【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
51 / 110
第8章 魔王城跡探索

50話・僧侶の口添え

しおりを挟む


 少人数での行軍は順調に進み、拠点出発から一時間ほどで魔王城跡地に到着した。草木の生えていない岩山に聳え立つ石造りの城は塔や外壁が崩れ落ち、見る影もない。

「うわあ、めっちゃ深いよこの穴~」
「ユウト様、あまり近付くと危険ですよ」

 早速その辺にある地割れを覗き込む由宇斗が隊長のハルクから注意されている。極限まで身体強化された『勇者』ならば奈落まで落ちても無傷で着地できるだろうが、ここへは遊びで来たわけではない。

 諒真たちは変わり果てた魔王城を見上げてポカンと口を開けた。
 魔王ザクルドを倒した直後、勇者一行は力を使い果たして気を失った。意識のない彼らを外へ連れ出したのは聖騎士団だ。故に、諒真たちが崩れた魔王城を見たのは今日が初めてである。

「建物だけでなく地盤から崩れている有り様で、現在も少しずつ崩壊しております」
「なるほどなぁ……直接中に転移したら危なかったかも」

 諒真が覚えているのは最終決戦の場にもなった謁見の間で、当然そこも土台から崩れている。もし記憶を頼りに転移していたらどうなっていたか。多少手間と時間を掛けても離れた場所に拠点を置いたハルクの判断は正しい。

「一月ほど前に調査で訪れた際、城内に浮かぶ禍々しい球体を発見しました。呪いの核と断定して破壊を試みたのですが一切攻撃が通らず……その後、球体が地下に潜ってしまって」
「え、その球体たま動くの?」
「はい。ですので、深追いするのは止めて皆さまを再度お呼びすることにいたしました」

 一定以上外部から攻撃を受けると地下に潜るのだという。やり過ぎれば追えなくなるほど地中深くに潜り込む可能性もある。確実に破壊するためにも、最高戦力である勇者一行を投入することに決めたのだとか。
 聖騎士団も実力者揃いだが、魔王や幹部相手には攻撃が通じなかった。単純な強さではなく属性の問題なのだろう。だからこそ勇者一行でなければ魔王撃破は成し得なかった。

「創吾、どうする?」
「隙き間なく周囲を囲んで一気に叩きましょう。君たちの力を合わせれば破壊出来ると思いますよ」
「ん、まあそれしかないよな」

 慣れた様子で相談し合うふたりの様子を、離れた場所からリエロが見つめていた。
 彼は今回の任務では単なる雑用係でしかない。戦闘に関してはまだまだ未熟。それに比べ、創吾は勇者一行のひとりで頼りがいのある大人の男だ。戦闘向きの能力はないが、支援や防御、回復などで幾らでも役に立てる。

 最初の夜に、薄暗い客室で睨まれたことを思い出す。戸惑う諒真の肩を抱きながら、創吾は冷たい瞳を向けてきた。あれは仲間を守ろうとするだけでなく、嫉妬や牽制も含まれていたようにリエロには感じられた。

「では、これから魔王城跡に入る。内部は崩れやすくなっているため少人数で向かう。残りの者はこの場で待機!」

 隊長のハルクが声を張り上げて指示を出している。いよいよ崩れた魔王城の内部に入るのだ。案内役と荷物持ち以外は城の外周で不測の事態に備え、待機することになる。
 新入りで経験の少ないリエロは当然のように待機組に割り振られた。いつもの彼ならばハルクの采配には素直に従うが、今回は違う。

「隊長!僕も行きます」
「リエロ、おまえは外で待て」
「いえ、行きたいんです。お願いします」

 必死に食い下がるリエロをハルクが諦めさせようとするが、間に創吾が入った。

「いいじゃないですか。彼が来てくれれば諒真くんも心強いでしょうし」
「いや、しかし」
「若い騎士にこそ場数を踏ませるべきですよ」

 まさか創吾から取り成してもらえるとは思ってもおらず、リエロは驚きで目を丸くした。
 そして、ついにハルクが折れた。

「……分かった。だが、くれぐれも勇者様たちの足を引っ張らぬように」
「はいっ!ソウゴ様も口添えありがとうございました!」
「いいんだよ、リエロくん」

 こうして探索メンバーが決まった。
しおりを挟む
▼▽▼ みやこ嬢のBL作品はこちら ▼▽▼

《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。

《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい

《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
感想 48

あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった── 十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。 下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。 猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。 だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ──── 独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。 表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。 @amamiyakyo0217

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

処理中です...