【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第10章 強いられた運命

70話・新米騎士の賭け

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「今夜だけは一緒に過ごさせてください」

 そう言われ、諒真りょうまは返答に詰まった。
 真顔で冷や汗をかく諒真を見て、リエロは自分の言い方が不味かったと初めて気が付いた。

「──あっ、違います!そういう意味ではなくて、リョウマ様が帰ってしまわれる前にもっとお話したいと思って!」
「ビックリしたぁ~!」
「ですよね、すみません」

 ふたりきりになると必ず迫られてきたせいで身構えてしまったが、リエロにはそのつもりはないらしい。

「触れ合いたいという気持ちもありますが、もし一線を超えてしまったら離れ難くなるだけですから」
「……だよな」

 元の世界に帰還すれば、もう異世界に来ることはない。二度と会えない相手に入れ込めばお互いに辛くなるだけ。

「それに、リョウマ様は寝間着ではなく普通の服で待っていたじゃありませんか。僕が気を付けるように言ったからですよね」

 昨夜会った時に無防備な姿で人と会うことを咎められ、頭の片隅にずっと残っていた。その後結局創吾そうごの部屋に寝間着姿のまま行ってしまい、彼にも怒られてしまった。だから今日は普段着に着替えておいた。相手に気を持たせないようにするためだ。

「もし今夜リョウマ様が昨日と同じ姿で出迎えて下さったら、僕は思い留まることが出来なかったと思います」

 これはリエロにとっての賭けだった。
 もし無防備な……気を許した姿で諒真が扉を開けてくれたら、そのまま抱き締めて想いを遂げよう。そうではなかった場合には、きっぱり諦めようと決めていた。

「……ごめん、リエロ」
「謝らないでください。どのみち僕ではリョウマ様には釣り合わないと分かっています」

 リエロから見た諒真は、最強の魔法使いでありながら威張ることなく誰にでも気さくに接してくれる優しい人。対する自分は聖騎士団に入りたての新米で、遠征任務でも足を引っ張っていた。戦闘でも役に立てず、任されたのは見張りや荷物持ちばかりだった。

「……僕なんかより、ソウゴ様のほうがずっと」

 自分を卑下するリエロを、諒真はすぐに否定した。

「なんでそこで創吾が出てくるんだよ。『自分なんか』とか言うな。リエロは頑張ってるよ。誰が見ても立派な騎士だ!」
「せっかく諦めようとしてるんですから優しい言葉を掛けないでください。踏ん切りがつかなくなります」
「え?ああ、そっか。悪い」
「……ふふ、リョウマ様らしい」

 寂しげに笑うリエロの顔を見て、諒真の胸が痛んだ。好意を寄せ、求めてくれた人に応えられないという事実。それでも健気に笑顔を見せてくれるリエロに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「よろしければ、そちらの世界のことを教えてください。離れていても、リョウマ様がどんなふうに暮らしているか思い浮かべられるように」
「じゃあリエロも教えてくれよ」
「もちろん!」

 テーブルを挟んでソファーに腰掛け、ふたりはお互いの世界や暮らしのことを教え合った。
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