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第8章 魔王城跡探索
55話・最強の魔法使い
しおりを挟む物理最強の『勇者』と『格闘家』による猛攻撃にも『呪いの核』はびくともしない。そもそもコレは物質なのか。そこに実在しているのかすらも分からない。ただ、攻撃から身を守るように球体の周囲には見えない防壁のようなものが在る。それだけは間違いない。
突然、浮いていた球体がぶるぶると震え出した。攻撃が効いたわけではない。時折床面に勢い良くぶつかっているところを見ると、恐らく地下に逃げ込もうとしているのだろう。創吾の防御盾に阻まれ、逃げられないと悟ったか、球体は再び定位置に戻った。
「由宇斗、将子、ストップ!!」
これまでハルクたちを守ってきた諒真が声を張り上げて攻撃を止めた。構え掛けていた剣と拳を下ろし、ふたりは素直に後ろに退がる。
「次はオレが行く」
「諒真くん、いけますか」
「……一応標的はあるから大丈夫、と思う」
前に進み出た諒真を気遣うように創吾が声を掛ける。
異世界最強の『魔法使い』だが、彼はトラウマのせいで強い攻撃魔法が撃てない。だが、魔王と同じ気配を漂わせるこの球体に関しては別だ。絶対に破壊せねばならないという使命と目的がある。
「代わりにみんなのガードを頼む」
「任せてください」
立ち位置を交替し、諒真は前に進み出た。
地下にしては広い空間である。加えて、天井から壁面、床に至るまで創吾の防御盾で囲まれている。建物が崩れる心配はないが、強力な攻撃魔法を連発するわけにはいかない。同じ空間内にはハルクやイルダート、リエロ、ラミエナがいる。彼らを巻き込まないよう細心の注意を払う必要がある。
目の前に浮かぶ球体は、恐らく外部からの攻撃によるダメージが一定値を超えると逃げ出すようにプログラムされている。逃げた先で回復を待ち、再び攻撃に耐えられる状態に戻るのだろう。
ここまでの物理攻撃でかなり防御は削ったが、決定打とはならなかった。逃げ出さぬように固定した上で、回復しようのないダメージを一気に叩き付けねばキリがない。
「最強、舐めんなよ」
広範囲に影響を及ぼすものだけが上級魔法ではない。諒真は『呪いの核』を覆うように両手を広げた。範囲を絞り、高出力かつ高硬度の魔力の杭を狙って穿つ。無数の杭が球体を包み込み、まるで毬栗のようになった。
物理攻撃は全く効かなかったが、この杭は物質ではなく一本一本が強力な攻撃魔法である。異なる属性の魔法を短剣程度の大きさの杭に変換して同時に撃ったのだ。
複数属性同時発動は、以前創吾と魔力発散のために色々試していた時に出来るようになった技。どれだけ高度な技術なのか、この場で正しく理解出来ているのは同じ魔力持ちの創吾だけだろう。他の者は「なんか分からないけどすごい」としか感じていない。それほどまでに、諒真は魔力の使い方を完璧にマスターしていた。
「……頼むから、これで壊れてくれ!」
無数の杭を生み出し維持するために、諒真は全ての魔力を費やしている。これで効かねば他に手立てはない。
祈りが通じたのか、ギリギリのところで均衡を保っていた球体が再びぶるぶると震え出し、耐え切れずに爆ぜた。
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