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第2章 魔力消費計画
8話・僧侶の思いと強い決意
しおりを挟む愛知県から九州の佐賀県まで約850キロの長距離転移魔法を使ったことにより、諒真の魔力は僅かに最大値を下回った。おかげで今朝から悩まされていた魔力飽和状態による様々な異常が解消されている。
しかし、お茶を飲んでリラックスしているだけで魔力は少しずつ自然回復していく。こうしている間にも再び溢れそうになっているのだ。
「うう、早く魔力使わねーと……」
「バレずに使える魔法は無いんですか?」
「あったらとっくに使ってるよ!」
補助や回復系の創吾と違い、諒真の魔法は攻撃系、つまり派手なものが多い。
「あれは?飛翔魔法」
「すぐ見つかるって」
風を操って身体を浮かせて自在に飛ぶ魔法もあるが、市街地は監視カメラだらけで迂闊に飛べない。例え夜間や田舎だとしても、見つかるリスクはゼロではない。しかも消費魔力はそこまで多くない。
「もっと遠くに転移しまくるとか」
「転移先に誰かいたら即アウトだ」
転移魔法は実際に行ったことがある場所か、気配を知っている相手が居る場所に瞬間移動するものである。今回は創吾の気配を感知して転移した。
もっと遠い場所……例えば、過去に旅行で訪れた海外などに転移すれば、距離に比例して消費魔力は増加する。
しかし、転移先で誰かに目撃されてしまえば呪いが発動して死んでしまう。生体感知魔法で事前に誰もいないか確認はできるが、監視カメラの有無までは分からない。
「呪いさえなければ良かったんですけどね」
「どのみち周りにバレたら騒ぎになるし、呪いで死ぬか社会的に死ぬかの二択だよ」
「うーん、確かに」
魔法が使える便利さよりも、誰かにバレたらどうなるか考えただけでもうんざりしてしまう。
「じゃあ、やっぱり僕が魔法を使える空間を作るしかないですね」
「悪い、頼めるか?」
「もちろん。大事な仲間のためですから」
にっこり微笑みながら、創吾は持っていたティーカップをソーサーの上に置いた。
「君ほど切羽詰まってはないけれど、僕も魔力を消費しておかないと。それに、大事な友人から頼りにされるのは嬉しいですから」
「こうして相談に乗ってもらえるだけでも助かるよ。……ひとりだったら、とっくに呪いで死んでたかも」
創吾なら何とかしてくれる。
諒真はその一心で会いに来た。
異世界に召喚されている間も、一番年上の創吾は勇者パーティーのまとめ役だった。脳筋でアツくなりがちな『勇者』由宇斗と『格闘家』将子をなだめ、調子に乗りやすい諒真をうまく誘導し、全体のバランスを取っていた。
「オレが頼れるの、創吾しかいないから」
諒真の言葉に、創吾は思わず口元を手で覆った。嬉しさでにやけてしまいそうな表情を悟られないようにするためだ。
彼の役割『僧侶』は、戦闘では補助することしか出来ない。安全な場所から防御魔法や能力向上魔法でサポートし、傷付いた仲間を癒やすだけ。一番年上でありながら年下の仲間たちばかりに危険な役目をさせている状況にずっと負い目を感じていた。
同じ魔力持ちでも『魔法使い』諒真は攻撃の要だ。彼の攻撃魔法だけで魔物の群れを壊滅させたこともある。多勢相手で言えば勇者に劣らぬ実力の持ち主だ。
そんな強く気高い諒真から頼られて、嬉しくないわけがない。
「任せてください。呪いなんかで君を死なせたりはしません」
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