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第12章 元凶との対峙
81話・深夜の大聖堂探索
しおりを挟む昼間は一般に開放されている大聖堂も夜間は全ての門が固く閉ざされる。聖職者や使用人たちは近隣の屋敷や宿舎に帰り、内部は完全に無人となる。これは表向きの情報だ。実際は大聖堂の地下に教皇専用の部屋があり、全て大司教ルノーが管理している。
被害を最小限に抑えつつ目的を果たすには、深夜に短時間で決行するほかない。
これからやることを考え、リエロは緊張でごくりと息を飲む。その様子を見て、諒真は足を止めた。
「やっぱりリエロは外で待ってたほうが……」
「嫌です、一緒に行かせてください」
「でも」
「何の役にも立ちませんが、せめてリョウマ様の成されることを近くで見届けたいんです」
真剣な眼差しに諒真が折れた。
「分かった。……オレもひとりじゃ心細いから、おまえが居てくれるだけで助かるよ」
肩に置かれた手が微かに震えていることに気付き、リエロはそっと自分の手を重ねた。
いつもなら、諒真の隣には必ず創吾が居た。息のあったコンビで、特に戦闘時の連携は素晴らしかった。魔王を斃すための旅路の時も、呪いの核を破壊しに行った時も、リエロはふたりを見守ることしか出来なかった。
でも、今は諒真は自分の意志で創吾の動きを封じ、リエロを伴って行動を起こそうとしている。戦闘では足を引っ張ってしまうが、諒真の心を支えることだけは出来る。
「行くぞ」
「はいっ」
ふたりは手を取り合い、大聖堂内に転移した。
しん、と静まり返る広々とした空間。
諒真が転移したのは、大聖堂の中で一番記憶に残っている場所。すなわち、凱旋の式典などで使われた大広間である。壁際にぽつぽつと小さな明かりが灯っている。これは蝋燭ではなく魔力で生み出された燈。全体を見通すには心許ないが動き回れないほどではない。
「どちらに向かいますか」
「ルノーが居る場所に行きたい」
「となると、控えの間でしょうか」
生体感知魔法で大司教ルノーの気配を探るが、何故かうまく出来ない。大聖堂内にいることは確かなのに、気配が分散しているようでハッキリとは分からない。こんなことは初めてで、諒真は戸惑った。
勇者一行として何度か訪れたことはあるが、いつもは案内の者が先導してくれた。故に内部の構造に詳しくない。
だが、リエロは違う。
聖騎士になってからは式典の際には大聖堂内外の警備任務をこなしたことがある。そのため、どこに何があるかは大体把握している。
「では僕が案内します」
「頼む」
大広間を抜け廊下に出る。表側の通路には絨毯が敷き詰められているが、裏側は石造りの床で足音が響く。自分たちをすっぽり覆うように風の魔法で音をが漏れないよう遮断する。
長い廊下を抜け、ふたりは聖職者の控えの間が並ぶエリアに到着した。
「まだ気配がはっきりしない」
「全ての部屋を確認しますか」
「それしかないな」
生体感知魔法ではうまく大司教ルノーの気配を拾えない。大聖堂は彼の居城。其処彼処に染み付いた気配が感覚を惑わせる。仕方ないので、しらみ潰しに探すことにした。
決着をつけるなら今夜しかない。
これ以上引き延ばせば教皇の命が尽きてしまう。創吾に教皇の役目が継承される前にルノーを説得もしくは無力化することが目的だ。
(でも、それではリョウマ様たちは……)
リエロの心にひとつの疑問がわくが、もう後戻りの出来ないところまで来ている。前に進むしかないのだ。
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