【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
54 / 110
第8章 魔王城跡探索

53話・警戒の基準

しおりを挟む


 幸い地下はそこまで崩れてはいなかった。上階から落ちてきた瓦礫がところどころで山になっているが、他はあまり荒れていない。

「この奥です」

 先導するラミエナの後につき、開きっぱなしの大扉を潜ると、そこには広間があった。天井のど真ん中に大きな穴が空いており、そこから外の光が差し込んでいる。

 光に照らされるようにして浮いている球体を見て、勇者一行は無意識のうちに身構えた。この禍々しい気配には覚えがある。

「……魔王と同じ気配ね」

 眉間にシワを寄せた将子しょうこが呟き、他の三人も頷く。間違いない、これは『呪いの核』だ。

 大きさはバスケットボールほど。真っ黒な球体の表面はつるりとしていて、周囲の景色を映り込ませている。金属の塊のようでもあり、風船のようでもある。硬いのか柔らかいのかは直接触れてみなければ分からない。

「ちょうど真上が謁見の間で、元はそこにありました。調査隊が見つけて破壊を試みたところ、床を突き破って真っ直ぐ地下に潜った……というわけです」
「反撃はしてきませんが、一定以上の攻撃を受けると場所を移す性質があるようで、我々聖騎士団ではこれ以上手が出せません」

 同じ説明を道中でも聞いたが、正直諒真りょうまたちは半信半疑だった。
 しかし、現物を前にしてハルクとイルダートの説明を聞くと納得せざるを得ない。それほどまでに、この球体からは恐ろしい気配が漂ってきている。

「もしヘマをして更に地下に潜られたら追いようがない。下はもう建物じゃなくて地面だからな」
「ええ、ここで終わらせましょう」

 そう言っている間にも由宇斗ゆうとが腰の剣を抜いており、将子が慌てて引き留めている。『勇者』の攻撃なら一撃で破壊できるかもしれないが、無策で斬りかかることだけは流石に認めるわけにはいかない。

「とりあえず、ひと息入れてから掛かるとしましょう。……リエロ、準備を」
「はいっ」

 イルダートから指示され、リエロが担いでいた荷物を下ろした。中身は全員ぶんの水筒や携帯食だ。

「手伝うよ」
「ありがとうございます、リョウマ様」

 諒真の魔法で地面に小さな炎を灯し、瓦礫で組んだ簡易かまどを作る。上に持参した金属の網を敷き、水筒からお茶を移した小鍋を置く。空いている部分に携帯食のビスケットを並べて軽く炙っていく。

「どうぞ。熱いから気をつけてください」

 焼けたものから順次手渡していく。
 将子に直接渡そうとしたリエロに周りがひやりとするが、何故か由宇斗は何も言わなかった。

「……なにか基準があるんでしょうか」
「さあ?」

 リエロは騎士だが、一番の下っ端である。加えて、現在は諒真を慕っており、周りにも一切隠していない。例え若い男でも、他に気持ちが向いている者には妬かないということか。単に、取るに足らない相手だと思われているだけかもしれない。

 創吾そうごも将子を恋愛対象としては見ていないが、先ほどは何故か警戒された。由宇斗が創吾の好きな人を知らないからか、それとも他に警戒すべき理由があるからか。

 温かな飲み物と軽い食べ物で休憩を取ってから、勇者一行は『呪いの核』破壊作戦に移った。
しおりを挟む
▼▽▼ みやこ嬢のBL作品はこちら ▼▽▼

《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。

《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい

《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
感想 48

あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった── 十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。 下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。 猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。 だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ──── 独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。 表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。 @amamiyakyo0217

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

処理中です...