【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
60 / 86
追加エピソード

第26話:欲求不満

しおりを挟む
*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*


 なにもしないから、という約束で抱き合って眠ることになった。すぐそばに相手の顔がある。寝室内は薄暗くてよく見えないが、互いに少し赤くなっている。
 ついさっき両想いであると判明したばかりだ。意識してしまうのも無理はない。

 互いの背中に回された腕にぐっと力が入り、更に身体が密着した。龍之介りゅうのすけの首元に謙太けんたの顔が埋まる体勢となる。

「……歯型、まだ残ってる」

 指先が歯型のついた肌を労わるようにそっと撫でる。その感触に、龍之介はぴくりと肩を震わせた。

「もう噛むなよ」
「キスマークならいい?」
「痕を残すなって言ってんだ」

 謙太も噛んだことは反省したようで、何をするにも一度尋ねて了承を得ようとする。聞かれて素直に認められるわけがないと知っているにも関わらず。それでも、無断でやられるよりはマシだと龍之介は考えていたが、強く押されれば折れてしまう。

「じゃあ、キスだけ」
「……ん」

 こっちは以前約束させられていた。
 許可してしまった以上断りづらい……と龍之介が思うように謙太が誘導している。

 少し身を乗り出して謙太が顔を寄せ、唇を重ねた。カサついた感触が妙に生々しくて、離れようと龍之介が身をよじる。が、それは阻まれた。

 唇の表面をちろりと舐められ、顔を背けようとしても手で固定される。逃げ場がない状態で、一瞬だけ力を抜いた隙をついて謙太の舌が口内に入り込んだ。

「ン、……っ」

 前回とはまったく違う深い口付けに、龍之介は戸惑った。

 相手は自分より少し体格が良い男だ。生半可な抵抗では振り解けない。本気で嫌がれば謙太はすぐに退くだろう。
 だが、反射で抵抗してしまったものの、龍之介も謙太とのキスは嫌ではなかった。

「……はぁ……」

 ようやく解放された時には、二人とも息が上がっていた。ディープキス自体初めてでもないのに、相手が違うだけで興奮してしまう。

「あ、」

 腰のあたりに何か硬いものが当たっていることに龍之介が気付いた。その反応で謙太も自分の状態に気付いた。

「……勃ってるぞ」
「……うん」

 気恥ずかしそうに謙太は少し身体を離した。
ベッドの中で抱き合ってキスしただけで興奮してしまったからだ。

「溜まってんだろ」
「毎日抜いてんだけどなー」
「……そっ、そうなのか」

 謙太が風呂に入る度に自慰をしていると知らない龍之介は、まずそこに驚いた。未だに心のどこかで『欲求不満の末に同居人に発情しているだけなのでは』と疑っていたくらいだ。

「悪い、トイレ」
「う、うん」

 そそくさと寝室を出て行く謙太を見送り、龍之介は再び布団に潜った。今頃トイレで何をしているのか、そうさせたのが自分だと考えただけで何だか恥ずかしくなる。

 数分後、スッキリした様子の謙太がまた抱きついてこようとしたが、今度は断固拒否した。
しおりを挟む
《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
感想 37

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

処理中です...