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消えたクラスメイト

第12話:行方不明

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 その日の夜、夕食が終わったくらいの時間に家の電話が鳴った。

「はい榊之宮さかきのみやで──あら、どうも~!」

 電話を取ったのはお母さんだ。町内の知り合いからみたいで、最初は笑顔だったんだけど、その表情は次第に曇っていった。お兄ちゃんとリビングでくつろぎながら、どうしたんだろうと顔を見合わせる。

「ええっ? ……ちょっと待ってくださいね」

 そう言ってお母さんは受話器の口元を押さえ、こちらに振り向いた。

夕月ゆうづき田鍋たなべさんちの叶恵かなえちゃんがまだ家に帰ってないんだって。あんた、何か聞いてない?」
「え、叶恵ちゃんが?」

 叶恵ちゃんはあたしのクラスメイトだ。真面目で大人しくて、親に無断で夜遊びなんかするような子じゃない。というか、この町に夜遊び出来るような場所なんかない。

「あたし、知らない」

 家が離れているから、叶恵ちゃんとは学校以外で会うことは滅多にない。それに、この前歩香あゆかちゃんや深雪みゆきちゃんと一緒にあたしに詰め寄ってきた。以前はともかく、今はあまり仲は良くない。

 あたしの返答を電話の相手に伝え、しばらく話し込んだ後、お母さんは受話器を置いた。

「普段よく遊んでる子たちの家にも連絡したそうなんだけどね、どこの家にもお邪魔してないらしいのよ」
「……叶恵ちゃん、どこ行っちゃったんだろう」

 時刻は夜七時半。
 当然外は真っ暗だ。

 あんなことがあったとはいえ、小学校からの付き合いだ。行方が分からないなんて聞いたら心配になってしまう。

「他の学年の子にも連絡して、それでも見つからないようだったら、警察と消防で人を集めて探しに行くことになるそうよ。ウチもお父さんが帰ってきたら行ってもらおうかしら」

 なんだか大ごとになってきた。
 さっきは心当たりはないと言ったけど、そういえば叶恵ちゃんには執着している人物がいる。

「お、お母さん、八十神やそがみくんちにも連絡ってしたのかなあ?」
「え、時哉ときやくん? ……あそこは引っ越して間もないから、まだ電話引いてないんじゃないかしら。それに、夕方におかずを届けに行った時は何も……」
「その後で遊びに来たのかもしれないよ。じゃあ、あたし今から聞きに行ってくる!」

 ソファから立ち上がり、玄関に向かおうとするあたしの手をお兄ちゃんが掴んだ。

「夕月、僕も行くよ」
「お兄ちゃんは家にいて。近所だし、すぐに帰ってくるから」
「でも、」
「あたしには味方がいるもん」

 お兄ちゃんだけに聞こえるよう、こっそりと耳打ちする。そうしたら、渋々だけど手は離された。

 あたしには七つの光が守りについている。その光と会話できるお兄ちゃんがいるから、もし何かあっても伝わるはずだ。

「……すぐ帰ってこいよ」
「うん、わかった」

 家を飛び出し、走って裏の通りに向かう。近所と言っても田舎だから家は少ない。街灯もまばらだ。目当ての家には明かりが灯っていた。留守じゃなくて良かった。

「ご、ごめんくださーい!」

 門に設置されてるインターホンを押しながら声を張り上げる。何度か繰り返していると、奥にある玄関の引き戸が開いた。

「あれ、榊之宮さん」

八十神くんの髪は濡れていて、肩にはタオルが掛かっていた。お風呂上がりだったみたい。

「ご、ごめんね。こんな時間に」
「構わないよ。あ、タッパーまだ洗ってないや」
「あっ違う違う、タッパー取りに来たんじゃないの! 聞きたいことがあって」

 慌てるあたしを見ながら、八十神くんはクスクスと笑った。
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