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まごころレストラン

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空「お菓子は人を幸せにするの。」

空「料理は人を健康にするの。」

空「ここは、お客様の「声」を聞いて」

空「その場で食材を調達し調理する」

空「メニューはお客様の心にあります。」



店内に人が入ってくる



空「いらっしゃいませ!」

空「お待ちしておりました。」

空「どうぞ、こちらの席に座ってください。」



カウンターに座らせる。



空「ここは、まごころレストラン。」

空「まずは、当店の説明をさせてください。」

空「このお店にはメニューはありません。」

空「ここは、お客様が今」

空「必要としてるもの」

空「食べたいもの、」

空「見たいものを作ります。」

空「お腹は空いていますか?」



いていないと答えるがお腹の音が鳴る



空「ふふっ。正直ですね。」

空「では、メニューを決めさせていただきます。」

空「何かご希望の料理はありますか?」


空「あら、「なんでもいい」ですか。」


空「………そうなのですね。」

空「(呟くように)なんでもいいと答えるほど、心が忙しいんですね。」

空「(明るく)かしこまりました。」
 

二回手を叩くとふわっと風が吹くと目の前に食材と調理器具が現れる。

 
空「本日のメニューは、「鯖の味噌煮定食」です。」

空「それでは、調理を始めましょう。」


客、調理をしている様子をじっと見てる


空「料理とは心が反映されます。」

空「匂いや見た目、配置、色使い」

空「その人の心を見ることが出来るんですよ。」

空「普段適当に火を入れたりとかしてませんか?」

空「火の強さ1つで、味も見た目も、匂いも変わるんです。」

空「だから、まごころが大切。」


魚を煮る音が聞こえる。その間に味噌汁、付け合せの野菜を作る。


空「さっき、なんでもいいって言っていましたね。」

空「でも、なんでもいいって言葉は、少し違う気がするんです。」

空「正確には」

空「「決める余裕が無くて」」

空「「そこに考える時間が無いから」」

空「「なんでもいい」」

空「っていうちょっと投げやりな感情、かなって思いました。」

空「私達は毎日何かと戦っている。」

空「真剣になればなるほど、深く入り、難しくなるのよね。」


トントントンと包丁のリズミカルな音がなる


空「だからそこ、安らぎを求め、安定を求める。」

空「そして、自分と同じ気持ちを探す。」

空「そんな人が多いからこそ、」

空「私はここでまごころを振る舞うの。」

空「私は答えを見ることは出来るけど、」

空「伝えることはしてはだめ。」
 

ご飯が炊きあがる
 
盛りつけをする

 
空「お待たせしました。」

空「本日のメニュー、鯖の味噌煮定食です。」

客「食べ始める。」

空「美味しいですか?」

空「それは良かった。」


客が食べたことがある味だと、なぜ知っているのかと聞く


空「その味は、あなたが小さい時に食べた味。」

空「思い出の場所で味わった特別な味。」

空「このレストランはね、みんなの心で作られるの。」

空「この部屋はあなたの心が現れたもの。」

空「私はあなたの心を見て、この料理を作りました。」

空「まごころとは「真」の「心」(まのこころ)」

空「他の人に影響されることの無い、」

空「あなたの真実。」

空「まごころをね、見ないようにする人はとても多いんです。」

空「見てしまうと弱くなるから、」

空「嫌になるからって。」

空「でも、その心こそ本物なの。」

空「目を逸らしている方が嫌なもの、弱いものになる。」

空「逸らしているから、疲れてしまう。」

空「現代は、疲れてる人が多すぎる。」

空「そして、」

空「多感な時であるあなたも、」

空「その事に気がついて、疲れてしまったのね。」



空「あなたのまごころは、「反抗期」」

空「成長しているからこそ、出てくるもの。」

空「迷った時に、どうしたらいいか分からず、」

空「あなたは強い言葉を大切な人に言ってしまった。」

空「自分の気持ちだけを優先して。」

空「相手のことを考える余裕もなく、」

空「話すだけ話して、その場から離れてしまった。」

空「でも、本当は伝えたいことがある。」

空「でも、伝えたところで、」

空「誰が、自分の事を分かってくれるのか、」

空「誰が、言葉にできないこの痛みを、」

空「理解してくれるのか。」

空「でも、分かって欲しくない気持ちもある。」

空「自分の気持ちは自分だけのものだから。」



空「それが「真心」」


 

空「そして、私は、その心を形にして」

空「五感で確かめるものを提供する。」

空「「食」を通して。」




空「ふふっ、完食ですね。」

空「美味しかったですか?」
 

客が無言で頷く

 
空「それは、良かったです。」

空「あなたの「真心」はもう、見えましたね。」

空「それでは、デザートも!」

 
手を二回たたくと、果物とアイス、生クリームが出てくる
 

空「疲れた脳には、糖分が必須ですからね!」

空「はい。フルーツパフェになります。」

 
一口食べ、客が涙を流す
 

空「(ハンカチを渡して)素直に向き合えば大丈夫です。」

空「これからの人生を良いものにするために、」

空「必要なことなのですから。」

 
客が声を上げて泣く
 
少し間を開ける
客が帰ることを伝える
 
空「はい。ご来店ありがとうございました。」

空「え?お代ですか?」

空(クスリと笑う)

空「お代はお客様の「真心」を見せてもらうことです。」

空「お代は十分に頂きました。」

空「また、いつでもいらしてください。」

空「ありがとうございました。」
 
 
客が少し歩いて振り向くと、そこにレストランの姿は無かった。
 
少し間を開けて

 
空「ここは「まごころレストラン」」

空「ここにはメニューはありません。」

空「ここは、お客様が今、必要としてるもの、食べたいもの、見たいものを作ります。」

空「お客様が望んだら現れるレストラン。」

空「さぁ、本日も開店です。」

 

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