【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
75 / 110
第11章 向き合う覚悟

74話・教皇との対面

しおりを挟む


 教皇の気配を探って転移した先で眠っていたのは長い黒髪に褐色の肌をした青年。彼の顔を見た諒真りょうまは思わず仰け反り、距離を取った。

「魔王と同じ顔!?」

 気持ちを落ち着けてから再度顔を覗き込めば、痩せて顔色が悪いところを差し引いても受ける印象が違うと気付く。目の前の青年からは魔族特有の禍々しさは一切感じない。
 恐る恐る近付いて手を伸ばすと、突然諒真の体が金縛りにあったかのように動かなくなった。

「……誰だ?」

 低い男の声。
 先ほどまで眠っていた青年が目を覚まし、その瞳が諒真の姿を捉えた。魔法ではなく、ただ見据えられただけで動きを封じられたのだ。

「えーと、教皇サマですよね?」
「……確かに、そう呼ばれている」

 動けない状態で諒真が尋ねると、横たわったままの青年……教皇が小さく頷いた。次の瞬間、諒真の体に自由が戻る。

「無断で部屋に入ってすみません。どうしても直接話をしたかったので」
「構わん。どうせ自由のない身だ」

 解放された諒真はすぐに頭を下げて非礼を詫びた。教皇は身体を起こすことなく、目線だけを向けている。その瞳は穏やかで、諒真に対して怒ってはいないようだった。

寝室ここにルノー以外の者が入れるとはな。不思議に思ったが、なるほど。そういうことか」
「え?」

 そう言って、教皇は視線を諒真の顔から右の手首に移した。袖口から小さな傷が覗いている。これは魔王城跡で『呪いの核』を破壊した際に破片を浴びて負った傷。そこから魔王の一部が体内に入り込んでいることを諒真は知らない。
 だが、魔王の半身である教皇には分かる。本来ならば結界で覆われていて入り込めないはずの寝室に転移してこれたのは、諒真の中にある魔王の一部が教皇と引かれ合ったからだ、と。

「わたしの次は其方リョウマか。だが、ルノーは確か後継はソウゴだと言っていたはずだが……」

 独り言のようにボソボソと教皇が呟く。そこに創吾そうごの名前が出て、諒真は顔色を変えた。

「創吾が後継者?」
「わたしはもう長くはない。素質のある者に教皇を継がせなくてはならない」
「長くないって、病気ですか」
「ただの老衰だ」

 そう言われ、まじまじと教皇の姿を見る。外見は二十代半ばの青年で、老衰という言葉は似合わない。
 しかし、彼からは生気を感じなかった。見た目は若いが、先ほどから身体を起こすどころか顔の向きすら変えていない。寝起きだからかと諒真は思っていたが、弱り過ぎて本当に動けないだけなのかもしれない。

「もしかして、オレたちを再召喚したせいで動けなくなったんですか?」
「いや、元々限界が来ていた。気にすることはない」
「でも……」

 勇者一行が無理を言わず呪いの調査が終わるまで異世界に残っていれば、教皇は送還と召喚をせずに済んだ。諒真も魔力を扱う者として、召喚魔法の凄さは理解している。身体への負担はゼロではないはずだ。
 改めて教皇を見れば、魔力が乱れて体内に留めておけなくなっている。この状態ではもう次元を繋ぐ魔法は使えないだろう。

(だから『後継者』が必要なのか)

 大司教ルノーは既に創吾を教皇の後継者として決めているという。創吾からはそんな話を聞いてはいないが、様子がおかしくなって部屋に閉じ籠もってしまった現状を考えると、何かされたのではないかと疑いたくなる。

(創吾はハイデルベルド教国自体を疑っていた。ルノー様は確かに怪しいけど、教皇サマは違う。この人からは悪意を感じない)

 教皇は嘘をついたり誤魔化しをするような人間には見えない。諒真は全ての疑問を彼にぶつけることに決めた。
しおりを挟む
▼▽▼ みやこ嬢のBL作品はこちら ▼▽▼

《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。

《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい

《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
感想 48

あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった── 十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。 下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。 猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。 だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ──── 独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。 表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。 @amamiyakyo0217

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

処理中です...