【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
10 / 110
第2章 魔力消費計画

9話・予想外の提案

しおりを挟む


 お茶を飲み終えた創吾そうご諒真りょうまを空き部屋に通した。
 ここには家具はなにもなく、がらんとしている。大きな窓から外を見れば、同じ高さに建物は見当たらず、高い位置にある場所だと分かった。おそらく高層マンションの上階なのだろう。
 見たのは先ほどまで居たリビングとこの部屋だけだが、他に寝室や洗面所などがあることを考えるとかなりの広さだ。家賃はどれくらいだろうと考え、自分には購入も維持も無理だな、と諒真は溜め息をついた。

「念のためカーテンを閉めておきましょう」
「あ、ああ……」

 もし魔法を使うところを見られたら魔王の呪いが発動してしまう。目隠しのためにカーテンを閉める創吾の後ろ姿を見ながら、諒真は妙な居心地の悪さを感じた。
 このマンションは、ひとりで住むには広過ぎる。使いもしない部屋があるのに何故ここに住んでいるのか。気にはなるが、今はとにかく魔力の発散が目的だ。余計なことは聞かないよう口を噤む。

「では、いきますね」

 そう言って創吾は部屋の中央に立ち、両手を広げて瞼を閉じる。すると、一瞬でマンションの部屋が真っ白な空間に変わった。まるで屋外にいるかのように広く果てしない空間だ。中にいるのは諒真と創吾のみ。
 これは次元を僅かにずらして現実世界と切り離す空間魔法である。魔王を倒す旅でも周囲に被害が及ばぬよう時々使っていた。かなり高度な魔法だ。

「これ、結構魔力使うんじゃ……」
「諒真くんの魔法と一緒です。何度も使ってるうちに効率化されて、これだけの空間を作っても1パーセントも消費しないんですよ」
「ああ~……」

 普通ならありがたい話だろうに、呪われている今となっては省エネ効率化は余分な機能だ。

「さあ、ド派手に魔法を使ってください」
「あ、ああ、そうだな」

 促され、諒真が右腕を前に突き出すと、数十メートル先で爆発が起きた。空間全体から見れば非常に小さな規模の爆破だ。

「遠慮しなくても大丈夫ですよ」
「……いや、遠慮っていうか、何もないところに攻撃すんの難しくない?モノすらないし」
「標的がないとやりづらいですか」
「それはまあ、そうだろ」

 諒真の言い分を聞き、創吾は少し考えた。
 何もない場所に治癒魔法を掛けても何も起きないように、攻撃魔法も倒す対象がなければ発動しづらいのだろうと分析する。
 現実世界ならば壊すものはたくさんあるが、ここは魔法で作られた空間だ。ふたりの他には何もない。何か持ち込むにしても、一般家庭にある家具くらいなら先ほどの爆発程度で粉砕できてしまう。ちょっとやそっとでは壊れない標的が必要だ。

 そこまで考えて、創吾は名案を思いついた。

「僕を攻撃してみてください」
「は???」
しおりを挟む
▼▽▼ みやこ嬢のBL作品はこちら ▼▽▼

《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。

《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい

《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
感想 48

あなたにおすすめの小説

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった── 十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。 下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。 猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。 だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ──── 独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。 表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。 @amamiyakyo0217

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

処理中です...