【完結】かみなりのむすめ。

みやこ嬢

文字の大きさ
8 / 98
すべての始まり

第7話:友達

しおりを挟む


 八十神やそがみくんが転校してきて以来、クラスの女子はみんな彼に夢中になっている。朝、授業が始まる前と休憩時間、昼休み、そして放課後。学校にいる間、八十神くんが一人になることはない。

 それなのに、あたしを見掛ける度に声を掛けてくる。

「やあ、榊之宮さかきのみやさん。昨日はありがとう」
「う、うん」

 八十神くんは一軒家で一人暮らしをしてて、それを知ったお母さんが料理を多めに作って、あたしが届けに行くことになった。だから、こうやってお礼を伝えてくるのだ。

 彼が自分から特定の子に話しかけるなんて滅多にないから、毎回取り巻きの子たちに睨まれてしまう。




「ちょっと夕月ゆうづき!」
「な、なに?」
「あんた八十神くんに色目使ったんじゃないの? 興味ありませんみたいな顔して、陰で彼に取り入ったんでしょ」
「そんなこと……家が近いだけだもん」

 一人の時を狙って空き教室に連れ込まれ、数人の女子から詰め寄られる。口々に責められ、あたしはただ弁解するしかなかった。

 ひとクラスしかないから、クラスメイトは全員小学校の頃から知っている。長い付き合いの中で、こんな風に仲違いしたことなんてなかった。

「とにかく、八十神くんに近付かないで!」
「痛っ……」

 突き飛ばされた拍子に後ろの壁で背中を打ってしまった。よろけて座り込んだあたしを見下ろし、フンと鼻を鳴らしてみんなは空き教室から出て行った。

 これ、いじめかなあ。

 あたしを突き飛ばした子……歩香あゆかちゃんは元々おとなしくて優しい子だ。深雪みゆきちゃんも叶恵かなえちゃんもそう。あんな風に目を吊り上げて怒るようなタイプじゃない。

 なんだか涙が出てきた。

『大丈夫か』
「……御水振オミフリさん」

 青い光が目の前に現れ、側に寄り添う。そして、涙を拭うように頬に触れた。
 あたたかさも何も感じないけど、あたしを気遣う気持ちだけは伝わってきた。

「うっ、うえええん」

 堰を切ったように涙が溢れ、声をあげて泣くあたしの周りに他の六つの光も現れた。みんな慰めてくれてるみたい。少しの間、みっともなく泣いて悲しい気持ちを吐き出した。





「夕月!」
「夕月ちゃん!」

 涙が止まり、空き教室から出たところで声を掛けられた。焦ったような、慌てたような声。

千景ちかげちゃん、夢路ゆめじちゃん」
「どこ行ってたの夕月。探したよ」
「ご、ごめん。ちょっと」

 クラスメイトの女子にいじめられたなんて言えなくて、あたしは言葉を濁した。それを見て夢路ちゃんが悲しそうに眉をひそめる。

「私たちじゃ頼りにならないかもしれないけど、なんでも相談してほしいわ」
「そうそう! アンタはすぐ一人で抱え込むんだから」

 夢路ちゃんと千景ちゃんはそう言ってあたしの左右に並び、腕を組んできた。さっきまでの悲しい気持ちがどんどん薄れていく。

 嬉しい。
 あたしには頼れるお友達がいる。
 一人じゃないんだ。

「ありがとう。二人とも大好き」
「なに、急に」
「私も大好きよ、夕月ちゃん」

 照れる千景ちゃんと笑顔の夢路ちゃん。
 そんな二人に挟まれて、あたしは泣いてたことなんか忘れて笑った。
しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/  香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。  ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……  その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。  香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。  彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。  テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。  後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。  シリアス成分が少し多めとなっています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

処理中です...