【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
49 / 86
追加エピソード

第15話:反応した理由

しおりを挟む
*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*



 会社の飲み会を終えた謙太けんたは、ほろ酔い気分でマンションのエントランスでエレベーターの到着を待っていた。

 時刻は日付が変わる少し前。
 こんな遅い時間まで帰れなかったのは寧花ねいかと結婚していた時……前の部署にいた時以来だ。当時は何とも思わなかったが、帰宅時間が遅くなれば出来なくなることが増える。

「リュウ、今日は何食ったのかな」

 いつもなら、平日は定時に帰って龍之介が作った夕食を一緒に食べ、皿洗いは謙太が担当している。風呂を洗って湯張りするのも謙太の役目だ。しかし、今日のように帰宅が遅くなると家事が何も出来なってしまう。

 龍之介と暮らすようになって、そんな当たり前のことにようやく気が付いた。

「ただいま」
「おかえり」

 玄関のドアを開けて声を掛ければ、寝間着姿の龍之介が洗面所から顔を出して出迎えた。風呂から上がったばかりなのか髪がまだ濡れている。

「遅かったな」
「同僚が悪酔いしたんで送ってきた」
「そっか。早く風呂入れよ、冷めるぞ」
「うん」

 寝室に寄ってスーツを脱ぎ、シャツとトランクス姿で洗面所に行くと、髪を乾かし終えた龍之介が歯を磨いている最中だった。洗面所の奥に浴室がある。そこで服を脱ごうとして、謙太はふと手を止めた。

「ん? 入らねーの?」
「あー……その前に水飲んでくる」
「ハハッ、また飲み過ぎたんだろ」
「そうかもしれん」

 一旦洗面所から出て台所に行き、コップに水を注いで一気に飲む。そうこうしている間に龍之介が歯磨きを終えてリビングに来た。ソファに座り、テレビをつけ、興味なさそうにチャンネルを変えていく。先にベッドに入ってもどうせ眠れないから、起きて謙太を待つつもりなのだろう。

 その様子を見てから再び洗面所に戻り、風呂に入る。

「…………ヤバい」

 湯船に顔半分まで浸かりながら、謙太は眉間に皺を寄せた。視線を下に向ければ、しっかりと反応を示した部分が目に入った。


──ここ最近朝勃ちすらしなかったのに。


 酒に酔ったせいか、疲れ過ぎたからか。
 それとも単なる誤作動か。

 精がつくようなものを食べた覚えもないし、性的な刺激を受けるようなものを見たわけでもない。しばらく枯れていたはずの欲求が唐突に復活してしまい、謙太は戸惑いを隠せなかった。

「バレてなかった、よな?」

 洗面所で服を脱ぐ直前に気付き、龍之介に見つかる前に回避した。

 性欲がなくなったという話を今朝したばかりだ。それが何故突然こうなったのか。

 謙太には、なんとなく原因が分かっていた。
 風呂上がりの濡れた髪のまま出迎えてくれた親友の姿に、不覚にもドキッとしてしまったのだ。一度意識してしまえばもうダメだった。

「とにかく、コレをなんとかしないと寝らんねーな……」

 風呂から上がれば龍之介と一緒のベッドで眠ることになる。その時に、もしこんな状態だとバレたら布団から叩き出されるだろう。龍之介と一緒に寝られなくなるのは死活問題だ。

 数ヶ月ぶりに自慰をして痕跡を綺麗に片付けた後、謙太は素知らぬ顔で風呂から上がった。
しおりを挟む
《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
感想 37

あなたにおすすめの小説

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

処理中です...