【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
13 / 110
第3章 苦悩とトラウマ

12話・脳筋と魔力持ち

しおりを挟む


『えーっ、創吾そうごさんちに行ったの?ずるーい!俺も行きたかった~!』

 ここは勇者パーティー四人のSNS上のトークルーム。
 溢れた魔力を消費するために二人で会ったことを諒真りょうまが報告すると、由宇斗ゆうとが羨ましがって駄々をこね始めた。異世界にいる間、創吾は最年長メンバーとして世話を焼いていたからよく懐いている。

『ワガママ言わないの。諒真さんたちは遊びで会ってるんじゃないのよ』
『でもさぁ~元の世界に帰ってきてから一度も会えてないじゃん。さみしーよ』

 将子しょうこからたしなめられ、由宇斗は尚も泣き言を漏らした。異世界ではいつも気を張り、勇者として恥ずかしくない振る舞いを心掛けていたが、四人だけの時は素の甘えん坊に戻る。一方の将子は変わらずクールなままだ。一番年下なのに落ち着きがある。

『諒真さん、次は俺たちも連れてってよ~!転移魔法でパパッとさぁ』
「そうしてやりたいのはやまやまだけど、おまえたちは家族と住んでるから急に居なくなったら不審がられるだろ。実際昨日も帰りの魔力を使い果たしちゃってすぐには戻れなかったし」
『ああ~そっかあ……』

 異世界で授かった能力がバレたら死ぬ呪いは同居の家族も対象となる。度々子どもが姿を消したら親は不審に思うだろう。親が持たせている携帯電話にGPS機能があれば、どこに居るかが分かってしまう。怪しまれて探られれば必ずいつかボロが出る。

「それより、おまえたちは大丈夫なのか?日常生活で困ってることはないか?」
『全然!なあ将子』
『ええ。以前と変わりないわ』
「安心したよ」

 魔力持ちの諒真と創吾とは違い、由宇斗と将子は魔力がない。故に、役割ジョブで底上げされているのは身体能力だけである。それでも常人とはかけ離れた腕力や防御力があるはずだが……。

『私、元々身のこなしが軽いから誰からも怪しまれてないのよね』
『俺も俺もー!今日もフザけて校舎の二階の窓から落ちたけど擦り傷ひとつなかった!昔からそうだったから誰も驚かねーの』
「そ、そうか」

 将子はともかく、高校生にもなって窓から落ちている由宇斗はどうなのだろう。丈夫で何よりだが、それに慣れ切っている周りの反応が怖い。

『ねえ、創吾さんはー?』
「創吾は当直だって」
『そっか、なかなか時間合わないよなあ』
「社会人なんかそんなもんだよ」
『諒真さんも社会人じゃん』
「オレんとこ超ホワイト企業だもん。残業もほとんどないし。その代わり給料安いけど」
『うわ、世知辛い話だ』
『夢も希望もないわね』
「うっせえ!学生は早く宿題やって寝ろ!」
『はいはーい』
『おやすみなさーい』

 トークルームからふたりが退室したのを確認してから、諒真もSNSの画面を閉じようとした。だが、創吾のアイコンがアクティブ状態になっているのを見つけ、ふたりだけのトークルームのほうに入り直す。

『こんばんは』
「おまえ仕事は?」
『休憩時間です。今夜はそこまで忙しくないので』
「ふうん。休めるうちに休んどけよ。いつ急患が来るか分かんないだろ」
『ええ、まあ。……でも、諒真くんと少しでも話したかったので』
「そっ、そうか」

 SNSは基本文字または音声だけのやりとりだ。互いの表情は見えない。相手の顔が見えないと感情が読めない。

「もうちょい早く来ればあいつらも居たのに。由宇斗のやつ、おまえと話したがってたぞ」
『ふふ、いまログを見てきました。相変わらず元気そうですね、あのふたりは』
「ホントにな」

 急患で呼び出されるまで、創吾と諒真はトークルームで他愛のない話をして過ごした。
しおりを挟む
▼▽▼ みやこ嬢のBL作品はこちら ▼▽▼

《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。

《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい

《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
感想 48

あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった── 十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。 下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。 猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。 だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ──── 独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。 表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。 @amamiyakyo0217

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

処理中です...