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第2章 魔力消費計画
9話・予想外の提案
しおりを挟むお茶を飲み終えた創吾は諒真を空き部屋に通した。
ここには家具はなにもなく、がらんとしている。大きな窓から外を見れば、同じ高さに建物は見当たらず、高い位置にある場所だと分かった。おそらく高層マンションの上階なのだろう。
見たのは先ほどまで居たリビングとこの部屋だけだが、他に寝室や洗面所などがあることを考えるとかなりの広さだ。家賃はどれくらいだろうと考え、自分には購入も維持も無理だな、と諒真は溜め息をついた。
「念のためカーテンを閉めておきましょう」
「あ、ああ……」
もし魔法を使うところを見られたら魔王の呪いが発動してしまう。目隠しのためにカーテンを閉める創吾の後ろ姿を見ながら、諒真は妙な居心地の悪さを感じた。
このマンションは、ひとりで住むには広過ぎる。使いもしない部屋があるのに何故ここに住んでいるのか。気にはなるが、今はとにかく魔力の発散が目的だ。余計なことは聞かないよう口を噤む。
「では、いきますね」
そう言って創吾は部屋の中央に立ち、両手を広げて瞼を閉じる。すると、一瞬でマンションの部屋が真っ白な空間に変わった。まるで屋外にいるかのように広く果てしない空間だ。中にいるのは諒真と創吾のみ。
これは次元を僅かにずらして現実世界と切り離す空間魔法である。魔王を倒す旅でも周囲に被害が及ばぬよう時々使っていた。かなり高度な魔法だ。
「これ、結構魔力使うんじゃ……」
「諒真くんの魔法と一緒です。何度も使ってるうちに効率化されて、これだけの空間を作っても1パーセントも消費しないんですよ」
「ああ~……」
普通ならありがたい話だろうに、呪われている今となっては省エネ効率化は余分な機能だ。
「さあ、ド派手に魔法を使ってください」
「あ、ああ、そうだな」
促され、諒真が右腕を前に突き出すと、数十メートル先で爆発が起きた。空間全体から見れば非常に小さな規模の爆破だ。
「遠慮しなくても大丈夫ですよ」
「……いや、遠慮っていうか、何もないところに攻撃すんの難しくない?モノすらないし」
「標的がないとやりづらいですか」
「それはまあ、そうだろ」
諒真の言い分を聞き、創吾は少し考えた。
何もない場所に治癒魔法を掛けても何も起きないように、攻撃魔法も倒す対象がなければ発動しづらいのだろうと分析する。
現実世界ならば壊すものはたくさんあるが、ここは魔法で作られた空間だ。ふたりの他には何もない。何か持ち込むにしても、一般家庭にある家具くらいなら先ほどの爆発程度で粉砕できてしまう。ちょっとやそっとでは壊れない標的が必要だ。
そこまで考えて、創吾は名案を思いついた。
「僕を攻撃してみてください」
「は???」
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