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田舎町の謎
第24話:この町の不思議
しおりを挟む翌日、昼過ぎに玲司さんが遊びにきた。お菓子と飲み物を持参して。
「いらっしゃい。お兄ちゃんは部屋にいますよ」
「こんにちは夕月ちゃん。……あれ、どっか行くの?」
「えっと、近所のお友だちとお勉強するの」
入れ替わりで出掛けようとするあたしを見て、玲司さんが尋ねてきた。
今日は千景ちゃんちで勉強会だ。連休だからといって遊んでばかりはいられない。一応受験生だもん。宿題もいっぱい出ている。
「えー、俺もそっちに行こっかなー」
「おまえ何しに来たんだよ!」
女子中学生の輪に入ろうとする玲司さんの発言に、バン!と襖を開けてお兄ちゃんが現れた。眼鏡の奥にある目がつり上がってる。
「ほら、友だち待たせたらダメだろ。行ってこい」
「う、うん。いってきます」
「お友だちによろしくね~!!」
お兄ちゃんたちに見送られ、あたしは数百メートル先にある千景ちゃんの家に向かった。
千景ちゃんちは門構えが立派な日本家屋だ。お庭もある。門をくぐって石畳を歩き、玄関の引き戸を開けて奥に声を掛ける。田舎だから昼間は鍵が掛かってないんだよね。
「待ってたよ、あがってあがって」
「お邪魔しまーす」
すぐに千景ちゃんが出迎えて客間に通してくれた。先に来ていた夢路ちゃんは既にテーブルの上に教科書とノートを広げている。空いた場所に座り、あたしも手提げ袋から勉強道具を取り出した。
「まずは宿題を片付けないとな!」
「連休、五日しかないのに結構量があるよね」
「先生たち、遊ばせる気ないんだわ……」
愚痴をこぼしながら、それぞれ課題に取り組む。頑張ってる友だちの姿に影響されて、短い時間で宿題は順調に進んだ。
「そういえば、夕月ちゃんちにお客さん来てたね」
「うん。お兄ちゃんのお友だち」
「朝陽さんの?」
夢路ちゃんはお兄ちゃんが気になるみたい。他の男子と違って落ち着きがあるから、昔から実の兄のように慕っている。一人っ子だから兄弟に憧れがあるのかもしれない。
「町外れの山に祠が見つかったじゃない? あの山の所有者さんの孫で、移設の話に来てるおじいさんに付いてこっちに来てるんだって」
「あー、それかあ……」
祠の移設の話をしたら千景ちゃんが唸った。千景ちゃんちはこの辺りの地主さんだから話を聞いていたようだ。
「この町、そういうの多いんだよね。何年か前も畑を掘り起こしたらお地蔵様が出てきたとか神社の奥に忘れ去られて朽ちた社があったりとか」
「えええ、そうなんだ……」
全然知らなかった。
でも、そんなに騒ぎにはなってなかったはず。今までは禍ツ神にはならなかったのかな?
「後継者不足ってゆーの? 祀ってたお年寄りが次に伝える前に死んじゃったり、そもそも継ぐ人がいなかったり……まあ、なんもない田舎町だからね」
「遊ぶとこもないしね」
「自然がいっぱいなのは良いことだけど、さすがに中学生にもなって山や川では遊ばないものね」
女の子だもん。川でザリガニ獲るよりお洒落なカフェや雑貨屋さんに行きたいよ。でも、この町にあるのはせいぜい小さな本屋兼文房具店、あと小さな商店が数軒。
若い人は大人になったらどんどん出て行く。
「ふたりは将来何になりたいの?」
「私は親の跡を継ぐかなあ。なんだかんだ言って、この町が好きだから」
「わ、私は……お嫁さんになりたい、かな」
千景ちゃんも夢路ちゃんも大人になった自分を思い描いている。
「夕月は?」
「可愛いおばあちゃん!」
「おばあちゃんになるまで何十年あると思ってんだよ!」
そう言って、あたしたちは笑い合った。
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