【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第10章 強いられた運命

68話・平和な異世界

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 転移魔法で自室に戻ってからも、諒真りょうま創吾そうごのことが気になって眠れなかった。明らかに様子がおかしいというのに詳しい説明もなく帰れと言われ、素直に引き退ったことを後悔した。

 一夜明け、昼間に中庭を散策する。
 式典の予定もなく、元の世界に帰る準備が整うまでは自由に過ごしていいと言われている。由宇斗ゆうと将子しょうこは街に買い物に行った。若い恋人たちのデートを邪魔するわけにはいかず、諒真はふたりを笑顔で見送った。

「リョウマ殿、おひとりですか」
「ああ、やることもなくてさ」

 暇を持て余す諒真を見つけ、聖騎士団のハルクが声を掛けてきた。彼が隊長を務める遠征部隊は任務を終えたばかりのため、比較的楽な大聖堂周辺の警備を担当しているという。

「リエロをお呼びしましょうか」
「いや、いい。仕事中だろ?」
「お気になさらずとも……」
「その辺はしっかり区別しないと駄目だって」

 確かに暇だが、聖騎士としての仕事を後回しにしてまで付き合わせたいわけではない。

「でも、リエロが普段どういう仕事をしているのかは気になる。どの辺にいるかだけ教えてくれないか?」
「わかりました」

 ハルクが教えてくれた場所は大聖堂の裏手にある北門周辺。南にある正門よりは規模が小さいが、それなりに人の出入りはある。
 単に警備と言っても、突っ立っているだけではない。遠方からの参拝者には道を教え、トラブルがあれば駆けつけて仲裁する。ハイデルベルド教国内でもかなり信頼のある立場のようで、聖騎士団の一員だと分かるとみな一目置いて接してくれる。

 誰にも見咎められないよう飛翔魔法で近くの塔の上に飛び乗り、そこから辺りを見下ろした。
 眼下に広がる行き交う人の流れ。その中で、忙しなく走り回るリエロの姿を見つけ、諒真はふっと笑った。

 魔王を倒した今、もう強力な魔物が出現することは無い。聖騎士団が命を懸けて危険な任務に就くことも無い。今後は国民に敬われながら安全な仕事だけをして暮らしていくのだ。

「……魔王、倒して良かった」

 異世界に平和を取り戻す手伝いが出来た。
 やや不便を強いられはしたが、笑顔の人々を見ていたらそんな苦労は頭から吹き飛んでしまった。

「元の世界に戻ったら、オレも仕事頑張んなきゃな」

 教皇の体調が整い次第、勇者一行は元の世界に帰れる。『呪いの核』は壊した。もう呪いに怯えながら過ごすこともない。









 夕食の時間になっても現れなかった創吾を心配して、諒真は客室を訪ねた。何度ノックしても応答がない。侍女に話を聞くと、今日は朝から内鍵を掛けて誰も寄せ付けないようにしているという。

 昨夜の様子を思い出し、やはり只事では無いのではと不安に襲われる。客室内に転移を試みるが、空間が歪められていて弾かれてしまう。中にいるのは間違いないが、歓迎されていないようだ。

「創吾、明日には出てきてくれよ」
「…………」

 返事は返ってこない。
 諒真はそのまま踵を返し、自分の客室へと戻った。
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