29 / 56
28話・腹黒彼女1
しおりを挟む翌日、俺んちにリエがやってきた。玄関を開けたら女子高生が立っているというシチュエーションなのに、どうしてこんなに嬉しくないんだろう。
「中に入っていいー?」
「やだ」
「ええ~? 私、プーさんの『カノジョ』なんだよねぇ? それなのに家に入れてくれないの!?」
「今までだって入れたことないだろ」
「あーあー、マリ姉に『プーさんちに行く』って言って出てきたのに、すぐ帰ったら怪しまれちゃうかもしんないなぁ~」
リエはニヤニヤしながら俺を上目遣いに見上げてくる。ぶっちゃけコイツの言動はイラッとするだけだ。今もこうして甘えるような口調で平然と脅してくる。可愛げなど皆無だ。
マリは今回の件に関わっていないが、ショウゴと繋がっている。リエとの交際が取り引きによるものだとマリ経由で知られたら面倒くさい。
「わーったよ」
「最初からそう言えばいいのにぃ」
渋々了承した途端、リエは俺の脇をすり抜けて玄関に入り込んだ。履いていたサンダルを脱ぎ捨て、スタスタと家の中を歩き回っている。
「プーさんの部屋どこ~?」
「オマエは居間で十分だ!」
コイツを俺の部屋に入れたくはない。ウチでテレビが置いてあるのは一階の居間だけだ。ずっと喋って相手をするつもりはないし、適当に時間を潰したら帰ってもらおう。
「そういや体調だいじょーぶ?」
「頭は痛いし軽く吐き気もする」
「ヤバっ! マジ熱中症じゃんウケる~」
「仮にもカノジョなら心配くらいしろよ」
「心配してるから来てあげたんじゃ~ん」
オマエの甲高い笑い声を聞いてると余計に頭が痛くなるんだよ。心配してるなら黙るか帰れ。
台所の隣にある居間に通し、冷蔵庫にあったペットボトルのジュースを投げて渡す。昨日ショウゴが買い置きしておいてくれたものだ。
「で、オマエの目的はなんだよ」
「目的ってなにが?」
「俺と付き合ってオマエに何の得がある? そもそも俺のこと好きでもなんでもないだろーが」
「そんなことないよぉ。ちょー好きぃ♡」
「嘘くさ……」
こんなに軽薄な告白があるだろうか。女子高生から好きと言われてこんなに嬉しくないとは思わなかった。
ジロリと睨み付ける俺を気に留めることなく、リエはペットボトルに口を付けてジュースを飲んでいる。オフショルダーのトップスに薄い生地の短いスカート。薄く化粧をしているのか、唇はほんのり赤い。ペットボトルの飲み口に口紅の色が移っている。スタイルもいいし、黙っていれば美人なんだけどな。黙っていれば。
「ウチらが付き合ってるって聞いた時、ミノリ全然驚いてなかったじゃん? なんでだと思う~?」
「なんでって……」
「実はちょっと前から『私プーさんが好きなの♡』ってミノリに言ってたんだよね~」
「は???」
ていうか、付き合ってると伝えたって何?
知らねえんだけど。
あ、俺が倒れてる間に言ったのか。
そりゃ知ってるわけないな。
でも、そうか。驚かなかったか。
ミノリちゃんが俺んちに来なくなる前に『私が入り浸ってたら彼女作る時間ないよね』って言ってたのはエロ本を発見したからだけじゃない。リエの根回しのせいだったんだな。
「何してくれてんだよ」
「ミノリのほうが良かったぁ?」
「オマエよりはな」
「ひっっっど!!」
その時、玄関のチャイムが鳴った。
ショウゴが様子を見に来たんだろうかと思ってドアを開けると、ミノリちゃんが立っていた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
スマホゲーム王
ルンルン太郎
ライト文芸
主人公葉山裕二はスマホゲームで1番になる為には販売員の給料では足りず、課金したくてウェブ小説を書き始めた。彼は果たして目的の課金生活をエンジョイできるのだろうか。無謀な夢は叶うのだろうか。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ephemeral house -エフェメラルハウス-
れあちあ
恋愛
あの夏、私はあなたに出会って時はそのまま止まったまま。
あの夏、あなたに会えたおかげで平凡な人生が変わり始めた。
あの夏、君に会えたおかげでおれは本当の優しさを学んだ。
次の夏も、おれみんなで花火やりたいな。
人にはみんな知られたくない過去がある
それを癒してくれるのは
1番知られたくないはずの存在なのかもしれない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる