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第10章 強いられた運命
67話・表裏一体
しおりを挟む教皇と魔王は表裏一体。
創吾は元の世界の神道を思い出した。
和御魂は神の優しく平和的な面。慈悲深く民を癒し導く存在。荒御魂は神の荒々しい面。あらゆる禍を起こし、争いを招く存在。ひと柱の神でも別の宮に奉られるほどの違いがあるという。
大司教ルノーの言うように悪しき部分《荒御魂》を取り出して魔王とし、残った善なる部分《和御魂》は教皇として大聖堂に囚われる。恐らく、悪しき部分……我欲を抜き取られることでルノーに逆らう意思を封じられてしまうのだろう。
「……もしそうだとしても、僕は思い通りにはなりませんよ」
「おやおや。せっかく楽になれるというのに、ソウゴ様は強情でいらっしゃる」
こうして話している今も腹の底から黒い感情が自由を求め、捌け口を探して暴れ回っている。抑え込むだけで精一杯。少しでも気を抜けばすぐに飲み込まれてしまう。
クスクスと笑いながら、ルノーは目を細め、更に創吾を追い立てた。
「ソウゴ様がお嫌なのでしたらリョウマ様にお願いするしかありませんね。あの御方は慈悲深い。きっと我らを見捨てることなく教皇になって下さるでしょう」
「なっ……!」
自分が断れば諒真に類が及ぶ。
まさかの言葉に創吾は思わずルノーに駆け寄り、彼の胸ぐらを掴んだ。
「どういうことです!何故諒真くんに……僕だけが教皇の適任者なんじゃないんですか!」
「言いましたでしょう?『貴方がたには『魔王の器』になる資格がある』と。残念ながらユウト様とショウコ様は元に戻ってしまわれましたが、リョウマ様はまだその資格を有しておられます」
「資格……?」
「魔王城跡で『呪いの核』を破壊した際に破片を浴びましたよね。あれは魔王の一部です。──その証拠に、治癒魔法が効かなかったでしょう?」
『なんで治さないんだよ』
『この傷だけ治癒魔法の効きが悪いんですよ』
『ふうん、そうなんだ』
『諒真くんも手首に傷があるじゃないですか』
『ああ、どっかで引っ掛けたみたいでさ』
先ほど交わした言葉と諒真の手首に残った小さな傷を思い出し、創吾は顔色を失った。無意識のうちにルノーから手を離し、自分の頬に残る傷に触れる。
あの時、核の破片の飛散を全て防げなかった。そのせいで、自分だけでなく諒真にも魔王の一部が入り込んでしまった。
(……ああ、だから由宇斗は僕を警戒したんだ)
呪いの副作用が解けて騎士たちへの嫉妬をしなくなった後も、由宇斗は創吾に対して何故か過剰に反応していた。『勇者』である彼は魔王の気配を察知し、本能で拒絶したのだろう。もし諒真が将子に近付いていれば、きっと同じように拒絶したはずだ。
聖騎士団では『呪いの核』に対処できないという名目で再び異世界に召喚したのは、破壊の際に勇者一行に核の破片……魔王の一部を浴びせ、体内に取り込ませることこそが本当の目的だったのだ。
「リョウマ様の抱える心理的な枷。あれを切り離せば、さぞ強力な魔王が産まれるでしょうね」
ルノーにとっては誰がそうなろうが関係ない。『世界を脅かす魔王』と『勇者を召喚できる教皇』さえ在ればハイデルベルド教国は周辺国から崇められるのだから。
「……、……諒真くんだけは駄目です。僕が残りますから……」
「そう仰っていただけると信じておりましたよ、ソウゴ様」
項垂れ、床に膝をついた創吾を見下ろしながら、ルノーは満足そうな笑みを浮かべた。
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