72 / 110
第10章 強いられた運命
71話・魔法使いの頼み
しおりを挟む「元の世界じゃオレはごく普通の、どこにでもいる会社員なんだ」
「かいしゃいん?」
「えーと……雇われて仕事をこなして、給料貰ってる人ってこと」
「なるほど、理解しました」
異世界にも商会などの雇用の仕組みがある。雇い主から給金を貰って働く職人や人夫は珍しい存在ではない。リエロは何となくイメージを掴んで頷いた。
「もちろん元の世界じゃ魔法も使えない。こっちの世界に召喚されて初めて使ったんだよ」
「だから最初の旅では苦労なさっていたんですね」
「今までにない感覚だからな、魔力の操作に慣れるまでは大変だったよ」
召喚され、能力と役目を与えられ、魔王を倒す旅に出た。案内役の聖騎士団の遠征部隊と共に旅をしていくうちに魔力の使い方に慣れていった。
「由宇斗たちとも召喚されるまで知り合いですらなかったんだぜ?」
「そうなんですか。皆さま仲がよろしいので、てっきりあちらでもお知り合いだと思っておりました」
「住んでる地域も離れてるし、一度も会ったことがない赤の他人だったんだ。それが今や命を預けられるくらいの仲間になってさ。不思議だよなぁ」
それは諒真の人柄のおかげだろうとリエロは思った。
旅が始まる前から何かと周りに気を配り、他の三人にも積極的に声を掛けていた。緊張を解し、こちらの世界の人との仲を取り持つように立ち回っていた。
「リエロの家は聖都にあるのか?」
「いえ、僕はもっと田舎の出身で。隊長のご実家の男爵家領内にある小さな村です」
「ハルクの?じゃあ昔から顔見知りだったんだな」
「僕が一方的に追い掛けていただけですけどね。その縁で同じ部隊に配属していただけました」
だからこそ、リエロはハルクの役に立とうとしたのだろう。
「あと、ラミエナさんも同じ男爵領出身なんですよ。前回も今回も一緒に任務に参加出来て心強かったです」
「へぇ、そうだったんだな」
案外、ハルクは自分の隊に身内を集めているのかもしれないと諒真は思った。
聖騎士団の上層部は何を企んでいるか分からない。周りを信頼出来る仲間で固めていないと不安だったのかもしれない。
「そういえば、ラミエナさんが今日の昼間にソウゴ様と約束していたのに部屋に入れてもらえなかったと言ってました」
「創吾が調べ物を頼んでたんだよ。そういや追加で報告が来るかもって昨日の夜言ってた」
リエロが来る前、諒真が訪ねた時も扉を開けてくれなかった。中に居るのは間違いないのに、余程会いたくないのか、それとも表に出られない理由があるのか。
「……リエロ、ラミエナと話がしたい。彼女が調べていたことを知りたいんだ」
「わかりました。明日連れて参ります」
諒真の頼みに、リエロは快く頷いた。
10
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる