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第8章 魔王城跡探索
49話・嫉妬⇄嫉妬
しおりを挟む翌朝、食事を取ってから魔王城跡への行軍が始まった。聖騎士団遠征部隊約二十名と勇者一行は隊列を組み、荒れ地を徒歩で移動する。
集落跡地の拠点には十名ほどの見張りの騎士を残している。盗人や獣から物資を守る重要な役目のため、腕利きの騎士が選ばれている。何故そちらに戦力を割くのかといえば、魔王城行きのメンツは勇者一行だけでかなりの戦力となるからだ。それに、魔王を倒した今となっては『人間を襲う魔物』はおらず、『物資を狙う人間』の方が多い。
「前方、一部道が崩れております。このまま直進するのは危険かと」
「分かった。迂回地点手前で待機して指示を出せ」
「了解ッ!」
元気な声で隊長のハルクとやり取りをしているのは女性騎士ラミエナだ。彼女は主に斥候を務めている。
魔王城跡地付近は崖崩れや地割れが起きており、通る度に地形が変わっているのだという。索敵のみならば諒真の生体感知魔法で対処出来るが、隊列が通行可能かどうかの判断は出来ない。よって、直接現場を見て確認する必要がある。
走り去っていくラミエナを、諒真は目で追い掛けた。邪魔にならないようにきっちり編み込まれた赤髪と小柄でしなやかな身体つき。男性騎士と同じ装備を身に付けていても女性らしさは隠せない。
「……働き者で可愛いよなあ」
「なにか言いました?諒真くん」
「いや、別に」
諒真がぽつりと呟くと、隣を歩く創吾が聞き直してきた。『昨夜おまえが彼女とふたりで何をしていたのかが気になっている』などとは言えず、愛想笑いで誤魔化す。
気まずさで逸らした視線の先にはリエロの姿があった。十数メートル前方で物資を載せた馬の手綱を引いている。なんとなく眺めていると、不意にリエロが振り向き、目が合った。ニコッと笑い掛けられ、諒真は小さく手を挙げて応えた。
その様子を見て、創吾は小さく息をつく。
「さっそく噂になってますよ。『リョウマ様のお気に入りは新米騎士だ』って」
「おまえの言う通り、ゆうべは一時間くらい天幕の中で一緒にいたからな」
出発前夜に夜伽をしにきて数時間客室に居た実績があるリエロは、すっかり周りから諒真の相手だと見做されている。これ以上他の誰かに付け入る隙を与えないよう、彼を利用したらどうかと提案したのは創吾だ。
「何もありませんでした?」
「あるわけないだろ、話をしただけだ」
「……そうですか」
諒真はローブのフードを目深に被り直し、ボロを出さないよう言葉少なめに答える。
再び誤魔化された創吾は、彼とリエロとの間に何かがあったことを感じ取った。
(気が弱そうだと侮っていたけれど、若いぶん怖いもの知らずで簡単に垣根を飛び越えてくる……)
穏やかな笑顔の下で、創吾の黒い感情が渦を巻く。前方を歩くリエロの後ろ姿を細めた目で眺めながら、どうしてくれようかと考え始めた。
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