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第2章 魔力消費計画
7話・1週間ぶりの再会
しおりを挟む『僕のいる場所は分かりますか』
「……分かる」
索敵に使う生体感知魔法を応用すれば居場所が分かる。住所は教え合っているので、距離は遠いが探す範囲は限られている。その中で仲間の気配を探ればいい。
『では、来てください』
「周りに誰もいない?」
『一人暮らしですから』
「そっか、わかった」
アパートの部屋の中で、諒真は目を瞑って意識を飛ばした。はるか彼方に創吾の気配を感じる。自分の居る場所と創吾が居る場所の空間を繋ぎ、自分の身体だけをそちらに移すイメージを浮かべる。
次の瞬間、諒真は整然とした広い部屋のど真ん中に転移した。目の前には穏やかな笑みを浮かべた青年が手を広げて待っている。
「久しぶり、諒真くん」
「……うん、久しぶり」
二人は元の世界に帰還してから初めて直接顔を合わせた。異世界に召喚されるまでは知り合いですらなかったから、互いの家に行くことも初めてだ。
笑顔で軽く肩を小突き合う。
「なんか変な感じだな」
「そうですね。あちらでは毎日会っていたのに、こちらでは今が初めてですから」
穏やかに微笑みながら、創吾は諒真をリビングのソファーに座らせ、自分はキッチンカウンターの向こうでお茶の支度を始めた。その間、諒真は室内を見回してポカンと口を開けている。
「随分広い部屋に住んでるなあ……」
「世帯用のマンションですからね」
「そんなとこに一人で住んでんの?」
「まあ、色々ありまして」
「そっか」
異世界では数ヶ月も一緒にいたのに名前と年齢、職業くらいしか知らない。時間はたくさんあったが、異世界の文化や魔王討伐の話題ばかりで個人的な話をすることはなかった。
諒真はそれ以上聞くのをやめ、出された紅茶をひと口飲む。普段はペットボトル飲料ばかりの諒真に、茶葉から淹れた紅茶はやや渋く感じた。
「今はどうですか、魔力の方は」
「生体感知魔法と転移で消費したからちょっと楽になった、かな」
「じゃあ、時々僕の家に遊びに来れば解消されるんじゃないですか?」
「いや、もう座標を覚えちまったから感知魔法は要らなくなる。次は消費魔力はもっと少なくなると思う」
試行錯誤で魔法を使っているうちは魔力の消費が大きいが、学習機能でもあるのか、一度使った魔法は無駄な工程を省いて簡略化される。故に、数度使えば魔力の消費量が抑えられてしまう。
魔王討伐の旅の最中は重宝したが、今となってはその便利さが仇となった。
「やはり強力な魔法を使わないと駄目ですね」
魔力持ち同士は他者の魔力の残量も見える。終始落ち着いている創吾も、諒真ほどではないが魔力が上限値に近い。
「では、思い切り暴れられる空間を創りましょう。お茶を飲み終わったらね」
「うん、頼む。……あ、おまえ今日仕事は?時間は大丈夫なのか?」
「たまたま休みだったんですよ」
「そっか、運が良かったなオレ」
もし創吾が仕事中で連絡がつかなければ、今頃ひとりで溢れる魔力に困って途方に暮れていただろう。諒真は自分の運の良さに心から感謝した。
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