【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第6章 2度目の異世界召喚

40話・異世界での立ち位置

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 夜明け前、諒真りょうまは一旦自分の客室に戻ることにした。それぞれの部屋にしか着替えの用意がないからだ。念のため創吾も一緒について行く。
 転移すると、客室の居間でリエロが立ち尽くしていた。昨夜、諒真が消えた時と全く変わらぬ位置だ。

「リョウマ様……っ!」

 突然転移魔法で姿を現した諒真に安堵の笑顔を見せる。だが、創吾も一緒にいることに気付いて表情をこわばらせ、すぐに床に片膝をついて頭を垂れた。
 あれから一晩中ずっとここで待ったのかと申し訳なく思いながら、どうしたらいいのか分からず、諒真は黙ってリエロを見下ろした。

「君は聖騎士団の人だよね。何か用?」
「あっ……いえ」

 何も言えない諒真に代わり、創吾がにこやかに、しかし威圧を込めて尋ねる。すると、リエロはビクッと肩を揺らして青褪めた。夜伽をしに来たとは言えず黙り込む。

「夜が明けぬうちに宿舎に戻るといい」
「……は、はい」

 促され、リエロは立ち上がって深々と頭を下げ、客室から出て行った。
 バタンと閉まった扉に内鍵を掛けてから諒真はソファーに浅く腰掛け、頭を抱えて溜め息をついた。顔色は良くない。

「何があったか聞いてもいいですか」
「…………」

 昨夜はとにかく触れぬように努め、そっとしておいたが、実際に客室の中で待っていたリエロの姿を見てしまえば放ってはおけない。創吾には知る権利がある。

「……オレが女の人に興味なさそうだから、だったら男をてがおうって話になったみたいで……でも、まさかリエロがその相手になるなんて」

 消え入りそうな声で呟く諒真に寄り添い、そっと手を握る。一晩休んで落ち着いたはずなのに、リエロと顔を合わせたことで再び身体を震わせている。

「僕たちを異世界に繋ぎ止めるために利用されているんでしょう。彼は平民の出のようですが、これが成功していれば貴族が養子に迎えて僕たちごと手中に収める、という算段かな」
「なんでそこまでする必要があるんだよ」
「それだけ僕たちに価値があるということでしょう」

 薄々気付いてはいた。
 異世界には魔法が存在するが使える者は限られており、強力な使い手ともなれば更に稀少。『勇者』と『格闘家』は魔法こそ使えないが、全てが身体強化に使われている稀有な存在。そして、『僧侶』と『魔法使い』ほどの魔法を使える者はいない。これは異なる世界から召喚された者だけに現れる特徴なのかもしれない。
 それに加えて『魔王を倒した』という実績。どのような手段を用いても取り込みたいと考える貴族は少なくないだろう。

「利用されたくないですし、異世界に居着くつもりもありません。さっさと魔王の呪いをなんとかして元の世界に帰りましょう。ね?」
「うん……」

 気落ちしている諒真を励ますように明るく振る舞いながら今後の方針を言葉にして確認し合う。
 今日から魔王城の探索に向かうことになる。外でも出来るだけ離れず、共に行動するほうが良いと言えば、諒真は力なく頷いた。まだショックから立ち直れていないのだろう。

「創吾の部屋には来なかったのか?」
「来てたみたいですけど全部無視してました。僕はこっちで親しくしていた人はいませんからね」
「そ、そうか。良かった」

 リエロが相手に選ばれたのは諒真と仲が良く、警戒されずに近付ける可能性が高かったから。新入り騎士は聖騎士団内で一番下っ端、上から命令されれば従うしかなかっただろう。その辺りは同情に値するが、諒真に手を出そうとした事実は許せない。

 聖騎士団もだが、特にリエロに対する警戒を強める。異世界に滞在する間、創吾は諒真を守り切ると決意した。
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