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第6章 2度目の異世界召喚
34話・ハニートラップ×4
しおりを挟む「リョウマ様、まずは湯浴みを」
案内された部屋には四、五人の若く美しい侍女が待ち構えていた。彼女たちは挨拶を済ませるや否や諒真の衣服を脱がしに掛かった。
「自分で洗うから外で待っててください!」
「まあ、そう仰らずに」
「駄目です!」
客室にある浴室から転移魔法で居間に移動し、侍女たちが追って出たところで再び転移して浴室に戻り、内鍵を掛けて締め出す。扉の向こうから「リョウマ様ぁ」「開けてくださいまし」と訴える艶っぽい声が聞こえてくるが、全部無視してひとりで風呂に入る。
「はぁ、忘れてた。異世界はこういうところだった……」
勇者一行は常に狙われている。
特に魔王を倒してからは、権力者たちが名声目当てに婚姻を結びたがった。侍女の格好をしてはいるが、先ほどの彼女たちは貴族の令嬢だろう。高位貴族の令嬢はこの後開かれる祝宴に招かれている。それ以外の下位貴族の令嬢は公的なチャンスがないため、こうして召使いに成り代わって潜り込み、既成事実を作ろうと躍起になっているのだ。
「宗教国家だってのに俗な真似するよなぁ。こりゃ他の三人のとこも似たようなモンだろーな。大丈夫か?あいつら」
パシャ、と花の香りがする湯で顔を洗い、湯船に浸かったまま目を閉じる。感覚を研ぎ澄ませ、仲間たちの気配を探った。
生体感知魔法は全ての命あるものの居場所を探知する魔法である。人間だけでなく動物や魔物も対象となるため、実際に使う場合には対象を絞り込む必要がある。
まぶたの裏に自分が今いる建物の構造が浮かび、そこに対象の居場所が光となって表示された。
一際強い光。これは由宇斗だ。周りを囲むように幾つかの弱い光が忙しなく動き回っている。どうやら断り切れずに湯浴みを手伝われているようだが、疚しい状況にはなっていなさそうだ。
次に強い光は将子。同じ室内に誰も入れていないようだ。彼女の元へは侍女ではなく若い男性使用人に変装した下位貴族の若者が差し向けられているはずだが、力づくで動けないようにしたのだろう。弱い光が廊下辺りに固まっている。
もうひとつの光は創吾。こちらも同じ室内に誰も入らせていない。防御盾で客室の扉自体を塞ぎ、誰も側に寄せていないようだ。
その様子をみて、諒真はホッと息をついた。優しい彼のことだから、企みであると分かっていながら受け入れてしまうのではないかという恐れがあったからだ。
「それにしても、ずいぶん離れた部屋を充てがわれたものだな」
今居る場所は大聖堂からほど近い場所に建つ宮殿のようなところで、四人は大きな建物の四隅にある客室にそれぞれ配置されている。普通は同じフロアの隣り合った部屋を用意するものではないかと疑問に思ったが、異世界と元の世界では常識が違う。ここではこれが当たり前なのかもしれない、と深く考えることをやめた。
湯船から出て身体を拭いたところで着替え一式が居間にあることに気付き、どうしたものかと諒真は頭を悩ませた。
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