【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第11章 向き合う覚悟

75話・真実

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 大司教ルノーの居ぬ間に教皇と対面した諒真りょうまは、まず最大の疑問を彼にぶつけた。

「教皇サマはどうして魔王ザクルドと同じ顔なんですか」

 前回召喚された時、数ヶ月に及ぶ旅の果てに魔王城で相対し、激戦の末に討ち取った魔王。その魔王と教皇は全く同じ顔をしている。

 かたや異世界を滅ぼす悪の権化。
 かたや異世界を救う平和の象徴。

 大聖堂はハイデルベルド教国の中央にある聖都ハイドラに、魔王城は隣国アイデルベルド王国との国境付近にある山岳地帯にある。
 正反対の立場にあるふたりにどんな繋がりがあるというのか。

「わたしがザクルドだからだ」

 諒真の問いに、教皇はさらりと答えた。
 表情に変化はない。この状況で嘘は言わないだろうが、それでもすぐには信じられなかった。

「同一人物?じゃあ、もしかしてオレたちが魔王を倒したせいで弱ってるんですか」

 目の前の教皇は寝台に横たわったまま、指一本動かしていない。会話は出来るが、身体の自由はほとんどなさそうに見えた。
 魔王と教皇が同一人物だとすれば、勇者一行の攻撃の影響ではないかと諒真が考えるのも無理はない。

「違う。其方たちが倒したのはわたしの半身。魔王として分けられた存在だ」
「分けられた……半身……」
「其方たちはわたしの悪しき部分の権化である魔王を倒した。
「えっ……」

 教皇の言葉の意味が理解できず、諒真は困惑した。狼狽えつつも、昨夜ラミエナが教えてくれた話を思い出し、頭の中で情報を整理する。



『先代勇者のお名前はヴェルム様という名の剣士です。お仲間は、格闘家のカティオ様、僧侶のマルディナ様、そして魔法使いのザクルド様』



「先代勇者一行の……魔法使い、ザクルド?」
「そうだ。わたしたちは其方たちの前に別の世界から召喚された」

 名前や顔立ちから、諒真たちの世界とはまた違う世界から召喚されたのだろうと想像はついた。先代勇者一行が活躍したのは百年以上前。若く見えるが、少なくとも教皇は百歳を越えている。

「なんで魔王と教皇に分かれたんですか」
「前の魔王を倒した後に悪しき感情が芽生えてしまい、ルノーが切り離してくれたのだ。それが数十年かけて力をつけて魔王となり、この世界を混乱させた。魔王の正体はわたしの弱さだ」

 教皇の話が真実ならば、百年前に魔王を倒した際に魔法使いザクルドから切り離された悪しき部分が後に新たな魔王になったことになる。

「あの、魔王の部下に先代勇者たちと同じ名前の魔族がいたんだけど……もしかして、あれも同じように切り離された半身だったとか?」
「同じ名前だと?」

 諒真の問いに、教皇が驚きの声をあげた。しばらく考え込んだ後、再び口を開く。

「それは有り得ない。彼らは使命を終えた後、わたしの手で元の世界に送還した。わたしは教皇を継いだため、ひとりこの世界に残った」
「え、でも……」
「恐らく、わたしの半身である魔王がかつての仲間を恋しがり、姿を似せた魔族を生み出して名を付けたのだろう」

 魔王城での死闘を思い出す。
 あの時、先に斃れた配下の三人を庇うように魔王は立ち塞がっていた。かつての仲間たちを模して造ったのだとすれば、その行動も理解出来る。

 全員が魔族と化すのではないと聞き、諒真は少しだけ安堵した。
 だが、誰かが入れ替わりで教皇となり、悪しき部分を切り離して新たな魔王を生み出すことになるということに気付き、青褪める。

「次は……創吾そうご……?」

 様子がおかしかったのはそのせいだったのか。
 諒真は自分の足元が揺らぐのを感じた。
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