【完結】別れを告げたら監禁生活!?

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
13 / 36

13話・悪役令嬢グレース

しおりを挟む


 グレース様は私たちのクラスを仕切る女帝のような存在。カレイラ侯爵家の末娘で、親兄弟から甘やかされて育ったからか我が儘で高慢な振る舞いが目立つ御方です。私たちは彼女から下に見られ、常日頃から非常に歯がゆい思いをしておりました。

『リオン様もお気の毒よねぇ。侯爵家のお生まれですのに、よりにもよって伯爵家ごときに婿入りだなんて! ああ、お可哀想!』

 ネレイデット侯爵家嫡男アルド様と婚約しているグレース様は、事あるごとに私だけでなくヴィルジーネ伯爵家まで馬鹿にしてきました。実際我が家は弱小貴族。高位貴族に睨まれたらひとたまりもありません。家を守るため、何を言われてもニコニコ笑って受け流すしかないのです。

 将来アルド様とグレース様、リオン様と私が結婚したら、彼女とは親戚となります。親戚ともなれば、生涯縁が切れないということ。顔を合わせるたびに蔑まれるなんて耐えられません。これも私がリオン様と婚約を解消したいと思った理由のひとつです。

 ところが、アルド様は出奔してしまわれました。
 この場合グレース様の立場はどうなるのかしら?
 婚約者が行方不明では結婚できませんものね。

「グレース様はアルド様の行方を血眼になって探しているそうよ。何としても連れ戻すって意気込んでるみたい」
「それで、カレイラ侯爵家が騎士団に探索を要請したらしいんだけど、依頼を断られちゃったんですって」

 二人が色々と教えてくれるので、監禁中だというのに情報が得られて助かります。

 貴族に限らず、国民が危害を加えられたり営利目的で誘拐された場合には自警団や騎士団が迅速に対応してくださいます。

 しかし、今回はアルド様が自らの意思で家を出ているのです。内容までは公表されておりませんが、私室に書き置きが残されていたので事件性は無いと判断されたようです。
 となると、アルド様の捜索はネレイデット侯爵家やカレイラ侯爵家が私兵を出して行うほかありません。

 二人は顔を見合わせて肩をすくめ、悪戯っぽい笑みを浮かべております。
 いつも私たちを馬鹿にしてくるグレース様が大慌てでアルド様を探しているのです。心の片隅で『ざまあみろ』と思うくらい大目に見ていただきたいですわ。

「フラウ、休学して良かったかも。顔を合わせたらきっと八つ当たりされてたんじゃないかな」

 アリエラは眉尻を下げ、苦笑いしています。テーブルの上に置かれた両手でカップを弄っており、落ち着きがありません。

「今日も心配して声かけたクラスメイトに噛みつきそうな勢いで悪態ついてたもん。顔見せたら何を言われるやら」

 コニスはニヤリと口の端を上げて笑っております。私をあまりおどさないでほしいわ。

「フラウも一応ネレイデット侯爵家の関係者だもの。グレース様以外からも何かと探りを入れられそう」
「そーそー。休学して正解だと思う」
「……そうね。私もあまり騒がれたくないし」

 少なくとも、アルド様の件が落ち着くまでは貴族学院に行かないほうが良いのかもしれません。

「私も休学したーい!」
「わたしも。フラウがいないと寂しいもの」
「いいわね、いっそ三人でここにいましょうか」
「「それはヤダ」」
「どーしてですの!!」

 いつもと同じ掛け合いをして、声を上げて笑い、楽しい時間を過ごしました。

 監禁中にも関わらず友人を迎えることを許してくださったことに関しては、リオン様に感謝しなくては。

「そういえば、今日の件を伝えに来たリオン様の従者さんからひとつ頼まれていたのよね」

 思い出したかのように、コニスがポンと手を打ちました。頼まれごととは何かしら。

「フラウがネレイデット侯爵家の別邸にいることは誰にも言うなって」
「わたしも口止めされたわ」
「行き帰りに尾行されてないか気をつけろ、とか注意されたんだけど」
「なんだったのかしらね、あれは」

 次の休みにまた来ると約束してから、二人は帰っていきました。

 新たに得た情報もありますが、そのぶん謎も増えてしまいました。

 どうやらリオン様は私が別邸ここにいることを秘密にしたいようです。

 監禁の事実がおおやけになることを恐れているのでしょうか。アルド様に引き続き、リオン様まで醜聞スキャンダルで騒がれてしまいますものね。

しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】 エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

処理中です...