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神の聖水編
神の聖水編 ep.1
しおりを挟むseason2 神の聖水ep.1
アルガン逮捕後2週間
マリーの庭に集まったイアとヒュー
マリー「さて、今日話すのは他でもない。先日のリドル・アルガンに付いてだ」
イア「結局のところ、殺害及び死体の遺棄は本人が行いましたが、それ以外はまだ分かっていない所が多いです。」
ヒュー「そもそも、ルディア宰相が何故、セレスティア商会との繋がりが出来たのでしょうか?」
イア「今、調査を進めております。直ぐに口を割るかは不明ですが」
マリー「…クラウンが暴走してなければいいがな」
イア「ご心配なく。私(わたくし)の部下が付いております」
マリー「…だとしても、また、顔が青を通り越して白になるな…」
イア「それは、覚悟の上でしたから、おそらく?大丈夫でしょう」
ヒュー「…何か、リラックスできるものをお持ちしますか?」
イア「まあ、宜しいですか?」
マリー「ああ、例のあれを渡そう。今回は相当酷いものになりそうだからな」
ヒュー「では、お持ち致します」
ヒュー、一礼をして邸に向かう
イア「マリー様、こちらを」
マリー「これは?」
イア「ルディア宰相が潜入調査を行っていたリストです」
マリー「…ふむ」
マリー「随分と危険な場所にまで潜入していたな」
イア「ええ…。まさか、「クトー・リュコス」にまで潜入していたとは…」
マリー「幹部の地位までいたとは…。これは、数日の内に動きがありそうだな」
イア「この事はクラウンは?」
マリー「既に知っていたよ。「もう対処したから安心しろ」だと」
イア「流石ですね。こちらの二手三手…いいえ、十手先まで見越していますね」
マリー「どこから仕入れてくるのやら。ルディア宰相だけに任せたわけじゃなさそうだな」
イア「ええ。それと、もう一つ気になる所が」
マリー「ん?このリスト以外にか?」
イア「そちらは確かに実在する組織と確認が取れています。が、一つだけ曖昧なものがありまして」
マリー「曖昧なもの?」
イア「はい。確か、レムレース…」
マリー「(被せて答える)レムレース・ビジョン・オディオ」
イア「…!」
イア「ご存じなのですか?」
マリー「どこで聞いた?」
イア「…西部に訪問した際に、町の人々の話から聞きました。なんでも、「神を研究している所」と」
マリー「なるほどな。西部のシーベランが付いていた理由が分かりそうだ」
マリー「イア」
イア「はい」
マリー「今の話、他に知っている者は?」
イア「クラウンと「あの方」かと」
マリー「ふむ、情報は厳重に出来たそうだな。」
ヒュー「お待たせしました」
マリー「ヒュー、丁度良かった」
ヒュー「はい?」
マリー「ドクターの所に行く。支度をしてくれ」
ヒュー「かしこまりました。」
ヒュー「イア様、こちらになります。」
イア「まあ!これはメソ・ドルチェの最新作ではありませんか!宜しいのですか?」
ヒュー「はい。今回の新作では、リラックス効果の高い柑橘系のアロマをふんだんに使用しております。」
イア「これは皆さん確実に喜びます。ありがとうございます。」
ヒュー「お役に立てて光栄です」
ヒュー「マリー様、ご連絡とお召し物はどうされますか?」
マリー「1時間後に研究室にと伝えてくれ。服はいつもの動ける格好で」
ヒュー「承知しました。」
イア「何か思い当たることが?」
マリー「ああ。全く。天使のシアロンなり神の研究なり…罰当たりにもほどがある。」
イア「神を名乗る不届き者…」
マリー「ん?」
イア「いえ、最近の罪人たちがやけに神の名を語ることが増えたので、気にはなっていたんです。一度調査を行いたいと思います」
マリー「調査はありがたいが、仕事は大丈夫なのか?」
イア「ご心配には及びません。私の民は皆優秀なので、お任せして大丈夫です。私は今、領主として調査を勧めさせていただきます。」
マリー「流石だな。それならいいんだ。イア、おそらくだが君の前領主も関わる案件になる。良いか?」
イア「お気遣いありがとうございます。問題ありません。まずは、どちらから情報を集めましょうか?」
マリー「そうだな。もう一度、ルディア宰相の素行を調べてくれ。それと、潜入調査資料のまとめも。かなり多いが、頼むぞ」
イア「はい。承知しました。」
ヒュー「マリー様、お召し物の支度が出来ました。」
マリー「ああ、直ぐに行く」
マリー、邸に入る
マリー「メイジー、メイジーはいるか?」
メイジー「お呼びでしょうか?マリー様」
廊下から1人のメイドが出てくる
マリー「これからドクターの元へ向かう。支度を頼む」
マリー「それと、今日うちの屋敷に鼠が来るようでな、もてなしを頼めるか?」
メイジー「承知しました。最高級のおもてなしをご提供させていただきます」
マリー「ああ。」
メイジー「マリー様、本日のご夕食はどうしましょうか?」
マリー「うーん、そうだな、久しぶりにソテーが食べたい」
メイジー「かしこまりました。」
メイジー「髪はどうされますか?」
マリー「髪飾りを付けなおしてくれるか?」
メイジー「かしこまりました。」
手際よくマリーの身支度を済ませる
身支度後、鏡を見るマリー
メイジー「如何でしょうか?」
マリー「完璧だ。流石、うちのメイド長だ」
メイジー「お褒めに預かり光栄でございます。お気を付けてくださいね」
マリー「ああ。今日はヒューも一緒だ。心配は無いよ」
メイジー「そんな事をおっしゃっても先日は危ない目に逢われました。もう少しで、私もネルも向かうところでしたよ」
マリー「ああー…それはすまなかったな。アハハ。」
メイジー「ヒュー執事が一緒なのは英断です。くれぐれも、ご自身の身を最優先にお守りくださいませ」
マリー「…努力する」
扉がノックされる
ヒュー「マリー様、御仕度は如何でしょうか?」
マリー「ああ、今済んだところだ。入っていいぞ」
ヒュー「失礼します」
ヒュー、部屋に入る
ヒュー「トート様には連絡を致しました。いつでも良いとのことです」
マリー「それは助かるな。では、向かうとしよう。ああ、鼠はメイジーに任せた」
ヒュー「承知しました。気をつけてくださいね」
メイジー「はい。」
マリー「では、向かうとするか」
トートの部屋の前に立ち、ノックをする
ディス・トート「(遠くから)開いてるよ~ん」
マリー「失礼する」
ディス・トート「やぁ~侯爵様~と、執事く~ん」
トート、自身の机に向かって資料を作成している
マリー「急な訪問ですまないな。早急に確認したい事がある」
ディス・トート「知ってるよ~ん。まずはかけなよ。執事君はひさ~しぶりだね~。また来てくれて嬉しいよん」
ヒュー「お久しぶりでございます。相変わらず、凄い資料の数ですね。また増えたのですか?」
ディス・トート「増えたよ~。この間の人間シーベランの治療を行った後から、植物の奇病に付いて知りたくなってね~新しい興味が湧いたよ~」
ヒュー「あれだけの知識を有して尚、新たな知識を取り入れる姿勢は尊敬致します」
ディス・トート「知識はいくつになっても更新するものだよ。君も侯爵様の元で色々学んでいるだろう?」
ヒュー「その通りですね」
ディス・トート「それで?侯爵様。な~にを知りたいんだ?」
マリー「天使のシアロンについてだ」
ディス・トート「おん?」
マリー「医師としての見解を聞きたい。あれで不老不死は可能か?」
ディス・トート「ふ~む…」
ディス・トート「どこまでが不老不死になるのかによるね~」
マリー「というと?」
ディス・トート「簡単な話しさ。平均寿命が大体80歳くらいだろう?100歳を超えたら不老不死なのかね?それとも本当に200歳とかまで超えればそうなるかねぇ?」
マリー「確かにそれはそうだな。定義は曖昧だ。」
ディス・トート「あの成分を研究員が調べたけど、確かに若さを保つ事は出来るけど、それで寿命が80歳から200歳になる事は無いよん」
ディス・トート「まぁ~、人体の損傷を修復する機能があるから、心臓とか肺とかの筋肉や細胞の補助にはなりそうだね~。けどぉ、それも一時的なものだし、連続投与だと効き目も薄くなる。仮にもうすぐ寿命が来る老人に毎日使ったとしても、長くて1ヶ月伸びるくらいだ。」
マリー「ん?試したのか?」
ディス・トート「人間のは使ってないよ!!通常栽培のシーベランで試した結果だ。87歳の老人に使わせてもらった。ああ、本人から許可は得ていたよ。何でも、お孫さんが来る日が丁度、動物たちの一斉病気の時期と被ってしまったらしくてね。自分の死期が分かっていたから藁にもすがるってやつだったよ。」
マリー「…お前な…。気持ちは分かるが企業秘密のものだぞ」
ディス・トート「本人には栄養剤と言って投与したよ!実際栄養だし!」
マリー「それでも駄目だ。またあの部屋に放り込まれたいのか?」
ディス・トート「ひぇ!!それは勘弁を~~!!」
マリー「全く…。で?結果はどうだったんだ?」
ディス・トート「一回の投与で3日は意識がはっきりとしていた。お孫さんたちが来たのは1週間後だったから3回やったよ。お孫さんと最後の会話をして眠ったさね」
マリー「なるほど。死の間際で3日と言う事は健康な状態であればある程度期間は伸びると言う事か?」
ディス・トート「って、僕も思ったけど~、そうでもなさそうだよん」
マリー「というと?」
ディス・トート「あくまでも、その場しのぎって所。薬の効果が切れれば直ぐにお陀仏。連続投与したところで効果がなくなる速度は速くなるし、いずれは効かなくなる。人体と言うのはそういうもんさね」
マリー「なるほどな。」
ディス・トート「成分を増やしたところで期間は伸びても結果は同じってのが僕と研究チームの見解だよん。勿論、薬としては使えるね~。早い所使用許可が下りればいいけど?」
マリー「暫くは無いな。グロックヤートも発見されている以上、迂闊にはまわせん」
ディス・トート「そうだろうね~。まぁ、僕ぁ気長に待つよん。」
マリー「不老不死は出来ないと言うのが答えだな」
ディス・トート「そゆことん」
ヒュー「だとすると、疑問点がいくつか残りますね」
マリー「そうだな。アルガンの話では本当に不老不死を見たかのような発言だったからな」
ディス・トート「ん~、不老不死もあんまり良いもんじゃ無いと思うけどね~。」
ディス・トート「人としての機能を失ってまで生きたいもんかね?」
マリー「人としての機能を失う?」
ディス・トート「人間の脳って言うのは不思議なもんで、長く同じ景色や場所を見続けると、視界から消してしまうのさ。ほれ、自分の部屋に置いてあるものは、意識して探そうとしないと視界に入ってこないだろう?それの究極版みたいなもんさね」
ディス・トート「同じことが聴覚や味覚でも現れるというのが分かったのだよ。」
マリー「なるほど。それだけ生きれば世界の全てでも見れそうだからな。いずれ限界が来るわけか。」
ディス・トート「今は人類が存在しているからなんでもできるさ。だが、人類だっていずれは滅びるか進化をする。」
ディス・トート「永遠の命を持ったとして、通常の人間の様に過ごすのは不可能だと思うよ~。」
ディス・トート「そんな世界面白くなかぁ~無いかい?」
マリー「確かに一理あるな」
マリー「時間を取ってくれて感謝する。私はこれで行くよ」
ディス・トート「はいは~い。また何かあったらいつでもおいで~」
ヒュー「また、色々と教えてください」
ディス・トート「いいよん。今度は人体の回復力に付いて学ぼうかね?」
ヒュー「はい。楽しみにしております」
トートの研究室を後にして自身の屋敷に帰って来たマリー
メイジー「おかえりなさいませ。先程、ヴィーズ様がお見えになられています。客間にてお待ちして頂いております。」
マリー「そうか。早かったな。通してくれ」
客間にて
マリー「すまない。待たせたかな」
イア「いえ、丁度来たところです。」
マリー「それで、何か分かったのか?」
イア「ルディア宰相の足取りが追えました。一か月前にラデゥーの納税調査に向かった先にアルガンと知り合ったそうです。最初はお互い素性を隠していたようですが、以前あったクラウンの謁見の際に改めて知り合いになり、そこから秘密裏に動いていたそうです」
イア「西部にもしっかりと足を運んでいましたね」
マリー「やれやれ、と言った所か」
ヒュー「失礼いたします。お飲み物をお持ちしました。」
マリー「ありがとう。(一口飲んで)ヒュー、どう思う?」
ヒュー「僭越ながらお話しさせていただきます。不老不死の目的以外にも何かあったと考えるのが妥当かと」
マリー「そこまでは私も同じだ。して、その理由は何だと思う?」
ヒュー「今回の事件がこのお二人だけで行ったと言う事は考えにくいです。司令塔が居るかと」
イア「私も同じだと思います。只の商会の人物がそもそもこのような話題に触れるかなと思いましたが、アルガンは昔、この国の警備隊に勤めていた経歴がありました。それも我が国に来られる高貴な方々の」
マリー「なるほど。そこからの繋がりと言う可能性があるな」
ヒュー「さらに、身に付いていた指輪やバッジの紋章、おそらく、他にも付けている方が居るかもしれません」
マリー「と、言うと?」
ヒュー「メイジーさんが仕留めてくださった鼠が教えてくれました」
ヒュー、バッジを見せる
マリー「なるほど、ね。しかし、あそこまで殺気を隠せない鼠は初めて見たぞ?私でも分かったくらいだ」
ヒュー「報酬がそれなりにあったのでしょうね。まあ、貰える事はありませんがね」
イア「メイジーさん、素晴らしいですね。あの身のこなし方は一度ご教授願いたいくらいです」
マリー「うちは優秀な使用人しかいないからな。イアの所もそうだろう?」
イア「勿論です。出会えたことに感謝をしなければ。フフフ。」
マリー「今回の事で分かった事は、相当な大物が居ると言う事くらいか」
ヒュー「その場合、どうしましょうか?」
マリー「「殲滅せよ」という命令だからな。徹底的に洗うしかない」
イア「こちらの足を取られないように気を付けなければなりませんね」
マリー「ああ。では、作戦を考えよう」
続く
アルガン逮捕後2週間
マリーの庭に集まったイアとヒュー
マリー「さて、今日話すのは他でもない。先日のリドル・アルガンに付いてだ」
イア「結局のところ、殺害及び死体の遺棄は本人が行いましたが、それ以外はまだ分かっていない所が多いです。」
ヒュー「そもそも、ルディア宰相が何故、セレスティア商会との繋がりが出来たのでしょうか?」
イア「今、調査を進めております。直ぐに口を割るかは不明ですが」
マリー「…クラウンが暴走してなければいいがな」
イア「ご心配なく。私(わたくし)の部下が付いております」
マリー「…だとしても、また、顔が青を通り越して白になるな…」
イア「それは、覚悟の上でしたから、おそらく?大丈夫でしょう」
ヒュー「…何か、リラックスできるものをお持ちしますか?」
イア「まあ、宜しいですか?」
マリー「ああ、例のあれを渡そう。今回は相当酷いものになりそうだからな」
ヒュー「では、お持ち致します」
ヒュー、一礼をして邸に向かう
イア「マリー様、こちらを」
マリー「これは?」
イア「ルディア宰相が潜入調査を行っていたリストです」
マリー「…ふむ」
マリー「随分と危険な場所にまで潜入していたな」
イア「ええ…。まさか、「クトー・リュコス」にまで潜入していたとは…」
マリー「幹部の地位までいたとは…。これは、数日の内に動きがありそうだな」
イア「この事はクラウンは?」
マリー「既に知っていたよ。「もう対処したから安心しろ」だと」
イア「流石ですね。こちらの二手三手…いいえ、十手先まで見越していますね」
マリー「どこから仕入れてくるのやら。ルディア宰相だけに任せたわけじゃなさそうだな」
イア「ええ。それと、もう一つ気になる所が」
マリー「ん?このリスト以外にか?」
イア「そちらは確かに実在する組織と確認が取れています。が、一つだけ曖昧なものがありまして」
マリー「曖昧なもの?」
イア「はい。確か、レムレース…」
マリー「(被せて答える)レムレース・ビジョン・オディオ」
イア「…!」
イア「ご存じなのですか?」
マリー「どこで聞いた?」
イア「…西部に訪問した際に、町の人々の話から聞きました。なんでも、「神を研究している所」と」
マリー「なるほどな。西部のシーベランが付いていた理由が分かりそうだ」
マリー「イア」
イア「はい」
マリー「今の話、他に知っている者は?」
イア「クラウンと「あの方」かと」
マリー「ふむ、情報は厳重に出来たそうだな。」
ヒュー「お待たせしました」
マリー「ヒュー、丁度良かった」
ヒュー「はい?」
マリー「ドクターの所に行く。支度をしてくれ」
ヒュー「かしこまりました。」
ヒュー「イア様、こちらになります。」
イア「まあ!これはメソ・ドルチェの最新作ではありませんか!宜しいのですか?」
ヒュー「はい。今回の新作では、リラックス効果の高い柑橘系のアロマをふんだんに使用しております。」
イア「これは皆さん確実に喜びます。ありがとうございます。」
ヒュー「お役に立てて光栄です」
ヒュー「マリー様、ご連絡とお召し物はどうされますか?」
マリー「1時間後に研究室にと伝えてくれ。服はいつもの動ける格好で」
ヒュー「承知しました。」
イア「何か思い当たることが?」
マリー「ああ。全く。天使のシアロンなり神の研究なり…罰当たりにもほどがある。」
イア「神を名乗る不届き者…」
マリー「ん?」
イア「いえ、最近の罪人たちがやけに神の名を語ることが増えたので、気にはなっていたんです。一度調査を行いたいと思います」
マリー「調査はありがたいが、仕事は大丈夫なのか?」
イア「ご心配には及びません。私の民は皆優秀なので、お任せして大丈夫です。私は今、領主として調査を勧めさせていただきます。」
マリー「流石だな。それならいいんだ。イア、おそらくだが君の前領主も関わる案件になる。良いか?」
イア「お気遣いありがとうございます。問題ありません。まずは、どちらから情報を集めましょうか?」
マリー「そうだな。もう一度、ルディア宰相の素行を調べてくれ。それと、潜入調査資料のまとめも。かなり多いが、頼むぞ」
イア「はい。承知しました。」
ヒュー「マリー様、お召し物の支度が出来ました。」
マリー「ああ、直ぐに行く」
マリー、邸に入る
マリー「メイジー、メイジーはいるか?」
メイジー「お呼びでしょうか?マリー様」
廊下から1人のメイドが出てくる
マリー「これからドクターの元へ向かう。支度を頼む」
マリー「それと、今日うちの屋敷に鼠が来るようでな、もてなしを頼めるか?」
メイジー「承知しました。最高級のおもてなしをご提供させていただきます」
マリー「ああ。」
メイジー「マリー様、本日のご夕食はどうしましょうか?」
マリー「うーん、そうだな、久しぶりにソテーが食べたい」
メイジー「かしこまりました。」
メイジー「髪はどうされますか?」
マリー「髪飾りを付けなおしてくれるか?」
メイジー「かしこまりました。」
手際よくマリーの身支度を済ませる
身支度後、鏡を見るマリー
メイジー「如何でしょうか?」
マリー「完璧だ。流石、うちのメイド長だ」
メイジー「お褒めに預かり光栄でございます。お気を付けてくださいね」
マリー「ああ。今日はヒューも一緒だ。心配は無いよ」
メイジー「そんな事をおっしゃっても先日は危ない目に逢われました。もう少しで、私もネルも向かうところでしたよ」
マリー「ああー…それはすまなかったな。アハハ。」
メイジー「ヒュー執事が一緒なのは英断です。くれぐれも、ご自身の身を最優先にお守りくださいませ」
マリー「…努力する」
扉がノックされる
ヒュー「マリー様、御仕度は如何でしょうか?」
マリー「ああ、今済んだところだ。入っていいぞ」
ヒュー「失礼します」
ヒュー、部屋に入る
ヒュー「トート様には連絡を致しました。いつでも良いとのことです」
マリー「それは助かるな。では、向かうとしよう。ああ、鼠はメイジーに任せた」
ヒュー「承知しました。気をつけてくださいね」
メイジー「はい。」
マリー「では、向かうとするか」
トートの部屋の前に立ち、ノックをする
ディス・トート「(遠くから)開いてるよ~ん」
マリー「失礼する」
ディス・トート「やぁ~侯爵様~と、執事く~ん」
トート、自身の机に向かって資料を作成している
マリー「急な訪問ですまないな。早急に確認したい事がある」
ディス・トート「知ってるよ~ん。まずはかけなよ。執事君はひさ~しぶりだね~。また来てくれて嬉しいよん」
ヒュー「お久しぶりでございます。相変わらず、凄い資料の数ですね。また増えたのですか?」
ディス・トート「増えたよ~。この間の人間シーベランの治療を行った後から、植物の奇病に付いて知りたくなってね~新しい興味が湧いたよ~」
ヒュー「あれだけの知識を有して尚、新たな知識を取り入れる姿勢は尊敬致します」
ディス・トート「知識はいくつになっても更新するものだよ。君も侯爵様の元で色々学んでいるだろう?」
ヒュー「その通りですね」
ディス・トート「それで?侯爵様。な~にを知りたいんだ?」
マリー「天使のシアロンについてだ」
ディス・トート「おん?」
マリー「医師としての見解を聞きたい。あれで不老不死は可能か?」
ディス・トート「ふ~む…」
ディス・トート「どこまでが不老不死になるのかによるね~」
マリー「というと?」
ディス・トート「簡単な話しさ。平均寿命が大体80歳くらいだろう?100歳を超えたら不老不死なのかね?それとも本当に200歳とかまで超えればそうなるかねぇ?」
マリー「確かにそれはそうだな。定義は曖昧だ。」
ディス・トート「あの成分を研究員が調べたけど、確かに若さを保つ事は出来るけど、それで寿命が80歳から200歳になる事は無いよん」
ディス・トート「まぁ~、人体の損傷を修復する機能があるから、心臓とか肺とかの筋肉や細胞の補助にはなりそうだね~。けどぉ、それも一時的なものだし、連続投与だと効き目も薄くなる。仮にもうすぐ寿命が来る老人に毎日使ったとしても、長くて1ヶ月伸びるくらいだ。」
マリー「ん?試したのか?」
ディス・トート「人間のは使ってないよ!!通常栽培のシーベランで試した結果だ。87歳の老人に使わせてもらった。ああ、本人から許可は得ていたよ。何でも、お孫さんが来る日が丁度、動物たちの一斉病気の時期と被ってしまったらしくてね。自分の死期が分かっていたから藁にもすがるってやつだったよ。」
マリー「…お前な…。気持ちは分かるが企業秘密のものだぞ」
ディス・トート「本人には栄養剤と言って投与したよ!実際栄養だし!」
マリー「それでも駄目だ。またあの部屋に放り込まれたいのか?」
ディス・トート「ひぇ!!それは勘弁を~~!!」
マリー「全く…。で?結果はどうだったんだ?」
ディス・トート「一回の投与で3日は意識がはっきりとしていた。お孫さんたちが来たのは1週間後だったから3回やったよ。お孫さんと最後の会話をして眠ったさね」
マリー「なるほど。死の間際で3日と言う事は健康な状態であればある程度期間は伸びると言う事か?」
ディス・トート「って、僕も思ったけど~、そうでもなさそうだよん」
マリー「というと?」
ディス・トート「あくまでも、その場しのぎって所。薬の効果が切れれば直ぐにお陀仏。連続投与したところで効果がなくなる速度は速くなるし、いずれは効かなくなる。人体と言うのはそういうもんさね」
マリー「なるほどな。」
ディス・トート「成分を増やしたところで期間は伸びても結果は同じってのが僕と研究チームの見解だよん。勿論、薬としては使えるね~。早い所使用許可が下りればいいけど?」
マリー「暫くは無いな。グロックヤートも発見されている以上、迂闊にはまわせん」
ディス・トート「そうだろうね~。まぁ、僕ぁ気長に待つよん。」
マリー「不老不死は出来ないと言うのが答えだな」
ディス・トート「そゆことん」
ヒュー「だとすると、疑問点がいくつか残りますね」
マリー「そうだな。アルガンの話では本当に不老不死を見たかのような発言だったからな」
ディス・トート「ん~、不老不死もあんまり良いもんじゃ無いと思うけどね~。」
ディス・トート「人としての機能を失ってまで生きたいもんかね?」
マリー「人としての機能を失う?」
ディス・トート「人間の脳って言うのは不思議なもんで、長く同じ景色や場所を見続けると、視界から消してしまうのさ。ほれ、自分の部屋に置いてあるものは、意識して探そうとしないと視界に入ってこないだろう?それの究極版みたいなもんさね」
ディス・トート「同じことが聴覚や味覚でも現れるというのが分かったのだよ。」
マリー「なるほど。それだけ生きれば世界の全てでも見れそうだからな。いずれ限界が来るわけか。」
ディス・トート「今は人類が存在しているからなんでもできるさ。だが、人類だっていずれは滅びるか進化をする。」
ディス・トート「永遠の命を持ったとして、通常の人間の様に過ごすのは不可能だと思うよ~。」
ディス・トート「そんな世界面白くなかぁ~無いかい?」
マリー「確かに一理あるな」
マリー「時間を取ってくれて感謝する。私はこれで行くよ」
ディス・トート「はいは~い。また何かあったらいつでもおいで~」
ヒュー「また、色々と教えてください」
ディス・トート「いいよん。今度は人体の回復力に付いて学ぼうかね?」
ヒュー「はい。楽しみにしております」
トートの研究室を後にして自身の屋敷に帰って来たマリー
メイジー「おかえりなさいませ。先程、ヴィーズ様がお見えになられています。客間にてお待ちして頂いております。」
マリー「そうか。早かったな。通してくれ」
客間にて
マリー「すまない。待たせたかな」
イア「いえ、丁度来たところです。」
マリー「それで、何か分かったのか?」
イア「ルディア宰相の足取りが追えました。一か月前にラデゥーの納税調査に向かった先にアルガンと知り合ったそうです。最初はお互い素性を隠していたようですが、以前あったクラウンの謁見の際に改めて知り合いになり、そこから秘密裏に動いていたそうです」
イア「西部にもしっかりと足を運んでいましたね」
マリー「やれやれ、と言った所か」
ヒュー「失礼いたします。お飲み物をお持ちしました。」
マリー「ありがとう。(一口飲んで)ヒュー、どう思う?」
ヒュー「僭越ながらお話しさせていただきます。不老不死の目的以外にも何かあったと考えるのが妥当かと」
マリー「そこまでは私も同じだ。して、その理由は何だと思う?」
ヒュー「今回の事件がこのお二人だけで行ったと言う事は考えにくいです。司令塔が居るかと」
イア「私も同じだと思います。只の商会の人物がそもそもこのような話題に触れるかなと思いましたが、アルガンは昔、この国の警備隊に勤めていた経歴がありました。それも我が国に来られる高貴な方々の」
マリー「なるほど。そこからの繋がりと言う可能性があるな」
ヒュー「さらに、身に付いていた指輪やバッジの紋章、おそらく、他にも付けている方が居るかもしれません」
マリー「と、言うと?」
ヒュー「メイジーさんが仕留めてくださった鼠が教えてくれました」
ヒュー、バッジを見せる
マリー「なるほど、ね。しかし、あそこまで殺気を隠せない鼠は初めて見たぞ?私でも分かったくらいだ」
ヒュー「報酬がそれなりにあったのでしょうね。まあ、貰える事はありませんがね」
イア「メイジーさん、素晴らしいですね。あの身のこなし方は一度ご教授願いたいくらいです」
マリー「うちは優秀な使用人しかいないからな。イアの所もそうだろう?」
イア「勿論です。出会えたことに感謝をしなければ。フフフ。」
マリー「今回の事で分かった事は、相当な大物が居ると言う事くらいか」
ヒュー「その場合、どうしましょうか?」
マリー「「殲滅せよ」という命令だからな。徹底的に洗うしかない」
イア「こちらの足を取られないように気を付けなければなりませんね」
マリー「ああ。では、作戦を考えよう」
続く
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それを追い求める中で、彼は恐ろしい陰謀と向き合わなければならない。
彼の未来を決定づける「最後の電話」に込められた母の思いとは一体何なのか?
真実と向き合うため、ヒロシはどんな犠牲を払う覚悟を決めるのか。
最後の母の電話と、選択の連続が織り成すサスペンスフルな物語。
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
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私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
舞姫【後編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
彼らには思いもかけない縁(えにし)があった。
巨大財閥を起点とする親と子の遺恨が幾多の歯車となる。
誰が幸せを掴むのか。
•剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
•兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
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20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われ、ストリップダンサーとなる。
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葉羽
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