76 / 110
第11章 向き合う覚悟
75話・真実
しおりを挟む大司教ルノーの居ぬ間に教皇と対面した諒真は、まず最大の疑問を彼にぶつけた。
「教皇サマはどうして魔王ザクルドと同じ顔なんですか」
前回召喚された時、数ヶ月に及ぶ旅の果てに魔王城で相対し、激戦の末に討ち取った魔王。その魔王と教皇は全く同じ顔をしている。
かたや異世界を滅ぼす悪の権化。
かたや異世界を救う平和の象徴。
大聖堂はハイデルベルド教国の中央にある聖都ハイドラに、魔王城は隣国アイデルベルド王国との国境付近にある山岳地帯にある。
正反対の立場にあるふたりにどんな繋がりがあるというのか。
「わたしがザクルドだからだ」
諒真の問いに、教皇はさらりと答えた。
表情に変化はない。この状況で嘘は言わないだろうが、それでもすぐには信じられなかった。
「同一人物?じゃあ、もしかしてオレたちが魔王を倒したせいで弱ってるんですか」
目の前の教皇は寝台に横たわったまま、指一本動かしていない。会話は出来るが、身体の自由はほとんどなさそうに見えた。
魔王と教皇が同一人物だとすれば、勇者一行の攻撃の影響ではないかと諒真が考えるのも無理はない。
「違う。其方たちが倒したのはわたしの半身。魔王として分けられた存在だ」
「分けられた……半身……」
「其方たちはわたしの悪しき部分の権化である魔王を倒した。かつてのわたしたちがそうしたように」
「えっ……」
教皇の言葉の意味が理解できず、諒真は困惑した。狼狽えつつも、昨夜ラミエナが教えてくれた話を思い出し、頭の中で情報を整理する。
『先代勇者のお名前はヴェルム様という名の剣士です。お仲間は、格闘家のカティオ様、僧侶のマルディナ様、そして魔法使いのザクルド様』
「先代勇者一行の……魔法使い、ザクルド?」
「そうだ。わたしたちは其方たちの前に別の世界から召喚された」
名前や顔立ちから、諒真たちの世界とはまた違う世界から召喚されたのだろうと想像はついた。先代勇者一行が活躍したのは百年以上前。若く見えるが、少なくとも教皇は百歳を越えている。
「なんで魔王と教皇に分かれたんですか」
「前の魔王を倒した後に悪しき感情が芽生えてしまい、ルノーが切り離してくれたのだ。それが数十年かけて力をつけて魔王となり、この世界を混乱させた。魔王の正体はわたしの弱さだ」
教皇の話が真実ならば、百年前に魔王を倒した際に魔法使いザクルドから切り離された悪しき部分が後に新たな魔王になったことになる。
「あの、魔王の部下に先代勇者たちと同じ名前の魔族がいたんだけど……もしかして、あれも同じように切り離された半身だったとか?」
「同じ名前だと?」
諒真の問いに、教皇が驚きの声をあげた。しばらく考え込んだ後、再び口を開く。
「それは有り得ない。彼らは使命を終えた後、わたしの手で元の世界に送還した。わたしは教皇を継いだため、ひとりこの世界に残った」
「え、でも……」
「恐らく、わたしの半身である魔王がかつての仲間を恋しがり、姿を似せた魔族を生み出して名を付けたのだろう」
魔王城での死闘を思い出す。
あの時、先に斃れた配下の三人を庇うように魔王は立ち塞がっていた。かつての仲間たちを模して造ったのだとすれば、その行動も理解出来る。
全員が魔族と化すのではないと聞き、諒真は少しだけ安堵した。
だが、誰かが入れ替わりで教皇となり、悪しき部分を切り離して新たな魔王を生み出すことになるということに気付き、青褪める。
「次は……創吾……?」
様子がおかしかったのはそのせいだったのか。
諒真は自分の足元が揺らぐのを感じた。
11
《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい
《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法
《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい
《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。

お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】
カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった──
十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。
下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。
猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。
だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ────
独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。
表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。
@amamiyakyo0217

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる