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第11章 向き合う覚悟
74話・教皇との対面
しおりを挟む教皇の気配を探って転移した先で眠っていたのは長い黒髪に褐色の肌をした青年。彼の顔を見た諒真は思わず仰け反り、距離を取った。
「魔王と同じ顔!?」
気持ちを落ち着けてから再度顔を覗き込めば、痩せて顔色が悪いところを差し引いても受ける印象が違うと気付く。目の前の青年からは魔族特有の禍々しさは一切感じない。
恐る恐る近付いて手を伸ばすと、突然諒真の体が金縛りにあったかのように動かなくなった。
「……誰だ?」
低い男の声。
先ほどまで眠っていた青年が目を覚まし、その瞳が諒真の姿を捉えた。魔法ではなく、ただ見据えられただけで動きを封じられたのだ。
「えーと、教皇サマですよね?」
「……確かに、そう呼ばれている」
動けない状態で諒真が尋ねると、横たわったままの青年……教皇が小さく頷いた。次の瞬間、諒真の体に自由が戻る。
「無断で部屋に入ってすみません。どうしても直接話をしたかったので」
「構わん。どうせ自由のない身だ」
解放された諒真はすぐに頭を下げて非礼を詫びた。教皇は身体を起こすことなく、目線だけを向けている。その瞳は穏やかで、諒真に対して怒ってはいないようだった。
「寝室にルノー以外の者が入れるとはな。不思議に思ったが、なるほど。そういうことか」
「え?」
そう言って、教皇は視線を諒真の顔から右の手首に移した。袖口から小さな傷が覗いている。これは魔王城跡で『呪いの核』を破壊した際に破片を浴びて負った傷。そこから魔王の一部が体内に入り込んでいることを諒真は知らない。
だが、魔王の半身である教皇には分かる。本来ならば結界で覆われていて入り込めないはずの寝室に転移してこれたのは、諒真の中にある魔王の一部が教皇と引かれ合ったからだ、と。
「わたしの次は其方か。だが、ルノーは確か後継はソウゴだと言っていたはずだが……」
独り言のようにボソボソと教皇が呟く。そこに創吾の名前が出て、諒真は顔色を変えた。
「創吾が後継者?」
「わたしはもう長くはない。素質のある者に教皇を継がせなくてはならない」
「長くないって、病気ですか」
「ただの老衰だ」
そう言われ、まじまじと教皇の姿を見る。外見は二十代半ばの青年で、老衰という言葉は似合わない。
しかし、彼からは生気を感じなかった。見た目は若いが、先ほどから身体を起こすどころか顔の向きすら変えていない。寝起きだからかと諒真は思っていたが、弱り過ぎて本当に動けないだけなのかもしれない。
「もしかして、オレたちを再召喚したせいで動けなくなったんですか?」
「いや、元々限界が来ていた。気にすることはない」
「でも……」
勇者一行が無理を言わず呪いの調査が終わるまで異世界に残っていれば、教皇は送還と召喚をせずに済んだ。諒真も魔力を扱う者として、召喚魔法の凄さは理解している。身体への負担はゼロではないはずだ。
改めて教皇を見れば、魔力が乱れて体内に留めておけなくなっている。この状態ではもう次元を繋ぐ魔法は使えないだろう。
(だから『後継者』が必要なのか)
大司教ルノーは既に創吾を教皇の後継者として決めているという。創吾からはそんな話を聞いてはいないが、様子がおかしくなって部屋に閉じ籠もってしまった現状を考えると、何かされたのではないかと疑いたくなる。
(創吾はハイデルベルド教国自体を疑っていた。ルノー様は確かに怪しいけど、教皇サマは違う。この人からは悪意を感じない)
教皇は嘘をついたり誤魔化しをするような人間には見えない。諒真は全ての疑問を彼にぶつけることに決めた。
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