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第11章 向き合う覚悟
73話・魔法使いの潜入調査
しおりを挟むラミエナの話を聞いてから、諒真はずっと考えていた。創吾はある程度予想した上で、それを裏付けるために調べさせていたのだろう。
最後に会った時に様子がおかしかったのは、恐らく何らかの異変が彼に起きていたから。異変が何なのかは分からないが、放っておけば取り返しがつかなくなる気がした。
焦るばかりで考えがまとまらず、その度に創吾に相談したくなる。いつも彼が対策を考え、導いてくれていた。どれほど頼りにしていたかを嫌でも思い知らされた。
「創吾が動けないならオレがやるしかない」
諒真はとにかく行動に出ることにした。
翌日、大聖堂の一角にある豪奢な応接間で大司教ルノーは客人の相手をしていた。
ひとりは『勇者』由宇斗。
もうひとりは『格闘家』将子。
大事な話があるからとふたりに呼び出されたルノーは、侍女にお茶と菓子を用意させてから人払いをした。
「ユウト様、ショウコ様。お話とはなんでしょう」
「その前に、誰にも聞かれないように部屋の音を遮断してほしいんだけど」
「おや、まあ。……分かりました」
由宇斗に言われ、ルノーは軽く手を挙げて応接間の音が外部に漏れぬように風の魔法で囲った。もし扉に耳を押し当てて聞き耳を立てたとしても何も漏れる心配はないし、邪魔が入って話を中断させられることもない。
「さあ、これでよろしいでしょうか」
「ありがと、ルノー様」
「手間をかけてごめんなさい」
「構いませんよ。それで、改まってお話とは一体なんでしょうか」
「えーと……」
にっこり笑うルノーに尋ねられ、由宇斗は言葉に詰まった。代わりに隣に座る将子が発言する。
「実は私たち付き合ってるんですけど」
「はい、存じ上げておりますよ」
「元の世界では住むところが離れ過ぎていて……帰ったら滅多に会えなくなります。実際、一度帰った時は再召喚されるまで二ヶ月も会えませんでした」
「おや、そうなのですか……」
辛そうに語る将子の言葉に、由宇斗はうんうんと頷いている。ルノーが気遣わしげに相槌を打ち、話の続きを促す。
「だから私たち、元の世界に帰らずに異世界で一緒に暮らしたいと思って」
「!!」
まさかの残留希望にルノーは目を見開いた。「本気ですか」と再確認され、由宇斗と将子は手を取り合い、笑顔で大きく頷いた。
「それで相談に乗ってもらいたくて」
「私たちがこっちで暮らせるように手を貸してもらいたいの。ルノー様しか頼れる人がいなくて。お願いできますか?」
勇者一行の残留は願ってもないこと。
ルノーはにやけてしまいそうな口元を袖で覆い隠しながら、ふたりへの助力を約束した。そして、これからのことについて様々な相談に乗ってやった。
打ち合わせ通りに由宇斗と将子がルノーを引きつけている間、諒真は大聖堂の中にある教皇の気配を探っていた。
謁見の間で御簾越しに会っただけではあるが、気配はしっかり覚えている。加えて、生体感知魔法で周囲に誰も居ない時を狙い、転移を試みた。
「……ッ!」
防壁のようなものに弾かれそうになったが、何故かすぐに障害は消え去り、諒真はすんなりと大聖堂の最深部にある部屋に侵入することが出来た。
冷えた空気が漂う室内。
薄明かりの中で目を凝らしてみれば、ここが天蓋付きの大きなベッドがあるだけの伽藍とした寝室だと分かった。大きな木製扉は固く閉ざされ、外側から鍵が掛けられている。風の魔法で室内を囲い、音を遮断すると同時に扉が簡単に開けられないようにする。
「あのー、教皇サマ?」
諒真は寝台に近付き、横たわっている人物に声を掛けた。そして、その顔を覗き込んで驚いた。思わず仰け反り、距離を取る。
「嘘だろ?なんで……」
寝台で眠っていたのは、魔王ザクルドによく似た風貌の黒髪褐色の青年だった。
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