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25話・脅しと謝罪
しおりを挟むルミちゃんは須崎に長々と説教をした。今後もし彼がミノリちゃんに対して無理やり言うことを聞かせようとしたら、さっき撮った暴行動画を公開すると脅しながら。
メガネ女子、怖い。
「人を好きになること自体は悪くないわ。でも、好きならなんで相手の迷惑を考えないの!」
「僕は、そんなつもりじゃ……!」
「ミノリがアンタをどう思ってるか分かってる? ほら、見てみなさいよ!」
「み、ミノリさん……」
須崎が縋るような視線を向けると、ミノリちゃんはビクッと肩を揺らして目をそらした。誰が見ても怯えていると分かる態度だ。それを見て、須崎はようやく納得したようだった。
「ご、ごめん」
「…………」
謝罪の言葉にミノリちゃんは応えなかった。
当たり前だ。五年も付きまとわれて、怖い目に何度も遭わされて、すぐに許せるわけがない。現に、彼女の手首にはまだ痛々しい跡が残っている。
須崎は反省しているようだが、これはルミちゃんたちが奴の暴行の証拠動画を所持しているからだ。これが無ければ今後もずっとミノリちゃんに付きまとっていただろう。いや、そんな悠長な話ではない。無理やり交際を迫ったり、もっとすごいことを強要する可能性もあった。被害を未然に防げたのはルミちゃんの機転のおかげだ。
「あーあ、ハデにやられちゃったね~」
「……リエ」
地面に落ちていた俺のサングラスを拾い、砂埃をフッと吹き飛ばしながらリエがくすくすと笑っている。この状況を作った張本人の癖に全く悪びれる様子もない。ていうか、どこまでがコイツの計画だったんだ?
俺は二人の間に割り込んで殴られただけ。カッコ悪いことこの上ない。
だが、ストーカー野郎の弱みを握ることが出来た。これで奴は迂闊にミノリちゃんに近付けない。ミノリちゃんはもう怖い思いをしないで済む。少しでも役に立てて良かった。
──もう彼女と一緒に居られなくてもいいや。
「ねえ、ちょっと大丈夫?」
「プーさん、プーさん!?」
腹が痛い。
視界が霞む。
頭が回らない。
東屋の天井が歪む。
ミノリちゃんとルミちゃんの慌てふためく声を聞きながら、俺は意識を手放した。
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