44 / 110
第7章 入り乱れる思惑
43話・拠点形成
しおりを挟む諒真の転移魔法で魔王城手前の集落跡地に転移する。一度には運びきれず、何度かに分けて聖騎士団の隊と物資を転移させた。
「リョウマ様」
「……リエロ」
その中にはもちろんリエロの姿もあった。彼は何か言いたげにしている。他の団員がちらちらと様子を窺っていることに気付き、諒真はわざと親しげに肩を抱いて耳元に顔を寄せた。
「宿舎に戻ってからなんか聞かれた?」
「いえ。朝帰りでしたので」
「そのまま勘違いさせとこう。いいよな」
「は、はい。リョウマ様が良いのでしたら」
明らかにホッとしたように安堵の表情を浮かべているところをみると、リエロは微妙な立場に置かれているのだろう。
異世界に繋ぎ止めるための手段として夜伽に来たのだ。今は誤魔化せたとしても、もし自分が元の世界に戻ってしまったら彼はどうなるのか。酷い目に遭わされたりしないか。そう考えると、嘘をつき続けるこの選択が正しいのか分からなくなる。
離れた場所で運ぶ物資を確認しながら、諒真の気持ちが揺れる。誰かを犠牲にしてまで元の世界に戻る必要があるのかと考え始めていた。
「……そうなったら、オレは」
「諒真くん」
声を掛けられ顔をあげると、真横に創吾が立っていた。手には物資のリストがある。打ち合わせに見せ掛け、小さな声で会話する。
「向こうの拠点で夜を過ごす際はリエロを呼んで一時間ほど一緒に過ごしたほうがいいでしょう。でも、本当に関係を持ったらダメですよ」
「当たり前だろ、あいつは男だぞ」
「性別なんて関係ありませんよ。現に、彼は自分からお役目を志願したと聞きました」
「自分から?なんで?」
「さあ。諒真くんを落とせる自信があるのか他に理由があるのか知りませんけど」
そう言い残して創吾は由宇斗の元へ戻っていった。暴走しがちな『勇者』を抑えるためだ。昨夜の貴族骨折事件が効いているのか、由宇斗と将子を狙う輩は居なくなった。だが、下心が一切無くても将子に近付く男は全員問答無用で殴られるのだ。先ほどから数名の騎士が被害に遭っており、その度に創吾は彼らを治してやらねばならない。
出来るだけ諒真と共に行動したいが、こちらを放置するわけにもいかず、創吾は歯痒い思いをしていた。
ハイデルベルド教国と隣国アイデルベルドの国境にある山脈。そこに魔王の城が存在していた。切り立った岩壁に魔力で建造された城だ。主人たる魔王が滅びた途端に崩れ落ち、今は見る影もない。
そこから数キロ南下した場所に集落跡地がある。ここに拠点を築き、呪いの核を破壊するために行動する予定だ。一日で終わればいいが、何が起こるか分からないため万全を期して挑む。
かつての集落は建物の基礎部分を残し、後は瓦礫の山となっている。足場を片付け、持参した天幕を張るのは聖騎士団の面々だ。彼らは慣れた手付きで支度を始め、勇者一行は周辺の警戒を任された。
魔物の姿は消えたが、代わりに野生動物や野盗が幅を利かせるようになっている。荒れた地に豊富な物資があれば当然狙われる。
早速現れた盗っ人の逃げ場を魔法で無くすなどして捕縛の手伝いをしながら、諒真は浮かない顔をしていた。やはり人間相手では攻撃魔法が発動しない。威嚇だけなら可能だが、倒さねばならなくなった場合は何も出来ない。
「こーゆーのって暮らしが安定しなけりゃ同じことだよな。また誰かが野盗になるだけだ。なんとかならないものかなぁ」
「対策を考えるのはこちらの世界の人の役目ですよ。何のために貴族や領主がいるんです」
「でも……」
その貴族たちは勇者一行を取り込もうと躍起になってあらゆる手を講じている。そんな無駄なことに手間と金を掛けるくらいなら真面目に統治してもらいたいものだ、と諒真は溜め息を吐き出した。
10
《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい
《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法
《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい
《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。

お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】
カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった──
十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。
下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。
猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。
だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ────
独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。
表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。
@amamiyakyo0217

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる