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第26話:欲求不満
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*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*
なにもしないから、という約束で抱き合って眠ることになった。すぐそばに相手の顔がある。寝室内は薄暗くてよく見えないが、互いに少し赤くなっている。
ついさっき両想いであると判明したばかりだ。意識してしまうのも無理はない。
互いの背中に回された腕にぐっと力が入り、更に身体が密着した。龍之介の首元に謙太の顔が埋まる体勢となる。
「……歯型、まだ残ってる」
指先が歯型のついた肌を労わるようにそっと撫でる。その感触に、龍之介はぴくりと肩を震わせた。
「もう噛むなよ」
「キスマークならいい?」
「痕を残すなって言ってんだ」
謙太も噛んだことは反省したようで、何をするにも一度尋ねて了承を得ようとする。聞かれて素直に認められるわけがないと知っているにも関わらず。それでも、無断でやられるよりはマシだと龍之介は考えていたが、強く押されれば折れてしまう。
「じゃあ、キスだけ」
「……ん」
こっちは以前約束させられていた。
許可してしまった以上断りづらい……と龍之介が思うように謙太が誘導している。
少し身を乗り出して謙太が顔を寄せ、唇を重ねた。カサついた感触が妙に生々しくて、離れようと龍之介が身をよじる。が、それは阻まれた。
唇の表面をちろりと舐められ、顔を背けようとしても手で固定される。逃げ場がない状態で、一瞬だけ力を抜いた隙をついて謙太の舌が口内に入り込んだ。
「ン、……っ」
前回とはまったく違う深い口付けに、龍之介は戸惑った。
相手は自分より少し体格が良い男だ。生半可な抵抗では振り解けない。本気で嫌がれば謙太はすぐに退くだろう。
だが、反射で抵抗してしまったものの、龍之介も謙太とのキスは嫌ではなかった。
「……はぁ……」
ようやく解放された時には、二人とも息が上がっていた。ディープキス自体初めてでもないのに、相手が違うだけで興奮してしまう。
「あ、」
腰のあたりに何か硬いものが当たっていることに龍之介が気付いた。その反応で謙太も自分の状態に気付いた。
「……勃ってるぞ」
「……うん」
気恥ずかしそうに謙太は少し身体を離した。
ベッドの中で抱き合ってキスしただけで興奮してしまったからだ。
「溜まってんだろ」
「毎日抜いてんだけどなー」
「……そっ、そうなのか」
謙太が風呂に入る度に自慰をしていると知らない龍之介は、まずそこに驚いた。未だに心のどこかで『欲求不満の末に同居人に発情しているだけなのでは』と疑っていたくらいだ。
「悪い、トイレ」
「う、うん」
そそくさと寝室を出て行く謙太を見送り、龍之介は再び布団に潜った。今頃トイレで何をしているのか、そうさせたのが自分だと考えただけで何だか恥ずかしくなる。
数分後、スッキリした様子の謙太がまた抱きついてこようとしたが、今度は断固拒否した。
なにもしないから、という約束で抱き合って眠ることになった。すぐそばに相手の顔がある。寝室内は薄暗くてよく見えないが、互いに少し赤くなっている。
ついさっき両想いであると判明したばかりだ。意識してしまうのも無理はない。
互いの背中に回された腕にぐっと力が入り、更に身体が密着した。龍之介の首元に謙太の顔が埋まる体勢となる。
「……歯型、まだ残ってる」
指先が歯型のついた肌を労わるようにそっと撫でる。その感触に、龍之介はぴくりと肩を震わせた。
「もう噛むなよ」
「キスマークならいい?」
「痕を残すなって言ってんだ」
謙太も噛んだことは反省したようで、何をするにも一度尋ねて了承を得ようとする。聞かれて素直に認められるわけがないと知っているにも関わらず。それでも、無断でやられるよりはマシだと龍之介は考えていたが、強く押されれば折れてしまう。
「じゃあ、キスだけ」
「……ん」
こっちは以前約束させられていた。
許可してしまった以上断りづらい……と龍之介が思うように謙太が誘導している。
少し身を乗り出して謙太が顔を寄せ、唇を重ねた。カサついた感触が妙に生々しくて、離れようと龍之介が身をよじる。が、それは阻まれた。
唇の表面をちろりと舐められ、顔を背けようとしても手で固定される。逃げ場がない状態で、一瞬だけ力を抜いた隙をついて謙太の舌が口内に入り込んだ。
「ン、……っ」
前回とはまったく違う深い口付けに、龍之介は戸惑った。
相手は自分より少し体格が良い男だ。生半可な抵抗では振り解けない。本気で嫌がれば謙太はすぐに退くだろう。
だが、反射で抵抗してしまったものの、龍之介も謙太とのキスは嫌ではなかった。
「……はぁ……」
ようやく解放された時には、二人とも息が上がっていた。ディープキス自体初めてでもないのに、相手が違うだけで興奮してしまう。
「あ、」
腰のあたりに何か硬いものが当たっていることに龍之介が気付いた。その反応で謙太も自分の状態に気付いた。
「……勃ってるぞ」
「……うん」
気恥ずかしそうに謙太は少し身体を離した。
ベッドの中で抱き合ってキスしただけで興奮してしまったからだ。
「溜まってんだろ」
「毎日抜いてんだけどなー」
「……そっ、そうなのか」
謙太が風呂に入る度に自慰をしていると知らない龍之介は、まずそこに驚いた。未だに心のどこかで『欲求不満の末に同居人に発情しているだけなのでは』と疑っていたくらいだ。
「悪い、トイレ」
「う、うん」
そそくさと寝室を出て行く謙太を見送り、龍之介は再び布団に潜った。今頃トイレで何をしているのか、そうさせたのが自分だと考えただけで何だか恥ずかしくなる。
数分後、スッキリした様子の謙太がまた抱きついてこようとしたが、今度は断固拒否した。
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お付き合いはお試しセックスの後で。
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