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27話・感謝の言葉
しおりを挟む「おまえ、リエと付き合ってるんだって?」
眉間に皺を寄せ、ショウゴはそう尋ねてきた。責められているような気持ちになり、視線をそらし、小さく頷く。
「ハァ、マジか。リエから聞いた時は何の冗談かと思ったが」
何度目かのショウゴの溜め息。そりゃそうだよな、何やってんだと思われて当然だ。自分でもそう思う。
ストーカー野郎とミノリちゃんの行き先を教えてもらうため、俺はリエの出した条件を飲んだ。それが『リエとの交際』だ。
しかし、相手が相手なだけに『女子高生と付き合えてラッキー!』なんて浮かれた気持ちは微塵も湧いてこない。
「オレが言うのもアレだけど、なんでリエと?」
「…………」
取り引きの裏は誰にも言えない。知ればミノリちゃんが責任を感じてしまう。いや、交際相手をそんな取り引きで決めたと軽蔑されるのが先だろうか。もしショウゴが真相を知ったらリエを叱りつけそうだ。機嫌を損ねたら何をしでかすか分からない以上、今はリエの言い成りになるしかない。
「付き合ってるっていう割にはリエはアッサリ帰っちまったし、何考えてんだか」
なるほど、先に帰宅したリエの代わりに残って看病してくれていたのか。
アイツが何を考えているか聞きたいのは俺のほうだ。俺と本気で付き合いたいなんて思うワケがない。昼間の外に連れ出せない、金も車もないから誰かに自慢出来るわけでもないからだ。
単なる嫌がらせか、はたまた暇潰しか。
「おまえが好きなのはミノリちゃんだと思ってたよ」
いま彼女の名前は聞きたくない。
ぐるぐる考えてたら頭が痛くなってきた。
「まあいい。とにかく水分摂って休め。落ち着いたらちゃんとしろよ」
枕元にはスポーツドリンクや水のペットボトルが幾つか置いてあった。俺を家に送り届けるだけでなく、医者の手配から買い出し、看病までショウゴには世話になりっぱなしだ。今日に限った話じゃない。昔からずっと。
「じゃあオレも帰るわ」
「ショウゴ」
「ん?」
「ありがとう。助かった」
「はは、水臭いな。友だちじゃねェか」
いつものように笑いながら、ショウゴは帰っていった。すっかり暗くなった窓の外を眺めながら、車のエンジン音が遠去かっていくのを聞いた。
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