68 / 98
定められた運命
第67話:七つの魂
しおりを挟む「彼らが君に執着し、守護する理由。それは君が彼らと密接に関わっているからだよ」
八十神くんは穏やかな口調でゆっくりと話し始めた。月明かりに照らされた彼の横顔を眺めながら、あたしはその話を黙って聞いていた。
「彼らは生まれた時代や場所は違うけど、その人生において一つだけ共通点がある。それは『少女との別れ』だ。とある少女の死を切っ掛けに、彼らの意識に大きな変化か現れた」
思い浮かぶのは、夢に見た七つの記憶。
確かに少女との別れの場面ばかりだった。
「一人目は、許嫁の姫を喪った武将。彼は姫の死後、人の身では有り得ないような戦い方で自陣の窮地を救い、戦いの後に自ら命を絶った。彼は今も武勲の神として古戦場跡に祀られている」
これは御水振さんのことだ。
「二人目は、人買いの青年。商品である少女に野盗から逃がしてもらった後、共にいた子どもたちと廃寺に住み着き孤児院を開いた。多くの貧しい子どもの命を救い、その地では今でも語り継がれている」
これはきっと小凍羅さん。
「三人目は、荒くれ者たちの頭領。身代わりの花嫁が味方の火矢で敵もろとも焼き殺される覚悟を決めていたことに心打たれ、助けようとしたが結局共に死んでしまった。その後は祟り神となり、長年拝まれてようやく穏やかさを取り戻した」
螺圡我さん……祟り神だったんだ。
「四人目は、病んだ薬師。彼は流行り病を封じ込めるために弟子の少女を犠牲にしてしまったことを悔やみ、以後は薬草の研究を重ねて疫病根絶を目指して尽力した。多くの人の命を救ったことから死後に医の神として祀られている」
これは阿志芭さんだ。
「五人目は、虚弱な名家の長男。腹違いの妹の死後に跡取りとしての強い自覚を持ち、性悪な弟を追い出して実権を握った。病に倒れるまでの間にかなりの功績を上げて御家を盛り立て、祖霊として敬われている」
瑪珞さんはお兄ちゃんによく似てる。
「六人目は、気性の荒い武家の当主。唯一心を許していた雑用係の娘が妻の策略で死んでから己を恥じ、人が変わったかのように穏やかになった。その後は善政を布き、名君として地元で崇められている」
これは、まだ名前は知らないけど赤色の光の人だよね。
「七人目は、石工職人見習いの少年。彼は遊び仲間の少女が人柱になった後、城の向かいの山に庵を開き、彼女の魂を慰めるため、老衰で死ぬ直前まで無数の石仏を彫り続けた。高名な仏師として名を残している」
これは太儺奴さんだ。
不思議だなぁ。
八十神くんは何でこんな事まで知っているんだろう。それに、今の話は夢で見たから知ってはいるけれど、あたしに関係あるのかな。
「もちろん関係あるよ」
また心を読まれた。
どうなってるんだろう。そんなにあたしって考えてることが分かりやすいのかな。これじゃ隠し事なんて出来ないじゃん。
これもまた読まれたみたいで、八十神くんはこっちを見て困ったように笑っている。
「あのね、榊之宮さん。今までの話に出てきた女の子は全部君なんだよ」
「へぇ……えっ?」
思わず変な声が出ちゃった。
え、なに?
どういうこと???
「君は前世で彼らと出会い、その後の人生を変えたんだ」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
吉祥寺あやかし甘露絵巻 白蛇さまと恋するショコラ
灰ノ木朱風
キャラ文芸
平安の大陰陽師・芦屋道満の子孫、玲奈(れな)は新進気鋭のパティシエール。東京・吉祥寺の一角にある古民家で“カフェ9-Letters(ナインレターズ)”のオーナーとして日々奮闘中だが、やってくるのは一癖も二癖もあるあやかしばかり。
ある雨の日の夜、玲奈が保護した迷子の白蛇が、翌朝目覚めると黒髪の美青年(全裸)になっていた!?
態度だけはやたらと偉そうな白蛇のあやかしは、玲奈のスイーツの味に惚れ込んで屋敷に居着いてしまう。その上玲奈に「魂を寄越せ」とあの手この手で迫ってくるように。
しかし玲奈の幼なじみであり、安倍晴明の子孫である陰陽師・七弦(なつる)がそれを許さない。
愚直にスイーツを作り続ける玲奈の周囲で、謎の白蛇 VS 現代の陰陽師の恋のバトルが(勝手に)幕を開ける――!
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
『遺産相続人』〜『猫たちの時間』7〜
segakiyui
キャラ文芸
俺は滝志郎。人に言わせれば『厄介事吸引器』。たまたま助けた爺さんは大富豪、遺産相続人として滝を指名する。出かけた滝を待っていたのは幽霊、音量、魑魅魍魎。舞うのは命、散るのはくれない、引き裂かれて行く人の絆。ったく人間てのは化け物よりタチが悪い。愛が絡めばなおのこと。おい、周一郎、早いとこ逃げ出そうぜ! 山村を舞台に展開する『猫たちの時間』シリーズ7。
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる