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消えたクラスメイト
第17話:怒れる光
しおりを挟む『ボクたちがついてる以上、お嬢ちゃんに手出しはさせないよ~!』
禍ツ神に身体を乗っ取られている叶恵ちゃんを七つの光が囲い込む。
地鳴りと共に真下の地面に亀裂が入って足場を崩し、膝をつかせた。そこに植物の蔦が伸びてきて手足を縛り上げる。じわりと血が滲み、叶恵ちゃんの顔が苦悶に歪んだ。
赤色と黄色の光が一際輝くと同時に、祠の周りの開けた場所に火柱が上がった。強風に巻き上げられ、炎の竜巻みたいになっている。渦巻く炎が動きを封じられた叶恵ちゃんに迫る。
少し離れた場所にいるあたしにも肌を焦がすような熱さが感じられた。
これ、まぼろしとかじゃなくて本物!?
「ちょ、ちょっと待って!」
『止めるな。すぐ始末をつける』
「始末って、まさか叶恵ちゃんごと?」
『如何にも』
「だっダメダメ! やめて!!」
やっぱり、御水振さんはあたし以外に容赦がない。他の六つの光もそうだ。叶恵ちゃんがどうなろうと関係ないんだ。
いくら禍ツ神に取り憑かれたからって燃やそうとすることないじゃん。軽い火傷じゃ済まないよねコレ。死んじゃうかもしれないんだよ!?
「みんな、やめて!!」
地面の亀裂を飛び越え、蔦の網をくぐって叶恵ちゃんに近付き、その身体を思い切り抱きしめる。
すると、炎の竜巻が勢いを失って小さくなった。
『……お嬢ちゃん。なんのマネかなぁ?』
いつもより少し低い声で小凍羅さんが問い掛けてくる。
みんなの邪魔をしてるんだ。
怒らせちゃったかもしれない。
「叶恵ちゃんを傷付けずに助ける方法はないの?」
『なんでその子を庇うの? ソイツが禍ツ神に何を願ったのか聞いたよね~?』
『その通りだ。生かしておく必要などない』
叶恵ちゃんは禍ツ神にあたしの排除を願った。
だから誰にも言わずにこっそりと山に入ったんだ。後ろめたい願い事だったから。
「それを聞いた時、確かに悲しかったよ。でも、それくらい八十神くんが好きってことでしょ? 願い事の方向性がズレてただけで、人を好きになること自体は悪くないよ! ……ええと、その、だから……!」
緊張してうまく言葉が出てこない。
七つの光があたしを睨んでる気がする。なんにも出来ないくせに口だけ挟んで、迷惑だって分かってる。
でもダメだよ。
人を傷付けたら駄目。
人を傷付けたら、あなたたちは──
『……ククッ、本当に愚かな娘よ』
叶恵ちゃんに取り憑いた禍ツ神が嗤った。
腕を絡め取っていた蔦を無理やり引き千切り、あたしの背中に回した。傍目からは女の子同士で抱き合っているように見えるだろう。
『望み通り、おまえに憑いてやろう』
そう言いながら、あたしの頬を傷だらけの両手で挟んで固定した。そして、そっと顔を寄せてくる。
怪しく光る赤い目は禍ツ神のものだけど、身体は叶恵ちゃんだ。嫌悪感はない。これで叶恵ちゃんが解放されるなら本望だ。
何をされるのか悟り、ぎゅっと目を閉じる。
唇と唇が触れ合う直前、足元の亀裂が更に大きく割れ、あたしたちは体勢を崩した。
『あ~あ、知らないよ~? 一番おっかないのが怒っちゃったからね』
周囲を飛び回る紫色の光……小凍羅さんが愉快そうに笑っている。
少し離れた場所に浮かぶ藍色の光から、すごく怒ってる感情だけが伝わってきた。バチバチと光が弾ける度に地面の亀裂が大きくなっていく。
これ、藍色の光がやってるの!?
次の瞬間、大きな音を立てて地面がひび割れ、石造りの祠が崩れ落ちた。
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2月18日、完結しました
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