【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第2章 魔力消費計画

6話・魔法使いの悩み 2

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 『魔法使い』諒真りょうまと『僧侶』創吾そうごのトークルーム。ここは『勇者』由宇斗ゆうとと『格闘家』将子しょうこには言えない話をする場である。

 元の世界に戻ってから二、三日の間は生活に慣れるまでの愚痴や近況報告ばかりだったが、一週間も経つ頃には諒真の様子がおかしくなった。

「この一週間一度も魔法使えなかったんだけど、なんかおかしくて」
『ほう、どんな風に?』

 創吾は現役の医師である。診察時の問診のように尋ねられ、諒真は自分の状態を出来るだけ分かりやすく答えた。

「魔力が満タンなのに時間経過で増えてくみたいで、オレの周りの空気が強力な静電気みたいにバチバチ言ってる」
『食事したり睡眠をとると魔力は自然回復しますからね。つまり、上限を超えても魔力が増え続けているということですか?』
「そうらしい。……どうしよう、今日は特に酷くて家から出らんなくて」

 諒真はごく普通の会社員である。毎日通勤電車に乗って会社に通っているが、今日は朝から溢れる魔力の影響で様々な異常が起き、途中で引き返して家にこもっている。

『そういった状態は初めてですね』
「うん……あっちの世界じゃ常に魔法ブッ放してたから、魔力が満タンになったことなんかなかったし」

 あっちの世界……異世界は魔王が放った魔物が溢れていた。毎日毎日魔力を使い果たすまで魔法を使って倒してきた。だから、魔力を持て余した経験はない。

『適度に魔力を消費していかないと日常生活に支障が出る、というわけですね。サクッと魔法使えばいいじゃないですか』
「そんな簡単な話じゃないんだよ。現代日本・・・・だぞ?どこもかしこも防犯カメラだらけだし、誰かに目撃でもされたら『魔王の呪い』で死んじまう」

 現代日本には死角が少ない。
 外に出れば街角や路上、建物内に至るまで防犯カメラが監視している。道行く人々は全員カメラ機能付きのスマホを持っているし、道路を走る車にもドライブレコーダーが搭載されている。どこで誰に見られているか分からない時代だ。誰にも見つからずに魔法を使える場所など存在しない。

「創吾は魔力どうしてる?」
『僕はバレない程度に患者さんを治してます。流石に病気を治したら一発でバレちゃうんで体力を回復させるくらいしか出来ませんけどね』
「ぐぬぅ……」

 創吾は職場の病院を訪れる患者を対象に、完治しない程度に治癒魔法を掛けていた。やろうと思えば大抵の病気は治せるが気付かれるリスクが高い。誰にも悟られないようにするには一番弱い回復魔法が限界だ。現在は主に手術を控えた患者を回復させ、治療に耐え得る体力を持たせている。おかげで彼が担当している入院患者の重症化や死亡率は減少傾向にある。

『それでも毎日の自然回復分の魔力しか消費出来なくて。やはり持て余してしまいますね』
「だよなぁ~」

 二人は深い溜め息をついた。
 放置すれば魔力が飽和して暴走してしまう。かといって、迂闊に魔法を使えば他人に能力がバレて死ぬ。

『じゃあ、いっそ二人で発散しませんか』
「発散?」
『諒真くん、転移魔法は使えますよね。それで僕のところまで来てください。僕が空間魔法で思い切り魔法が使える空間を作りますから』
「な、なるほど。それだ!」

 こうして、諒真は愛知県から佐賀県への長距離転移をして魔力を発散する場を得た。
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