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田舎町の謎
第33話:夕月の決意
しおりを挟むあたしはそのままお兄ちゃんの部屋で夜を明かした。
瑪珞さんが抜けた後ずっと苦しそうにうなされていたから、氷枕を作ったり汗を拭いたり。これくらいしか出来なくて、何度も泣きそうになった。
明け方に意識を取り戻したお兄ちゃんは、あたしの姿を見て少し表情を緩めた。
まだ薄暗い時間帯。七つの光が姿を現し、控えめに室内を照らした。お兄ちゃんの顔色はまだ良くない。
「……夢じゃなかったか」
「うん」
「夕月には知られたくなかったな」
「ごめん。ぜんぶ聞いちゃった」
「そうか……」
どこか痛むのか、時折辛そうに顔をしかめる。その様子を見て、お兄ちゃんが昨夜かなり無理をしていたことを再確認した。
「もう危ないことしないで。これ以上無理したら、お兄ちゃん死んじゃうよ」
泣きそうになるのを我慢しながら、あたしはお兄ちゃんの腕を掴んでお願いした。でも、お兄ちゃんは頷いてはくれなかった。
「それは出来ない」
「なんでよ。じゃあ、あたしに言ってよ。今なら御水振さんたちもついてるし、きっと役に立てるから!」
「……夕月はお人好しで誰にでも同情する。それが悪霊や禍ツ神でも。だから、そういう場所には連れて行きたくない」
そう指摘されて何も言えなくなった。
確かに、あたしは縁結びの祠で、叶恵ちゃんを助けるために身代わりになろうとしたり、浄化されかけた禍ツ神に助けを求められて気持ちが揺れたりした。
お兄ちゃんが心配しているのは、あたしのそういう流されやすいところだ。
「それに、……僕は本当はもっと早くに死ぬはずだった」
「え、なんで!?」
「生まれつきこんな力があるせいで魂と身体のバランスが悪いからだよ。普通に生活するだけで精一杯。子どものうちにガタが来るはずだったんだ」
「そんな」
瑪珞さんが言っていた通りだ。強過ぎる力がお兄ちゃんの体に負担を掛けている。
「でも夕月が生まれて少し負担が減った。今思えば、御水振さんたちが寄ってくる悪いものを遠ざけてくれていたんだろうね。おかげでこの歳まで何とか生きてこられた」
そうだったんだ。
あたしのせいで無理をさせているだけだと思っていたけど、あたしが居ることでお兄ちゃんが少し楽になれたのなら良かった。
でも、守られたままじゃ嫌だ。
「お兄ちゃん、これからはあたしがこの町のおかしな場所をなんとかする!」
「ダメだ、危ない。それに、夕月自身には何の力もないんだぞ。もし何かあったら……!」
あたしがそう言い出すと分かっていたからこそ内緒にしていたんだもんね。心配してくれるのは嬉しいけど、そのせいでお兄ちゃんが無理をするのは絶対にイヤ。
「今のあたしには御水振さんたちがついてるし、危なくなる前に止めてもらえる、と思う」
ね? と周りを見回すと、七つの光が肯定するようにチカチカと点滅した。
『其方は言い出したら聞かぬ』
『ホント、変わんないよね~そゆトコ』
『……チッ』
みんなもお兄ちゃんの身体が気掛かりだったんだろう。特に反対はされなかった。
「……仕方ないな」
お兄ちゃんも、渋々だけど認めてくれた。
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