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第3章 苦悩とトラウマ
13話・頼りたくない、頼られたい
しおりを挟む魔力消費合戦をした日から三日後、諒真は自分の魔力がまた上限に近付きつつあることに気付いた。
完全に溢れる前に対処せねばならないが、頻繁に創吾の手を煩わせるわけにはいかない。出来る限り自分で魔力を消費するため、自室内での生活の全てで魔法を使うことにした。
飛翔魔法で身体を浮かせて室内を移動したり、物を取る時も魔法で動かしたり。ごく僅かではあるが、魔力を全く消費しないでいるよりはマシだ。
しかし、細々とした魔法の使い方に慣れてしまうと、自動で省エネ&効率化して消費魔力はガクッと減った。
「やっぱ無理かぁ」
この程度では消費魔力より自然回復分のほうが多い。誰にも見られないように注意しながら自分で対処するには限界がある、と思い知るだけで終わった。
SNSで泣きつくと、すぐに創吾から返事がきた。「明日の夜なら大丈夫です」と。
「一週間保たなかったぁあ~……」
創吾のマンションのリビングでソファーにぐったりともたれ掛かりながら、諒真は力無く呟いた。そんな彼の前に飲み物とお菓子を置きながら、創吾は困ったように笑っている。
「仕方ないですよ。僕もそろそろ限界が近かったので丁度良かったです」
「面倒掛けて悪い」
「遠慮しないでください。仲間なんですから」
両手でマグカップを持ち、ふーふーとカフェオレを冷ます諒真の顔を見て、創吾が眉間に皺を寄せた。彼の目の下にある隈に気付いたからだ。
「諒真くん、寝てないんですか」
「ああ、出来るだけ魔力を使おうと思って昨夜は寝ずに部屋の中で浮いてた」
「なんでそんな無茶を」
「寝ると魔力が回復しちまうから」
魔力は食事や睡眠……休息をとることで回復する。つまり、食事を控えて眠らずにいれば魔力の回復量がやや抑えられる。先日のように上限値を超えてしまわないようにするための苦肉の策だ。
「もっと早く言ってくれればいいのに」
「……だって、おまえに迷惑かかるし」
「遠慮しないでって言いましたよね?」
仲間として、そして医者として諒真のとった手段を認めるわけにはいかなかった。そんな方法で魔力を抑え続けても身体を壊してしまう。しかも問題が解決するわけではない。ほんの少し先送りされるだけ。創吾は苛立ちを覚えた。
「早めに言ってもらえれば、朝でも夜でも時間を作りますよ。限界を超えてからじゃ遅いんですからね」
「でも」
そこまで言ってもまだ素直に頼ろうとしない諒真の頬を両手で掴み、無理やり自分の方に向ける。
「でも、じゃない!不摂生して逆に魔力が制御できなくなったらどうするんですか!」
「……ッ」
珍しく大きな声を上げる創吾に、諒真はビクッと肩を揺らした。今にも泣きそうな顔で創吾を見上げ「ごめん」と小さな声で謝る。
その表情を見て、創吾は手を離した。
「責めてるわけじゃないんです。僕に気を使わなくていい。身体を大事にしてほしいだけなんですよ」
「……うん、分かってる」
異世界での諒真は誰よりも強い魔法使いだった。それなのに、元の世界では呪いのせいで誰よりも苦しんでいる。
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「え」
「少なくとも、呪いが解けるまであちらにいるべきでした」
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