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第10章 強いられた運命
66話・魔王の器
しおりを挟むルノーの言葉に、創吾は茫然とするしかなかった。
他の三人を元の世界に帰すためには自分が教皇にならねばならないと言われたからだ。元々魔法の系統が似ているとは思っていた。極めればいつか次元を越える魔法……つまり、召喚魔法を使えるようになるのではないかと考えたこともある。
「召喚魔法が使えるなら僕も元の世界に戻りますよ。こんな国に残る義理なんかありませんから」
創吾にも元の世界での生活があり、医師としての仕事がある。戻れる手段があるなら使うに決まっている。
しかし、ルノーは創吾を嘲笑った。
「教皇を継いだ者は大聖堂から離れられません。強大な力には必ず縛りがある。能力は絶大ですが、それ故に自由がありません」
「……」
教皇の力を得た代償として大聖堂に縛られる。神の恩恵というより、むしろ呪いに近い。
魔王の呪いの真偽は不明だが、副作用である『心の奥底に秘めていた欲を抑えられなくなる』方がはるかに厄介だ。
由宇斗は将子への想いが暴走し、誰彼構わず嫉妬に狂って攻撃的になった。普段の彼は無邪気で人懐こいが、子どもらしい残酷な一面が表に出てしまった。
思慮深く冷静なはずの将子は、後先考えずに恋人の存在を周りに匂わせたりした。そして、性格的に合わないと諦めていたお洒落に関心を示し、針子に無理を通した。
諒真はトラウマが増幅され、攻撃魔法の使用に制限がついた。他者からの押しに弱いのは元々の性格だが、副作用によって精神の弱さが酷くなっている。
創吾も生涯黙っておくはずの感情を抑えきれず、弱った諒真を言いくるめて必要以上に触れ、同意なく行為に及ぼうとした。諒真に近付く者全てに嫉妬し、今もドス黒い感情に支配されかけている。
魔王城跡で『呪いの核』を破壊した後に副作用は消え、由宇斗と将子は本来の性格に戻った。何故か創吾の諒真に対する異常な執着だけ収まっていない。由宇斗が創吾だけを警戒し続けているのは、その辺りに理由があるのかもしれない。
「もしかして、僕だけに新たに別の呪いを掛けたんですか?」
「ソウゴ様を呪うなんてとんでもない!」
疑いの目を向ければ、ルノーは心外だと言わんばかりに両手を挙げて否定した。
「貴方がたには『魔王の器』になる資格があります。実はユウト様が最有力候補だったんですけど、残念ながらその資格を失ってしまわれましたので」
袖で口元を隠しながら、ルノーは目を細めて嗤った。
相変わらず創吾の身体は自由が利かず、小刻みに震えている。ぼんやりしていたら意識が飛んでしまいそうで、自らの爪を腕に立てて堪える。痛む傷が、これが現実だと教えてくれる。
「魔王の器?教皇ではなくて?」
疑問をそのまま口に出せば、ルノーはクッと笑いを噛み殺し、いつもと同じ慈愛に満ちた笑顔でこう応えた。
「魔王と教皇は表裏一体。魔王とは、教皇の悪しき部分を抜き出しただけの存在なのですよ」
悪い夢であってくれ、と創吾は更に爪を立てるが、腕の傷が深くなるだけだった。
10
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