【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第12章 元凶との対峙

87話・魂に刻まれた使命

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 最強の攻撃魔法も効かず、最強の斬撃と打撃を与えて肉塊と化しても即座に元通りに戻ってしまう。
 何事もなかったかのように微笑む大司教ルノーに、諒真りょうま、リエロ、由宇斗ゆうと将子しょうこの四人は青褪めた。

「た、倒せない……?」
「俺たちが束になっても駄目なんて、そんな」

 勇者一行として活躍する中で、それぞれ自分の能力に自信を持っていた。異世界最強だという自覚があった。その自信が脆くも崩れた。

 魔王と戦った時はもっと手応えがあった。魔族ゆえに回復も早かったが、ダメージを重ねれば必ず倒せるという確信があり、苦労はしたが倒すことに成功した。
 だが、ルノーに対しては『何度攻撃を繰り返しても無駄』という感覚がある。

 諒真には他人の持つ魔力が見える。ルノーの体内の魔力は超回復の後にも関わらず少しも減っていない。回復に魔力を使っていないからだ。掴んでしならせた枝から手を離せば元に戻るように、自然と在るべき状態に戻っているだけ。

 つまり、ルノーの再生回数に上限はない。

「無限に回復する奴相手に勝ち目なくない?」
「ええと、なにか弱点を突けばどうかしら」
「見つけるまで何度も攻撃すんの大変じゃん」
「そっ、それもそうね」

 由宇斗と将子は動揺しながらも構えを解いていない。前方に立つルノーを最大級に警戒している。隙を見せれば返り討ちに遭う。倒せないと分かっていても、少しでもルノーが不審な動きをみせれば再び攻撃するつもりだ。

「誤解しないでいただきたいのですが、私には戦う力はありませんよ」
「えっ?」
「不死身ではありますが、魔法も高位聖職者並にしか使えません。貴方がたの足元にも及ばぬ卑小ひしょうな存在です」

 困ったように笑うルノーに、四人はまた困惑した。
 確かに、もし戦う力があるのなら一方的にやられたりせず反撃に出るはずだ。怪我をすれば痛みもあるという本人の言葉が真実ならば尚更。

「なんでそんな体質に……」
「さあ。気付いたらでした。自分がいつから生きているのかも覚えていません。ただ、『原初の竜の素晴らしさを説かねばならない』という使命を持っております。私はそれを遂行するためにこの国を作りました」

 長い時間を生き過ぎたからだろうか。ルノーは自分がどこで生まれたのかすら覚えていない。幸いにも目的だけは魂に深く刻み込まれており、あやふやな記憶と違って薄れることはなかった。

「異種族間の争いを収めたという『原初の竜』。だから私は教皇に勇者を召喚させて魔王を討ち滅ぼし、『魔族』と『人間』という異種族間の争いを竜の代わりに収めています」
「……」
「人々の記憶から『原初の竜』を消さぬために、私はずっと繰り返してきたのです」

 だから今後も同じことを繰り返す。
 それはルノーの本当の望みなのだろうか。

 ルノーの言葉に動揺している諒真は気付いていなかった。遠隔で操作していた魔法がとっくに解けていることに。
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