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第8章 魔王城跡探索
54話・呪いの核破壊作戦
しおりを挟む魔王が遺した『呪いの核』の破壊は、勇者一行が再び異世界召喚に応じた最大の理由である。
授かった能力が消えずに残る。
元の世界の人々に能力がバレたら死ぬ。
この二つの呪いのせいで日常生活を送ることが困難となった。肉体強化系の由宇斗と将子はともかく、魔力持ちの諒真と創吾は定期的に魔力を発散させねばならなくなった。
「絶対に終わらせてやる!」
四人の中でも一番呪いの被害を被っている諒真の意気込みは尋常ではない。その様子に、創吾とリエロは複雑な思いを抱いていた。
創吾は『魔力を発散させる』という口実で三日に一度数時間諒真と共に過ごせる日々に不満を抱いてはいなかった。むしろ、魔力発散という口実がなければ諒真に会えなくなってしまう。
リエロも、もし呪いの核を破壊してしまえば諒真が元の世界に帰ってしまうのではないかと恐れている。もう魔王は滅びた。勇者一行の役目は本来ならば終わっている。こうして異世界にいる現在が異常事態なのだから。
ハルク達もそう。国からの密命で、勇者一行を異世界に留めるように指示されている。そのために、元々諒真を慕っていたリエロに夜伽を命じた。他の三人より諒真が温和で社交的……悪く言えば御し易い性格だからだ。
由宇斗と将子は呪いによる不都合をほぼ感じていない。呪いの核破壊を心から願っているのは諒真のみ。
「創吾、頼む」
「……ええ」
諒真に促され、創吾が両手を広げた。同時に、地下空間に無数の防御盾が出現する。
「まずは呪いの核の逃げ道を塞ぎましょう。諒真くん、みんなを」
「ん」
言われるより早く、諒真は自分を含めた全員の身体を飛翔魔法で浮かせた。その間に、創吾は防御盾を部屋の床や壁、天井を隙間なく覆った。特に床面は念入りに幾重にも重ね、蟻一匹通る穴もない。囲い尽くしたことを確認してから飛翔魔法を解き、全員を下ろす。
次に、創吾は由宇斗と将子に能力上昇を掛けた。これでふたりの攻撃力は最大値に達する。
事前に打ち合わせていたとはいえ息の合った諒真と創吾の行動を、リエロはただ見守るしか出来なかった。リエロだけではない。遠征部隊隊長のハルクと補佐のイルダート、斥候のラミエナも、この場に於いては等しく無力。幾ら熟練の剣の腕があろうと、幾ら経験を積んでいようと一切関係ない。
「由宇斗、将子」
「「応ッ!」」
創吾の合図で、まず『勇者』由宇斗が大剣を呪いの核目掛けて振り下ろす。どんな大型の魔物をも一撃で屠る必殺の剣だが、見えない何かに弾かれ、刃は当たらなかった。
次に『格闘家』将子が飛び掛かり、回し蹴りを喰らわせるが、これも何かに弾かれてしまう。
「ぶ厚い壁を相手にしてるみたい」
その後も何度か攻撃を試みるが手応えは無い。将子は悔しそうに歯噛みをしながら一旦後ろに下がった。そして今度はふたりで同時に攻撃を仕掛ける。由宇斗が大剣の腹で横殴りにし、そこを将子の拳で撃つ。
剣圧と拳圧でビリビリと空気が揺れる。
しかし、同じ空間にいるハルクたちには衝撃波が届くことはない。彼らを庇うように諒真が立ち、全ての余波を魔法で防いでいるからだ。そうでなければとっくに吹き飛ばされていただろう。
「す、すごい……!」
勇者一行の実力を目の当たりにして、リエロは感嘆の声を上げた。
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