28 / 56
27話・感謝の言葉
しおりを挟む「おまえ、リエと付き合ってるんだって?」
眉間に皺を寄せ、ショウゴはそう尋ねてきた。責められているような気持ちになり、視線をそらし、小さく頷く。
「ハァ、マジか。リエから聞いた時は何の冗談かと思ったが」
何度目かのショウゴの溜め息。そりゃそうだよな、何やってんだと思われて当然だ。自分でもそう思う。
ストーカー野郎とミノリちゃんの行き先を教えてもらうため、俺はリエの出した条件を飲んだ。それが『リエとの交際』だ。
しかし、相手が相手なだけに『女子高生と付き合えてラッキー!』なんて浮かれた気持ちは微塵も湧いてこない。
「オレが言うのもアレだけど、なんでリエと?」
「…………」
取り引きの裏は誰にも言えない。知ればミノリちゃんが責任を感じてしまう。いや、交際相手をそんな取り引きで決めたと軽蔑されるのが先だろうか。もしショウゴが真相を知ったらリエを叱りつけそうだ。機嫌を損ねたら何をしでかすか分からない以上、今はリエの言い成りになるしかない。
「付き合ってるっていう割にはリエはアッサリ帰っちまったし、何考えてんだか」
なるほど、先に帰宅したリエの代わりに残って看病してくれていたのか。
アイツが何を考えているか聞きたいのは俺のほうだ。俺と本気で付き合いたいなんて思うワケがない。昼間の外に連れ出せない、金も車もないから誰かに自慢出来るわけでもないからだ。
単なる嫌がらせか、はたまた暇潰しか。
「おまえが好きなのはミノリちゃんだと思ってたよ」
いま彼女の名前は聞きたくない。
ぐるぐる考えてたら頭が痛くなってきた。
「まあいい。とにかく水分摂って休め。落ち着いたらちゃんとしろよ」
枕元にはスポーツドリンクや水のペットボトルが幾つか置いてあった。俺を家に送り届けるだけでなく、医者の手配から買い出し、看病までショウゴには世話になりっぱなしだ。今日に限った話じゃない。昔からずっと。
「じゃあオレも帰るわ」
「ショウゴ」
「ん?」
「ありがとう。助かった」
「はは、水臭いな。友だちじゃねェか」
いつものように笑いながら、ショウゴは帰っていった。すっかり暗くなった窓の外を眺めながら、車のエンジン音が遠去かっていくのを聞いた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
スマホゲーム王
ルンルン太郎
ライト文芸
主人公葉山裕二はスマホゲームで1番になる為には販売員の給料では足りず、課金したくてウェブ小説を書き始めた。彼は果たして目的の課金生活をエンジョイできるのだろうか。無謀な夢は叶うのだろうか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
彼女の音が聞こえる (改訂版)
孤独堂
恋愛
早朝の川原で出会った高校生の男女の普通に綺麗な話を書きたいなと思い書き始めましたが、彼女には秘密があったのです。
サブタイトルの変更と、若干の手直しを行いました。
また時系列に合わせて、番外編五つを前に置きましたが、こちらは読まなくても、本編になんら支障はありません。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる