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追加エピソード

第9話:新しいベッド

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*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*


 このままの状態を続けては互いのためにならない。
 龍之介りゅうのすけは、まず一緒に眠ることから止めようと考えた。大の大人が添い寝がないと眠れないなんて正常ではない。そうでなくとも、謙太けんたはまた出張で家を空ける。その度に眠れぬ夜を過ごすようでは困る。

「もう一台ベッドを買おうと思う」
「えっ」

 朝食兼昼食を食べながら龍之介が切り出すと、謙太はぽかんと口を開けた。思いもよらぬことを聞いた、と言った顔だ。

「なんで? 必要なくね?」

 必要だから買うんだろうが!と言いたい気持ちを抑え、龍之介はあくまでにこやかに話を続ける。

「ほ、ほら、風邪とかインフルになった時に一緒の布団だと感染うつるだろ? それに、喧嘩した時とかさ」
「それはそうだけど」
「セミダブルまでなら仕事部屋に置けるから」
「うーん……」

 謙太はあまり気乗りしないようだが、しばらく考えてから賛成した。

「じゃ、午後から見にいくか」
「わかった」

 とにかく、ベッドが二つあれば別々に寝る練習は出来る。食事の片付けを終えてから、二人揃って出掛けた。





「なあなあ、リュウはなんかこだわりとかあんの?」

 郊外の大型店には多種多様の家具が展示されている。その寝具コーナーを見て回りながら謙太が話し掛けた。

「特にないけど、……あー、枕元にスマホ置くとこ欲しいかも。あと、落ち着いた色のやつ。今寝室にあるベッドみたいな」
「あー、ああいうのか」
「それと、収納があると嬉しい」
「ふんふん」

 希望を聞きながら候補を絞っていく。
 寝具担当の店員にも相談し、二人が納得出来るようなベッドが無事に見つかった。

「オレが買うよ。支払いと配送の手続きしてくるから、リュウは食器でも見てこいよ。新しい皿が欲しいって言ってたろ?」
「ん、じゃあ頼む」

 最初は渋っていた謙太が購入に乗り気になっている様子を見て、龍之介は安堵した。






 翌日、届いたベッドを見て龍之介は呆然とした。

「……なんかデカくね?」
「そうか?」

 荷解きする前に、配送業者が元々寝室にあったセミダブルのベッドを一部解体して龍之介の仕事部屋へと移設した。そして、新たに購入したベッドとマットレスは寝室に設置された。

「布団は夕方届く。カバーとシーツは今コインランドリーで洗ってるから」
「……どっか出掛けたかと思ったら、そういうことか」

 全ての作業を終えた業者が帰ってから、龍之介は謙太に詰め寄った。

「なんでダブルベッドなんか買ってんだよ」
「これ、ワイドダブル」
「なお悪いわ!」
「セミダブルじゃ少し狭いからさ、これなら二人でもゆったり寝れるだろ?」
「~~ッ!!」

 謙太は一人で寝るつもりなどサラサラ無かった。

「あと、リュウは仕事で疲れたらパソコンデスクでそのまま居眠りしてるだろ。そういう時はベッドで寝ろよな」
「……」

 それが事実なだけに、龍之介は何も言えなくなってしまった。

 病気の時の隔離用兼仕事中の仮眠用。
 元々寝室にあったベッドはそういう役割を得て仕事部屋に鎮座することとなった。
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