【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
86 / 110
第12章 元凶との対峙

85話・説得不可能

しおりを挟む


 大司教ルノーの目的と動機が分かった。
 個人の富や名声ではなく、原初の竜に対する信仰を確たる物にし、人々から忘れ去られないようにするためだった。

「それ、いつ終わるんですか」

 諒真りょうまの問いに、ルノーは小さく首を傾けた。
 長く白い髪がさらりと揺れ、部屋の明かりを受けて煌めく。美しさと凛々しさを併せ持ち、慈愛に満ちた笑顔と言葉で人々から敬われている存在だ。誰もが彼が素晴らしい人格者だと信じて疑わない。

「終わりなどありませんよ。これからも続けます」

 きっぱりと言い切るルノーの目に迷いはない。
 彼は原初の竜を唯一の信仰対象とするために、この先も永遠に繰り返していくつもりなのだ。ハイデルベルド教国だけでなく周辺諸国の民をも巻き込む最悪の習慣ルーティンを。しかも次代は歴代最強。間違いなく被害の範囲は桁違いに拡大する。

「大陸の南には他の神を崇めている地域があるらしいですね。次の魔王が生まれたら信者も神殿も全て潰してもらいましょう」

 聖句を唱える時のように穏やかな笑みを浮かべながら、ルノーが更なる目的を口にした。

 それを聞いて、諒真とリエロが青褪めた。
 説得出来る相手ではない。聞けば答えてくれるが、自分の考えを曲げる気など一切ない。笑顔で民を導きながら、裏では民を苦しめている。新たな魔王が生まれれば何も知らない人々は跪いて彼に請うのだろう。『勇者を召喚してください』と。

 次の魔王=教皇候補は創吾そうごだ。

「続けさせてたまるか……!」
「民を守るどころか危険に晒していたなんて。知った以上、黙って見ているわけにはいきません」

 諒真が椅子から立ち上がり、目の前に座るルノーを見下ろした。リエロも険しい表情で後ろに控えている。

「おや、理解していただけませんでしたか」
「無理やりにでも止めます」
「力ずくで、ですか?」
「おかげさまで歴代最強らしいんで」

 諒真が両手を左右に広げ、無数の杭を産み出した。物質ではなく一本一本が強力な攻撃魔法。異なる属性のものを同時に発動することで、ルノーが耐性を持っていてもどれかが効くようにしている。
 一番最初に召喚された時はこんな風に魔法を使うことなど出来なかった。

「リョウマ様はお優しい方だと思っておりましたが、意外と武闘派なんですね」

 動じることなく椅子に座り続けるルノー。反撃する様子もなく、逃げることもせず、自分に向けられた杭を呑気に見上げている。
 戦う意思のない丸腰の人間に攻撃を仕掛ける行為には当然抵抗がある。諒真はルノーの周囲をぐるりと杭で囲むだけに留めた。並の相手なら、これだけでも十分な脅しになる。

「ルノー様、お願いだからオレにこんなものを撃たせないでください」
「撃っても構いませんよ。……ああ、出来ないのでしたか。貴方には『人を傷付けることへの心理的な枷』がありますものね」

 ルノーが平然として居られるのは撃てないと知っているからだ。諒真は最初の旅の途中で起きた出来事の影響で、人を傷付ける恐れのある強力な攻撃魔法が使えなくなっていた。

 だが、今は違う。
 ルノーは知らないが、諒真は既にトラウマを克服している。だからといって平気で出来るわけではない。迷う諒真にリエロが寄り添い、背中を押す。

「残念です、ルノー様」

 諒真は攻撃魔法の塊である杭をルノーに向かって放った。
しおりを挟む
▼▽▼ みやこ嬢のBL作品はこちら ▼▽▼

《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。

《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい

《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
感想 48

あなたにおすすめの小説

秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった── 十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。 下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。 猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。 だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ──── 独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。 表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。 @amamiyakyo0217

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

愛しい番の囲い方。 半端者の僕は最強の竜に愛されているようです

飛鷹
BL
獣人の国にあって、神から見放された存在とされている『後天性獣人』のティア。 獣人の特徴を全く持たずに生まれた故に獣人とは認められず、獣人と認められないから獣神を奉る神殿には入れない。神殿に入れないから婚姻も結べない『半端者』のティアだが、孤児院で共に過ごした幼馴染のアデルに大切に守られて成長していった。 しかし長く共にあったアデルは、『半端者』のティアではなく、別の人を伴侶に選んでしまう。 傷付きながらも「当然の結果」と全てを受け入れ、アデルと別れて獣人の国から出ていく事にしたティア。 蔑まれ冷遇される環境で生きるしかなかったティアが、番いと出会い獣人の姿を取り戻し幸せになるお話です。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...