、おかしいわね~。わざとかしら?さっきの場所にもあったの。」

エル「意図があると」

アイリス「察しが早くて助かるわ。でも、どういう事かしら~。時計が関係あるの?それとも時間かしら?」





後ろのドアの奥から物音がする
2人とも即座に銃を発砲する
SE:銃声音2回



扉が2人に向かった倒れてくる
男が血塗れになっている


アイリス「やっだあ!まだいたの」

エル「(無言で銃をしまい、男の服を調べる)」

エル「ありました」



アイリスに何かを投げる



アイリス「ん?鍵?」

エル「4種類あります。うち一つはカードの様ですね」

アイリス「何かしらこれ?電子キーの様に見えるけど?」

エル「我々が管理している中で電子を使用しているのは」

アイリス「…あらぁ、そ~んなものまで奪われてたの?」

エル「ええ。私の落ち度です」

アイリス「ふふ、そんな落ち込まないで。取り返しに行きましょ」









とある裏路地のスラム街



メルク「ハァ、ハァ、ハァ、」



裏路地を走っている
脇に何かを抱えている



メルク「『これさえ、これさえあれば…!』」



撃たれた脇腹を抑えながら、闇夜に消えて行った




とある廃墟の中にある古びた金庫
エルが電子キーでロックを解除する




アイリス「あら、すごいお宝が眠ってたこと」



中には何十とある紙幣の束ネックレスやブレスレット等が置いてある




エル「どうやら、ここが資源の寝床だったようです。ふむ、総額15億は行くでしょう」

アイリス「あらあら、随分と少ないものねぇ。これだけのためにあの子は溝鼠になったのかしら?」

エル「可能性は捨てきれません。それに、」




後ろも見ずに脇から銃を撃つ
SE:銃声音1回




エル「一緒に虫も付いていたようです」

アイリス「やだぁ!寄生虫?!こっちに来ないでよバッチィわ」

アイリス「ねぇ、隠れても無駄よ~。さっさとでてきなさぁい!」




アイリス四方に銃を6回撃つ人が上から落ちてくる




アイリス「多いわね」




相手も銃を撃ってくる




エル「1分で終わらせましょう」





アイリスとエル、左右に分かれて敵を撃つ
SE:銃撃戦の音





アイリス「終わったわ」


エル「さて」





倒れている人の頭に銃を2回撃つ
SE:銃声音2回





エル「出て来て貰いますか」






廃屋の柱の方に銃を構える




アイリス「もうあきらめなさいな。アナタの寝床は全てアタシたちが片付けたわ」

エル「…ネオナート」

アイリス「ん?何そ…」


メルク「わ!分かったわ!分かったから!」





柱から小柄な女性が出てくる




メルク「言うとおりにする!するから…」




両手を挙げて膝をつく
エル、銃を降ろす



アイリス「さぁて、何から質問しようかしら~?メ~ル~ク~?」

メルク「うっ…」



アイリス、メルクに近づく
メルク体を小刻みに震わせてる




アイリス「ねぇ?アタシ、アナタに何かしたのかしら?厳しい任務を押し付けた?報酬が少なかった?あ、それともパトロンが無能だったかしら?変ね~。パトロンはエルが選んでいたはずなんだけどねぇ~」

メルク「…」

アイリス「だんまりなの?」

メルク「…」

アイリス「今のアタシ、機嫌はいい方なのよ?こうして答えを待つくらいは。」

アイリス「ああ、手が滑ったわ」



アイリス、1枚の書類を落とす



メルク「!!」

アイリス「これ、わざと?」

メルク「あ…」

アイリス「3ヶ月前?かしら突然雑になったわよね?後片付け。まぁ、プリシアには?もみ消しして貰ったから?何にもならなかったけど」

アイリス「民間人とヤッちゃったのは、度胸がすごいわ~って思ったわ」

アイリス「その結末がこれ?まさか近隣の学校にぜ~んぶばら撒くなんて、大したものね?ルートの設立としては面白いけど、事業で動かすのは不可能。小遣いにもならないわ」

アイリス「でも、やっちゃったのね?アナタの意見で」

メルク「…」

アイリス「これの将来性はどこにもない。だって、将来顧客になる可能性がある子牛を全部ブランケットにしちゃったのよ?ステーキが好きな顧客の方が市場の8割を占めているのに」

アイリス「ほんと、お馬鹿よねぇ?」

メルク「…」

アイリス「さぁ、これでアナタを守るものは全部無くなった訳だけど?話す事ある?」

メルク「わ…」

アイリス「ん?」

メルク「わ、私は、貴方の為にやったんですよ…」

アイリス「う~ん?何の利益にもなっていないのに?」

メルク「これをやれば、アイリスさんが喜んでくれるから…ってこれさえ、これさえあれば…!」

アイリス「メルク?何の事?」

メルク「私とこの子を!守ってくれるって!」

アイリス「メルク?落ち着いて」

メルク「私は!全部守りたかっただけ!それだけなのに…私に…あんな事までさせといて…」

メルク「私の…体を…!」

メルク「私は、貴方だけは許さない…。アイリスさん…、これ…」




銃声が鳴る
SE:銃声音
メルクの額を打ち抜く




アイリス「!!」




エル、無言でアイリスに近づく



エル「これで、掃除は全て終わりましたね。報告は私が行います。少し散らかりはありますが、ディバウアーに任せればよいでしょう」

エル「では、私は車を」



エル、後ろを向いて歩きだす





アイリス「お待ちなさいな」





エル、足を止める






アイリス「ねぇ、なんでこの子の最期の言葉、聞かなかったの?」

エル「…」

アイリス「それと、メルクは私に向かって話してなかった。あの子、2人きりの時は「イリス」って呼ぶのよ」

アイリス「そして、現場にあった懐中時計、これは貴方の事なのよ。見覚えあるでしょ」

エル「…」

アイリス「「指令」である貴方が何故こんなにも、アタシの思い通りに動いていたのかしら?いいえ、この質問じゃないわね。どうして、アタシが望む「指令」として動いたのかしら?」

アイリス「最後」

アイリス「どこの屑共に回したの」





エル、無言で振り返る





アイリス「どういう事か説明して欲しいわ「司令塔」さん」



(間を開ける)



エル「ふむ、予想外でした。まさか呼び名が違うとは」

アイリス「どういう事かしらって聞いているのよ」

エル「どう、と言われましても、メルクから貴女を上へ行かせたいと、相談を持ち掛けられたので、他ルート確保に尽力していただいただけですが」

アイリス「たかだか月の稼ぎが1割しか上がらない事を?アナタがそんな事をするわけがない」

アイリス「アタシを使うための下準備だったわけね」

エル「人聞きが悪いですよ。私は確保するための最適なルートを考えたまでです」

アイリス「普通なら、牛が子牛を生ませるようにするわよね。それと、「人聞きが悪い」ですって?「指令」の貴方が?随分人間じみた事を言うのね」

エル「…」

アイリス「まさかメルクを、いいえ、元々メルクに宿った命を脅しとして使うなんて、凄い事するわね。奇跡が起きたから利用するなんて。なんてことをするのかしら?」

アイリス「アタシね、結構短気なのよ。今すぐにでもそのすまし顔(ズラ)に風穴開けてやりたい所を我慢しているのよ?」





エル、口角を上げる(合図の様にフッと鼻息を出してもいいです)




アイリス「?!」

エル「やはり、貴女もそのようになるのか」

アイリス「はぁ?」

エル「ここに来た時は、目を見る事をしなかった貴女が変わるものですね」

アイリス「何を言っているのかしら」

エル「興味本位です」

アイリス「それだけ」

エル「それだけ」



(間を開ける)



エル「貴女は彫刻そのものだ。目の輝きは無い、只、美しいモノとして存在していた」

エル「その貴女に、心が現れた」

エル「実に興味深かったです。」

アイリス「そんな物の為に、ここまで手の込んだことをしたの」

エル「何故か、そうですね。どうやら、途中から楽しんでしまったようです」

アイリス「幹部を殺してまで」

エル「…やはり、まだ若いですね。教える事は少ないと、伝えましたがそんな事は無いようです。」

アイリス「ここから出れると思っているの?」





アイリス銃を構える




エル「予備ですか。抜かりが無くて結構」

アイリス「アナタにはまだまだ聞くことが沢山あるの。その場に居た方が身の為よ」

エル「その詰めの甘さは及第点。精進してください」




エル、自分のこめかみに銃を当てる




アイリス「なッ!」

エル「先で待ちます。成長をしてくださいね」




SE:銃声音












アイリス「『エルの自殺から一週間後、組織内で起きていた騒動は全てエルが首謀者だった。手を貸した者、そそのかされた者、騙された者、脅された者、組織全員がエルによって踊らされていた。「指令」がいなくなったことで組織は崩れた。立て直すために、首謀者に辿り着いたアタシが、新たなボスに就くことになった』」


アイリス「『皮肉にも、エルに仕込まれていたことが幸いし、軌道に乗せる事は直ぐにできた。そして1年後』」







封筒が届く





アイリス「なにかしら?差出人も名前も何も無いじゃない」

アイリス「『突然届いた無記名の封筒。その中には』」

アイリス「!!」

アイリス「『奴からの手紙が入っていた』」



エル「Hallo,今頃、私は死んでいるだろう。と言う事はうまくいったと言う事だ、まさか私に---」




アイリス「『読んだ後は暖炉に入れて跡形もなく燃やした』」



アイリス「面白いじゃない。その挑戦状受けて立つわ。アタシがアナタ以上になるから、そこで大人しく焼かれてなさい」





エル「暖炉に居れた紙が燃え上がる。後に「シュガー・スレイ」と言う組織を立ち上げ国家を飲み込むまでの組織になるのは別の話」











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