42 / 65
第42話 引き留めた理由
しおりを挟む亜衣の誤解はすぐ解けた。ついでにメイド服のサイズが合っていないところを実際に見てもらう。
「ファスナーが閉まらないくらい良くない~?」
「背中が出ちゃうの! それ以前に、肩より上に腕を上げようとすると破れそうになるんだってば」
ギリギリまで腕を上げると縫い目が軋む。その様子を見て、亜衣もようやく納得してくれた。
「昔は同じ服着れたのにねぇ」
「それ小学校の頃の話だよね」
「今もあんまり変わらなくない?」
「高校生だよ? 無理があるって」
僕たち双子は小学生時代、母さんの趣味で全く同じ服を着ていた。見分けがつかないとクラスメイトや先生からよく言われたものだ。
「亜衣、迅堂くんは?」
「今日はバイトの日~」
「ああ、月曜だもんね」
迅堂くんにメイド服姿を見られなくて済んで助かった。
「土佐辺くんも女装すんの?」
「当然。全員参加だからな」
「うわ見たい! 絶対遊びに行く」
僕がメイド服から部屋着に着替えてる間、亜衣は土佐辺くん相手に談笑していた。我が妹ながら、ホントに物怖じしないヤツだ。
「服は決まってるの?」
「姉貴から借りる」
「どんな服?」
「文化祭までナイショ」
なんと、土佐辺くんは既に衣装を決めたらしい。僕より背が高くてがっしりしているのに着られる服があるんだろうか。
「うちの姉貴、学生時代バレー部でさ。身長がオレとほぼ変わらないんだよ。だから大抵の服は着れる」
バレーをやると背が伸びるんだっけ。背が高い人がバレーやるんだっけ。土佐辺くんのお姉さん、きっとスラッとしてカッコいいんだろうな。
「楽しみだね文化祭」
「そうだな。安麻田も早く衣装決めろよ」
「亜衣がまともな服を貸してくれたらね」
「なにそれ、あたしの服は全部普通よ!」
前に貸そうとした服、ぱんつが見えそうなくらい短いミニスカートだったじゃないか。
「じゃあ、オフショルかチューブトップのトップスで肩とデコルテ見せてぇ、ミモレ丈のスカート合わせよっか。マキシ丈もいいけど、瑠衣の脚キレイだから少しは出したいんだよねぇ~」
「え、なに? 呪文?」
「服の種類だってば!」
服の形を表す言葉なの?
全然イメージできないんだけど。
土佐辺くんは顎に手を当て「サイズが合えばいいんじゃないか?」と頷いている。あれで意味が通じたのか。さすが物知り。
その後も三人で僕の部屋で喋っていたら母さんから電話がきた。例の如く、用件は『ゴハン炊いといて』だ。
「僕ちょっと台所行ってくる」
「あー、オレそろそろ帰るよ」
「もう少しゆっくりしていきなよ」
「日が暮れるし、腹も減ったから」
確かに、窓から見える空は夕焼けから徐々に夜の色に変わりつつあった。いつのまにこんなに時間が経っていたんだろう。なんだかんだで楽しかったから、あっという間だったな。
先に僕が階下に降り、後から土佐辺くんが降りようとしたけど「ちょっといい~?」と、二階の廊下に立つ亜衣が土佐辺くんを呼び止めた。ニッと笑いながら手招きしている。
「瑠衣はおコメ研いできて!」
「なんだよそれ……」
土佐辺くんを見送ってからやろうと思ったのに。話があるならさっき話しておけよ。
コメを洗い、炊飯器のスイッチを入れて玄関に向かうと、ちょうど土佐辺くんが階段から降りてくるところだった。
「亜衣が引き留めてごめんね。話、なんだった?」
「んー、たいしたことじゃねえよ。安麻田が学校でうまくやってるかとか聞かれただけ」
「ええ……なんて答えたの?」
「毎日エンジョイしてるって言っといた」
なんだそりゃ。
0
《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
《 異世界年の差BL 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい
《 依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法
《 異世界転移BL 》
魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話
《 営業マン×敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい
《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748
【完結済】星瀬を遡る
tea
BL
光には前世の記憶があった。かつて人魚として、美しい少年に飼われていた、そんな記憶。
車椅子の儚げで美人な高身長お兄さん(その中身は割とガサツ)と彼に恋してしまった少年の紆余曲折。
真面目そうな文体と書き出しのくせして、ー途(いちず)こじらせた男でしか得られない栄養素ってあるよねっ☆て事が言いたかっただけの話。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる