【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第12章 元凶との対峙

83話・歴代最強

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 扉は意外にもすんなり開いた。
 僅かな明かりしかなかった大広間や廊下に慣れきった目は、煌々と明るく照らされた室内の眩しさに怯む。明かりの数だけではない。教皇の居室だけあり、壁や床、天井に至るまで煌びやかで上質な素材で作られているから眩しく感じたのだ。

「おや、こんな遅い時間に来客とは」

 突然現れたふたりに驚くことなく、部屋の奥にある椅子にすわったまま大司教ルノーは笑った。音を遮断していた風の魔法を解き、諒真りょうまが険しい表情で歩み寄る。

「ルノー様、話があります」
「なんでしょう、リョウマ様」

 向かいに置かれた椅子を指し、座るように促すルノー。諒真は眉間に皺を寄せ、素直に指示に従った。諒真が座った椅子の後ろにリエロが立つ。

「オレたちを元の世界に帰してください」
「……やはり残留希望は嘘でしたか。もう少しおかしいまま居てくだされば、ユウト様たちも本心から異世界こちらに残ってくださったでしょうに」

 心底残念そうに、ルノーは悲しげに口元を袖で隠し、目を伏せた。さらりと長い白髪はくはつが揺れ、色白で細い彼が更に儚く見える。
 だが、その見た目は全て偽物まやかし
 本当のルノーはハイデルベルド教国に巣食う得体の知れない『ナニカ』。諒真は先日教皇と話したことで確信した。

──全ての元凶はルノーであると。

 魔王討伐後に勇者一行を苦しめた『魔王の呪い』。『授かった能力が元の世界の住人にバレたら死ぬ』は嘘で、実際は心の奥底に隠していた欲望や弱さを増幅させるものだった。

 呪いの条件はルノーによって知らされた。当たり前だ。あれはルノーが仕掛けた罠だったのだから。

「何故そんなことをするんです。わざわざ違う世界から勇者を召喚させて、それに何の意味があるんですか」

 ルノーは他者の能力を開花させる力があるのではないかと諒真は推測している。違う世界から召喚せずとも、こちらの世界の住人から適任者を探し、役目を負わせることも可能なはずだ。

 諒真の問いに、ルノーはいつもと変わらぬ笑みを浮かべている。穏やかで優しく、誰にも分け隔てのない、聖職者の頂点に立つ人物。

 聖騎士団は貴族の管轄にあるが、団員はみな敬虔な信者である。大聖堂を護り、民を護ることこそが聖騎士の存在理由。
 新米騎士リエロはハルクに憧れて聖騎士団に入った。大司教ルノーのことも、先日まで本当に敬愛して疑うことすらなかった。勇者一行を異世界に留めおくために手段を選ばぬ姿勢を見て、初めて疑問を抱いた。彼が諒真に特別な思いを抱いていなければ、そもそも気付かなかっただろう。

 今、こうして対面で話してみて、やはりルノーはおかしいとリエロは判断した。諒真の問いに明確に答えず、疑いの言葉を否定もしない。誤解だと、何かの間違いであると弁解してくれることを期待したが、本人は黙したまま全てを認めている。
 長年の信仰が足元から崩れ、リエロは軽く眩暈を覚えた。

「わざわざ違う世界から呼び寄せるには理由があるのですよ、リョウマ様」
「理由?」
「ええ。どういった理屈かは知りませんが、次元の壁を超えた者は能力が桁違いに上がるのです。そうではない者との差は明白。だから勇者一行は異世界の者でなければ務まらないのです」

 次元の壁を超えた者。
 異なる世界を渡った者。
 それは諒真たちに当て嵌まる。
 条件が当て嵌まるどころではない。
 

 一度目は最初の召喚。
 二度目は魔王討伐後の帰還。
 三度目は呪いを解くための再召喚。

 次元を渡った回数と能力上昇に関係があると仮定するならば、諒真たちを一度元の世界に帰還させたことも納得出来る。実際、一度目に召喚された時より今のほうが魔法を巧みに使うことが出来ている。熟練度が上がったからかと思っていたが、次元を超えた回数による能力上昇によるものだったようだ。

「次代の教皇、そして魔王は歴代最強となることでしょう」

 大聖堂で聖句を唱える時と全く同じ慈愛に満ちた表情で、大司教ルノーは恐ろしい宣言をした。
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