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学校の怪
第45話:疑念
しおりを挟む「……そんなことがあったのか」
帰宅後、お兄ちゃんの部屋で今日の出来事をすべて報告した。
やっぱり納得できなくて、話しながら泣いてしまった。涙をこぼすあたしに寄り添うように七つの光が肩や膝の上辺りに浮かんでいる。俯いた顔を覗き込まれているみたいで、ちょっと恥ずかしい。
「歩香ちゃん、前はあんな子じゃなかったんだよ。友だちを利用するとか、物を壊すとか、そんなことするようなタイプじゃなかった」
「いつから変わったと思う?」
「いつからって……」
お兄ちゃんから聞かれて思い返す。
大人しくて友だち思いの歩香ちゃんがああなってしまったのは、確か──
「や、八十神くんが来たくらいから……?」
ゴールデンウィークの少し前。
四月半ばに彼は転校してきた。
カッコよくて物腰の柔らかい彼にクラスの女子の大半が夢中になった。その中でも、歩香ちゃんは取り巻きのリーダー的な存在になった。
思えば、あの頃から歩香ちゃんはおかしかったのかもしれない。
「ちょうどその頃から異変が起こり始めた」
「え、あ、そうかも」
突然七つの光が見えるようになって、御水振さん、の声が聞こえるようになった。
歩香ちゃんから呼び出されて突き飛ばされた。
小凍羅さんの声が聞こえるようになった。
そのすぐ後に叶恵ちゃんが行方不明になって、縁結びの祠で禍ツ神を浄化した。
神社の末社の神様と対峙した。
螺圡我さんの声が聞こえるようになった。
そして今回、学校の慰霊碑を浄化した。
「その全てに転校生の彼が関わっていることに気付いてる?」
「えっ」
そうだっけ。
縁結びの祠と神社は関係なくない?
『忘れたか。其方が縁結びの祠に向かったのはあの男の言葉が切っ掛けとなったのだぞ』
『小火が起きる前、朝の神社でアイツに会ったよね~?』
『校舎の裏に行くアイツを見掛けただろ』
記憶が曖昧なあたしに変わって御水振さんたちが答えてくれた。言われてみればそうだったかも。
『前にも言ったが、あの男が其方に触れる度に我らの声が聞こえるようになっている』
「……でも、それじゃあ」
今の言い方だと、八十神くんが全ての元凶みたいじゃない?
彼はただの転校生でクラスの人気者。
それだけじゃないの?
「夕月。おかしいと思わなかった? 転校してきた時期も変だけど、彼は裏の一軒家で一人暮らしをしてるんだろう? 今まで彼の家族を見掛けたことはあるか? 普通、どんな理由があっても中学生を一人で生活させるなんておかしいだろ。そうせざるを得なかったとしても一軒家はない。学校の近くにアパートだってあるんだから」
「あ……」
「母さんは毎日食事を差し入れてるけど、彼が一人で暮らしてること自体になんの疑問も持ってない。周りの大人もだ」
そこまで指摘されて、ようやく八十神くんのことが怖くなった。
「それに、これからはもっと気を付けないと」
「どうして?」
「彼に触れられたら御水振さんたちは夕月から強制的に引き離されてしまう。もし禍ツ神と対峙している時にそうなったら……」
「それは、すごく困る」
あたし自身には何の力もない。禍ツ神やおばけと戦ったり浄化することは出来ない。もし現場にひとりで取り残されたりしたらどうなっちゃうんだろう。
「ちょっと対策考えてみるから、それまでは十分気を付けて」
事態は思ったより深刻なのかもしれない。
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2月18日、完結しました
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