【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第8章 魔王城跡探索

50話・僧侶の口添え

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 少人数での行軍は順調に進み、拠点出発から一時間ほどで魔王城跡地に到着した。草木の生えていない岩山に聳え立つ石造りの城は塔や外壁が崩れ落ち、見る影もない。

「うわあ、めっちゃ深いよこの穴~」
「ユウト様、あまり近付くと危険ですよ」

 早速その辺にある地割れを覗き込む由宇斗が隊長のハルクから注意されている。極限まで身体強化された『勇者』ならば奈落まで落ちても無傷で着地できるだろうが、ここへは遊びで来たわけではない。

 諒真たちは変わり果てた魔王城を見上げてポカンと口を開けた。
 魔王ザクルドを倒した直後、勇者一行は力を使い果たして気を失った。意識のない彼らを外へ連れ出したのは聖騎士団だ。故に、諒真たちが崩れた魔王城を見たのは今日が初めてである。

「建物だけでなく地盤から崩れている有り様で、現在も少しずつ崩壊しております」
「なるほどなぁ……直接中に転移したら危なかったかも」

 諒真が覚えているのは最終決戦の場にもなった謁見の間で、当然そこも土台から崩れている。もし記憶を頼りに転移していたらどうなっていたか。多少手間と時間を掛けても離れた場所に拠点を置いたハルクの判断は正しい。

「一月ほど前に調査で訪れた際、城内に浮かぶ禍々しい球体を発見しました。呪いの核と断定して破壊を試みたのですが一切攻撃が通らず……その後、球体が地下に潜ってしまって」
「え、その球体たま動くの?」
「はい。ですので、深追いするのは止めて皆さまを再度お呼びすることにいたしました」

 一定以上外部から攻撃を受けると地下に潜るのだという。やり過ぎれば追えなくなるほど地中深くに潜り込む可能性もある。確実に破壊するためにも、最高戦力である勇者一行を投入することに決めたのだとか。
 聖騎士団も実力者揃いだが、魔王や幹部相手には攻撃が通じなかった。単純な強さではなく属性の問題なのだろう。だからこそ勇者一行でなければ魔王撃破は成し得なかった。

「創吾、どうする?」
「隙き間なく周囲を囲んで一気に叩きましょう。君たちの力を合わせれば破壊出来ると思いますよ」
「ん、まあそれしかないよな」

 慣れた様子で相談し合うふたりの様子を、離れた場所からリエロが見つめていた。
 彼は今回の任務では単なる雑用係でしかない。戦闘に関してはまだまだ未熟。それに比べ、創吾は勇者一行のひとりで頼りがいのある大人の男だ。戦闘向きの能力はないが、支援や防御、回復などで幾らでも役に立てる。

 最初の夜に、薄暗い客室で睨まれたことを思い出す。戸惑う諒真の肩を抱きながら、創吾は冷たい瞳を向けてきた。あれは仲間を守ろうとするだけでなく、嫉妬や牽制も含まれていたようにリエロには感じられた。

「では、これから魔王城跡に入る。内部は崩れやすくなっているため少人数で向かう。残りの者はこの場で待機!」

 隊長のハルクが声を張り上げて指示を出している。いよいよ崩れた魔王城の内部に入るのだ。案内役と荷物持ち以外は城の外周で不測の事態に備え、待機することになる。
 新入りで経験の少ないリエロは当然のように待機組に割り振られた。いつもの彼ならばハルクの采配には素直に従うが、今回は違う。

「隊長!僕も行きます」
「リエロ、おまえは外で待て」
「いえ、行きたいんです。お願いします」

 必死に食い下がるリエロをハルクが諦めさせようとするが、間に創吾が入った。

「いいじゃないですか。彼が来てくれれば諒真くんも心強いでしょうし」
「いや、しかし」
「若い騎士にこそ場数を踏ませるべきですよ」

 まさか創吾から取り成してもらえるとは思ってもおらず、リエロは驚きで目を丸くした。
 そして、ついにハルクが折れた。

「……分かった。だが、くれぐれも勇者様たちの足を引っ張らぬように」
「はいっ!ソウゴ様も口添えありがとうございました!」
「いいんだよ、リエロくん」

 こうして探索メンバーが決まった。
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