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第9章 明らかになる謎
60話・新米騎士の嫉妬
しおりを挟む晩餐会が終わり、それぞれ充てがわれた客室に戻ることになった。廊下での別れ際に創吾から目配せをされ、諒真は昼間交わした約束を思い出す。
『大事な話があります。今夜の晩餐会が終わったら僕の部屋に来てください』
最大の目的だった『呪いの核』の破壊は無事終わった。あとは教皇の体調が戻るのを待ち、元の世界に帰してもらうのみ。恐らく、様子がおかしくなっていた由宇斗たちの話をするのだろう、と諒真は考えていた。
客室に入ると、侍女たちが湯浴みの支度をしており、諒真の帰りを待ち構えていた。
異世界の風呂には追い焚き機能などない。後回しにすればせっかく用意した湯は冷め、また沸かし直す必要がある。
(オレが風呂を済まさないと、この人たちの仕事が終わらないんだよな)
どのみち創吾の部屋に転移するためには侍女たちに下がってもらわねばならない。
諒真は素直に風呂に入った。
湯浴みを終え、あとは寝るだけの状態になってようやく侍女たちが客室から辞していった。
さあ転移しようとしたタイミングで部屋の扉がノックされる。先ほど出て行ったばかりの侍女が忘れ物でもしたのかと思い、ろくに確認もせずに扉の鍵を開ける。すると、そこにはリエロが立っていた。
「どうした、こんな時間に」
「リョウマ様と一緒に過ごしたくて。……すみません、ご迷惑でしたか」
いつまでも廊下に立たせたままでは誰かに見咎められてしまう。咄嗟にリエロの手を引いて室内に引き込む。
「迷惑とかじゃないけど、今日はあんまり時間ないんだ。悪いな」
「ご用事ですか?」
「ああ、創吾に呼ばれてて」
正直に答えると、リエロの表情が変わった。
「ソウゴ様のところに行かれるのですか。こんな遅い時間に?」
ずい、と詰め寄られて後ずさる。出入り口そばの壁に背中が当たり、これ以上逃げられなくなった。
「……湯浴みを済まされて、こんな格好で他の人の元に行くつもりだったのですか」
こんな格好と言われ、諒真は視線を下げて自分の服装を見た。薄手の白い生地で作られた、ゆったりした寝間着である。確かに昼間着ている服よりは心許ない気もするが、露出はほとんどない。
それでも、リエロからしてみれば無防備な姿に見えるのだろう。焦っているとも怒っているとも言えない表情で諒真を見つめ、逃さぬように両手でしっかりと肩を掴んでいる。
「じゃ、じゃあ着替えてから行くよ」
諒真がそう答えれば、リエロはまた悲しげな顔をした。
「行かないという選択肢はないのですか」
「でも、……」
話せば話すほど手に力が込められ、抜け出せなくなる。
既に湯浴みで時間が押している。これ以上、創吾を待たせるわけにはいかない。
「悪いけど、創吾との約束が先だったんだ。今夜は帰ってくれるか?」
「……わかりました。急に来て申し訳ありません」
ようやく手が離され、諒真は解放された。
「では、明日の夜は大丈夫でしょうか」
「ん、わかった。予定空けとく」
「ありがとうございます」
約束をすれば、リエロの表情がやっとゆるんで笑顔になった。それを見て、諒真もホッと安堵する。
「明日のこれくらいの時間に参りますね」
「うん」
「……リョウマ様。帰る前に一度だけ抱き締めてもよろしいですか」
「う、うん?」
了承する前にリエロの腕の中に捉われた。見た目は細いが、日頃の鍛錬で鍛え上げられた肉体はがっしりとしている。自分とは違う逞しい身体つきに、彼が立派な騎士であったと思い出す。
「リョウマ様」
腕の力がゆるみ、もう終わりかと顔を上げれば、間近で視線が交わった。熱のこもった瞳に真っ直ぐ見つめられ、諒真の身体がびくりと揺れる。
せっかく訪ねてきてくれた彼を追い返すことを申し訳なく思っていた諒真は、リエロの肩口に顔を埋め、その背に腕を回して抱き締め返した。
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