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第3話:仮病
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*同居開始~本編最終話ラストに至るまでの話*
謙太の不在に少なからず影響を受けている自分に驚きつつも、龍之介は何とか気持ちを立て直した。
いずれ心の傷が癒えたら出て行く、そんな相手に依存しても後が辛いだけ。その為には一人の暮らしに慣れておかなくてはならない。
明日の夜には帰ってくる。
それまでは、独り。
出張中の謙太からは数時間おきにメールが届く。
『雪積もってる』とか『寒い!』とか、そんな短いひと言だけ。わざわざ伝えてくるのが嬉しくて、でも素直に言うのは憚られてつい素っ気無い返事を送ってしまう。
「仕事中になにしてんだか……」
『明日の夜には帰る』
このメールが届いた時、龍之介は無意識のうちに笑顔になった。何度か文章を打ったあと、それを全て消してから『土産忘れるなよ』とだけ返信した。
「おや、纏さん。なんだか元気ないですね」
「え? ……あー、風邪気味、かも」
「まだ冷えますからねえ」
取引先との打ち合わせから戻った時、マンションのエントランスで掃除をしていた管理人から声を掛けられた。おっとりした初老の紳士である。これまでは顔を合わせても軽く会釈をする程度だったが、先日同居人申請の手続きをしに行って以来少し話すようになった。
「雨戸さんは?」
「あいつは昨日から出張で」
「ははあ、なるほど。だから今朝は見掛けなかったんですねえ」
朝のゴミ出し担当は基本謙太の仕事だ。管理人室の前を通る度に必ず声を掛けていくらしい。元々の住人である龍之介より気に入られている。
管理人と別れて部屋に戻る。
風邪気味というのは嘘だ。謙太がいなくて気落ちしているなどと他人に言えるはずがない。いっそ本当に熱でも出てくれたら何も考えずに眠れるのに、と、そこまで思ってから龍之介は我に返った。
──なんでここまで落ち込む必要がある?
無性に腹が立ってきて、龍之介は舌打ちした。もちろん、一時的な同居人に過ぎない謙太に振り回されている自分に対してだ。
眞耶から別れを告げられた時に一生独りで生きていくと決めたはずだ。
それなのに、数年も経たないうちに限界がきた。己の心の弱さに呆れ、龍之介は深い溜め息をついた。
謙太の不在に少なからず影響を受けている自分に驚きつつも、龍之介は何とか気持ちを立て直した。
いずれ心の傷が癒えたら出て行く、そんな相手に依存しても後が辛いだけ。その為には一人の暮らしに慣れておかなくてはならない。
明日の夜には帰ってくる。
それまでは、独り。
出張中の謙太からは数時間おきにメールが届く。
『雪積もってる』とか『寒い!』とか、そんな短いひと言だけ。わざわざ伝えてくるのが嬉しくて、でも素直に言うのは憚られてつい素っ気無い返事を送ってしまう。
「仕事中になにしてんだか……」
『明日の夜には帰る』
このメールが届いた時、龍之介は無意識のうちに笑顔になった。何度か文章を打ったあと、それを全て消してから『土産忘れるなよ』とだけ返信した。
「おや、纏さん。なんだか元気ないですね」
「え? ……あー、風邪気味、かも」
「まだ冷えますからねえ」
取引先との打ち合わせから戻った時、マンションのエントランスで掃除をしていた管理人から声を掛けられた。おっとりした初老の紳士である。これまでは顔を合わせても軽く会釈をする程度だったが、先日同居人申請の手続きをしに行って以来少し話すようになった。
「雨戸さんは?」
「あいつは昨日から出張で」
「ははあ、なるほど。だから今朝は見掛けなかったんですねえ」
朝のゴミ出し担当は基本謙太の仕事だ。管理人室の前を通る度に必ず声を掛けていくらしい。元々の住人である龍之介より気に入られている。
管理人と別れて部屋に戻る。
風邪気味というのは嘘だ。謙太がいなくて気落ちしているなどと他人に言えるはずがない。いっそ本当に熱でも出てくれたら何も考えずに眠れるのに、と、そこまで思ってから龍之介は我に返った。
──なんでここまで落ち込む必要がある?
無性に腹が立ってきて、龍之介は舌打ちした。もちろん、一時的な同居人に過ぎない謙太に振り回されている自分に対してだ。
眞耶から別れを告げられた時に一生独りで生きていくと決めたはずだ。
それなのに、数年も経たないうちに限界がきた。己の心の弱さに呆れ、龍之介は深い溜め息をついた。
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お付き合いはお試しセックスの後で。
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